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第一章 三団子、異世界に立つ

第二話 三団子の回想1

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「あ、あれ……?」

「夢じゃ、ない……?」

「……どうしよう、兄ちゃん……」


 現実に直面した三団子は、呆然と、大蛇の腹の中で立ち尽くす。
 今更ながらに、三団子がなぜ、お互いの姿を正確に捉えられているのかといえば、それは、大蛇の喉には、大量の光る結晶らしきものが散らばっているからだ。黄色く発光するそれらのおかげで、三団子は互いの姿を認識している。そして、この黄色く発光する結晶は、実は、三団子が追われていた洞穴の中にも結構存在していたものだったりもする。


「僕達、蛇に食べられた、んだよね」

「その前に、ここ、日本じゃないよね」

「それよりもっと前に、僕達、異世界召喚されたっぽいよね」


 遡って現状に至るまでを整理する三団子。ただし、その三団子は突っ立っていることすら疲れたらしく、ドッカリとその場に腰を下ろす。大蛇の腹の中だと認識しているはずなのに、その精神は案外図太いのかもしれない。
 しかしまぁ、こんな言葉足らずな三団子の発言で全てが分かるなんてあるわけがない。と、いうわけで、ここに至るまでを回想すると、そもそもは、彼ら三団子のもう一人の兄弟。長兄の元へ、荷物を届けに向かったことが始まりだった。








「ふぅっ、ふぅっ」

「ひぃっ、ひぃっ」

「ぜぇっ、ぜぇっ」


 それぞれに大きな黒い旅行用のリュックらしきものを、ベルトを最大限に伸ばすことでどうにか背負った三団子は、臭い息を見事に三つのバリエーションで表現しながら歩いていた。
 場所は、三団子と長兄が通う大学の構内。食堂が充実していることでも有名なその大学で、飽食の限りを尽くした体型をガッツリ前面に押し出している彼らは、リュックの重さと、長く続く階段とで、汗だくの臭い塊と化していた。しかし、三団子も好きでこんなことになっているわけではない。彼らの目的は、大好きな長兄へと、このリュックを届けることなのだ。


「い、今、何階、だっけぇ?」

「ご、五階、だった、はず」

「じゃあ、あと、一階で、兄ちゃんのところに、着く、ね」


 三団子の目的地は、長兄が所属するサークルの部屋。しかし、どういうわけか、それはこの建物の最上階に位置している。……いや、きっと、その名前さえ分かれば、理由も自ずと判明する。なんたって、そのサークルというのは……。


「でも、本当にあるのかなぁ?」

「さぁ? けど、兄さんが所属してるって話してたし、都市伝説じゃないと思う」

「もしかしたら、都市伝説通りだったりしてね!」


 そんなほのぼのとした会話を行い、どうにか息を整えた三団子。『よっこらせっ』の掛け声とともに、物理的に重い体を起こす。三団子が座り込んでいた場所が汗らしきもので湿っているのは……もう、ここら辺を掃除する人に謝るべきだろう。
 ドスンドスンと、短い足で再び階段をヒーヒーフーフー言いながら上がっていく彼らは、ようやく辿り着いたその場所で、戦慄の光景を目にすることとなった。
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