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第三章 レイラ
第十一話
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楽しい楽しい魔力検査。きっとこれで、レイラの属性が判明して、レイラもキラキラと輝く白と黄色の光に目を輝かせる……はずだったのだが……。
「じゃあ、魔力を込めるの!」
「おうっ! 頑張れ!」
そんなやり取りとともに行われた魔力を込める作業。
「ふーゆっ!」
またしても奇妙な掛け声とともに行ったそれは……。
「ふゆっ!?」
予想だにしない輝きを放つ。
「はっ? なんだコレ!? 何で、こんな色が!?」
本来は、一つか二つの色がグルグルと回るはず。それなのに、レイラの測定オーブに表示されていたのは、酷く複雑に混じりあった色。しかも、色は一つや二つどころではない。ただ、そこに何種類の色があるのかまでは、レイラもパーシーも読み取れなかっただろう。何せ、その回転速度も凄まじかったのだから。
「パーシー……これ、だいじょーぶ……?」
「い、いや、ヤバいかもしれない」
回転速度が速いせいなのか、何やら『キィィッ』という金属が高速で擦れ合うような不快な音が辺りに響く。
そんな異音が発せられている時点で、レイラもパーシーも、それが壊れる前兆ではないか、くらいの予想はついたのだろう。レイラは慌てて測定オーブを投げ、パーシーはレイラの側に駆け寄って、万が一のための半透明なドーム型の防御結界を張る。
投げ捨てられた測定オーブは、地面に落ちてもなお……いや、むしろ、ますますその不快な音を大きくさせて、測定オーブそのものも、色の回転に引きずられるようにして高速回転を始める。
「ふ、ふゆぅ……」
先程の測定オーブとはまた異なる崩壊の予兆に、レイラは涙目だ。
「大丈――――」
パーシーが、そんなレイラを安心させようとした直後、巨大な破壊音とともに、測定オーブが破裂した。
「……ふゆぅぅう」
防御結界のおかげで、レイラにもパーシーにも被害はない。とはいえ、防御結界でも張らなければ、確実に被害が出ていたであろう状況が、目の前には広がっていた。
深く抉れた地面。飛び散った破片は、平原エリアであったために特に何かに突き刺さったなどということはないものの、かなり広範囲に飛散してしまっている。
それらの光景は、正しく、惨状というべきものだった。
「っ、レイラ、無事か!?」
「だいじょーぶ、なの。でも、オーブが、割れちゃったの……」
今にも泣き出しそうな表情で、パーシーへと告げるレイラ。そんなレイラの様子に、パーシーはむしろ、安堵の色を浮かべる。
「いや、レイラが無事なら、それで良いさ。こんなことになるなんて、誰も予想してなかったわけだしなぁ」
ポンポンとレイラの頭を撫でるパーシーは、防御結界を解除して、苦笑する。
そう、この時、二人はすでに、全ての危険は去ったと思っていた。いや、そもそも、たかだか魔力検査ごときに、将であるパーシーが危険に陥ることなど、誰も考えない。だから、その瞬間、二人は声をあげることすらできなかった。
「「っ!!?」」
突如として二人を襲ったのは、凄まじい威力の衝撃波。それによって、レイラもパーシーも、同時に吹き飛ばされる。
遮蔽物が一切存在しないこのエリアで、そんなものを受けた二人は、数十メートルは吹き飛ばされた。ただし、レイラには翼があるのに対して、パーシーにはそんなものはない。レイラは、衝撃を逃しつつも翼を広げることでどうにか体勢を立て直したが、パーシーは、素早く救出に向かったレイラが受け止める前に、地面へと落ちてしまう。
「パーシー!!」
激しく転がるパーシーを、どうにか飛びながらキャッチしたレイラだったが、そのパーシー本人は、打ちどころが悪かったのか、意識はなく、頭から血さえも流している。
「っ、確か、『水宮の癒やし』!!」
レイラは、自分がどれだけの属性を持っているのか、正確には分かっていない。それでも、レイラはかつて、フィスカが使った魔術を再現するように使ってみせた。
淡い光に包まれ、パーシーの怪我は完全に回復する。しかし、それでも、意識がすぐに復活することはなかった。それに……パーシーにばかり注意するわけにもいかなかった。
「っ……あれは、何?」
先程までは、確実に存在しなかったはずのモノ。少なく見積もっても、五百メートルほどはありそうな体長を誇る、巨大な亀……らしきモノ。
その亀らしき魔物かどうかも定かではない存在は、赤く濁った瞳をレイラ達へ向けていた。
