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第二章

第七十話 素直に

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 詳しいことは分からないが、ゼラフ達とは、私はもう関わらなくとも良い、ということをお父様から伝えられ、体も驚異的な回復力で翌日には元通りに戻っていた。
 そして……今日も、セインさんが来てくれる、ということを知って、現在、ジーナから生温かい視線を受けながら、そわそわしていた。


「ジーナ、私、おかしく、ない?」

「えぇ、お嬢様はとっても可愛らしいですよ」

「そうじゃ、なくて……」

「自信を持ってください。お嬢様は、かの方の片翼なのでしょう?」

「う、ん……」


 そう、片翼。私は、セインさんの片翼なのだ。つまり、もう障害などどこにもない。


「旦那様なんて、『リコが、お嫁に行ってしまう』と朝からずっと嘆いていますし、奥様は、『リコが運命の番と結ばれるなんて、こんなに喜ばしいことはないわ!』と喜んでおられるのですよ? もう、お嬢様が想い人と結ばれるのは確実なのですから、お嬢様自身もしっかりと自信を持って挑まなければなりませんっ」

「う、ん……。頑、張る!」


 ちなみに、弟であるレノは、『姉様、幸せになってくださいね!』と私をいち早く祝ってくれている。
 そんなわけで、家族公認でのセインさんとの逢瀬。もちろん、病み上がりだからと、遠慮されるであろうことは分かってはいるものの、セインさんをどうにか説得して、家の外には連れ出すつもりだ。


 そうしなきゃ、全部、筒抜けになっちゃうっ。


 前回の二の舞は、何としてでも避けたい。

 そうして、しばらくそわそわしながら待っていると、とうとう、セインさんが家に訪ねてきてくれた。


「こんにちは。リコさん。体調はどうですか?」

「こん、にちは。体調、は、大、丈夫、です。……もう、元に、戻り、ました」


 セインさんと早く二人っきりになりたい。
 セインさんがお見舞いにと持ってきた花や果物を嬉しいと思うのは確かだったが、それよりも今は、セインさんとの時間が欲しい。


「まだ、事件が起きてさほど時間は経っていません。しっかりと休んでください」


 しかし、そんな思いが伝わるわけもなく、セインさんからは、普段ならば、至極真っ当な言葉が飛び出す。


 そうじゃない、けど、どうすれば……。


 と、その時、レレ様という頼もしい味方のアドバイスが蘇る。


『あなたは、素直なその言葉に力があることを自覚すべきですわ! あなたから素直に告げられる言葉は、何よりも大きな力を持つのですから、それを活用なさいっ』


 素直に言葉を口にする、というのは、とても難しいことのように思える。しかし、セインさんの片翼が私なのだと判明した今なら、怖くはない。


「セインさん……二人で、話したい、です」


 だから、私は、本当に素直な言葉を伝えることにした。
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