ぞわり、と、レイラの全身が総毛立つ。凄まじい魔力のうねり。それに伴って、危険を察知したレイラは、素早く、パーシーを抱えたままに上空へと退避する。そして次の瞬間……先程までレイラが居た場所には、轟音とともに底が見えないほどの穴が形成されていた。
「じゃあ、魔力を込めるの!」
「おうっ! 頑張れ!」
そんなやり取りとともに行われた魔力を込める作業。
「ふーゆっ!」
またしても奇妙な掛け声とともに行ったそれは……。
「ふゆっ!?」
予想だにしない輝きを放つ。
「はっ? なんだコレ!? 何で、こんな色が!?」
本来は、一つか二つの色がグルグルと回るはず。それなのに、レイラの測定オーブに表示されていたのは、酷く複雑に混じりあった色。しかも、色は一つや二つどころではない。ただ、そこに何種類の色があるのかまでは、レイラもパーシーも読み取れなかっただろう。何せ、その回転速度も凄まじかったのだから。
「パーシー……これ、だいじょーぶ……?」
「い、いや、ヤバいかもしれない」
回転速度が速いせいなのか、何やら『キィィッ』という金属が高速で擦れ合うような不快な音が辺りに響く。
そんな異音が発せられている時点で、レイラもパーシーも、それが壊れる前兆ではないか、くらいの予想はついたのだろう。レイラは慌てて測定オーブを投げ、パーシーはレイラの側に駆け寄って、万が一のための半透明なドーム型の防御結界を張る。
投げ捨てられた測定オーブは、地面に落ちてもなお……いや、むしろ、ますますその不快な音を大きくさせて、測定オーブそのものも、色の回転に引きずられるようにして高速回転を始める。
「ふ、ふゆぅ……」
先程の測定オーブとはまた異なる崩壊の予兆に、レイラは涙目だ。
「大丈――――」
パーシーが、そんなレイラを安心させようとした直後、巨大な破壊音とともに、測定オーブが破裂した。
「……ふゆぅぅう」
防御結界のおかげで、レイラにもパーシーにも被害はない。とはいえ、防御結界でも張らなければ、確実に被害が出ていたであろう状況が、目の前には広がっていた。
深く抉れた地面。飛び散った破片は、平原エリアであったために特に何かに突き刺さったなどということはないものの、かなり広範囲に飛散してしまっている。
それらの光景は、正しく、惨状というべきものだった。
「っ、レイラ、無事か!?」
「だいじょーぶ、なの。でも、オーブが、割れちゃったの……」
今にも泣き出しそうな表情で、パーシーへと告げるレイラ。そんなレイラの様子に、パーシーはむしろ、安堵の色を浮かべる。
「いや、レイラが無事なら、それで良いさ。こんなことになるなんて、誰も予想してなかったわけだしなぁ」
ポンポンとレイラの頭を撫でるパーシーは、防御結界を解除して、苦笑する。
そう、この時、二人はすでに、全ての危険は去ったと思っていた。いや、そもそも、たかだか魔力検査ごときに、将であるパーシーが危険に陥ることなど、誰も考えない。だから、その瞬間、二人は声をあげることすらできなかった。
「「っ!!?」」
突如として二人を襲ったのは、凄まじい威力の衝撃波。それによって、レイラもパーシーも、同時に吹き飛ばされる。
遮蔽物が一切存在しないこのエリアで、そんなものを受けた二人は、数十メートルは吹き飛ばされた。ただし、レイラには翼があるのに対して、パーシーにはそんなものはない。レイラは、衝撃を逃しつつも翼を広げることでどうにか体勢を立て直したが、パーシーは、素早く救出に向かったレイラが受け止める前に、地面へと落ちてしまう。
「パーシー!!」
激しく転がるパーシーを、どうにか飛びながらキャッチしたレイラだったが、そのパーシー本人は、打ちどころが悪かったのか、意識はなく、頭から血さえも流している。
「っ、確か、『水宮の癒やし』!!」
レイラは、自分がどれだけの属性を持っているのか、正確には分かっていない。それでも、レイラはかつて、フィスカが使った魔術を再現するように使ってみせた。
淡い光に包まれ、パーシーの怪我は完全に回復する。しかし、それでも、意識がすぐに復活することはなかった。それに……パーシーにばかり注意するわけにもいかなかった。
「っ……あれは、何?」
先程までは、確実に存在しなかったはずのモノ。少なく見積もっても、五百メートルほどはありそうな体長を誇る、巨大な亀……らしきモノ。
その亀らしき魔物かどうかも定かではない存在は、赤く濁った瞳をレイラ達へ向けていた。
ぞわり、と、レイラの全身が総毛立つ。凄まじい魔力のうねり。それに伴って、危険を察知したレイラは、素早く、パーシーを抱えたままに上空へと退避する。そして次の瞬間……先程までレイラが居た場所には、轟音とともに底が見えないほどの穴が形成されていた。
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