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第二章

第四十九話 捕まえナきャ

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 今日は、待ち合わせの時間よりかなり早い時間に到着、なんてことはせずに、しっかりと常識の範囲内で向かえた、と思う。
 待ち合わせの場所は、前回と同じ噴水広場。モビア王国で色々と観光したいのであれば、ここはアクセスの面で便利な場所なのだ。


「お待たせ、しました」

「いえ、俺も今着いたところです」


 セインさんの笑顔が眩しい。
 これが、覚悟を決める前であれば、特に他の反応をすることなく、どこに行こうかという話をしていただろう。しかし、今日は、違うのだ。


「リコさん?」


 そっと、セインさんの目の前まで距離を詰めると、セインさんは不思議そうに私を見る。そんなセインさんを私は見つめ返して……。


 女は、度胸!


 さっと、セインさんの手を取ってみる。


「リ、リコさん!?」

「……迷子に、ならないように……」


 精一杯の勇気によって、私は、どうにかセインさんの指を掴むことに成功する。とはいえ、直接的なことを言うだけの勇気はなくて、言い訳じみた言葉しか出てこない。


「……では、こちらの方が良いですね」


 拒絶されるかもしれない。そう、思っていたが、セインさんは予想外にも、私の手をしっかりと繋いでくれた。


 でも……これ、恋人繋ぎ……??


 拒絶されなかったどころか、私がどんなに勇気を出してもそれを求めるにはまだまだ時間がかかったであろう恋人繋ぎ。いともたやすく、その状況に持ち込んだセインさんには、もしかしたら、私の想いを見破られているのだろうか、とも思ったものの。


「あっ、す、すみません。こちらですね」


 残念なことに、手を解かれて、普通の繋ぎ方に戻されてしまう。ただ……。


 セインさんの顔、赤くなってるような……?


 これは、いわゆる脈アリ、の状況なのかもしれない。しかし、それが片翼に対するものなのか、それとも、片翼ではなくとも、好意を抱いてくれたからなのかの判断ができない。


 魔族は、片翼を諦めて恋愛をする者も居たはず……。


 しかし、それでも良いと、今の私には思えた。


 片翼には、渡さナい。セインさんは、ワタシのモノ……。


「え?」


 戸惑いの声を無視して、私は、手を繋ぎ直す。


「こっちの方が、離れにくい、です」


 そう、離スつもリなんてナイ。


 そんな私の想いなど知らないセインさんは戸惑いながらも微笑んでくれる。拒絶は、やはりされない。


 片翼ナんて、見つかラなくて良イ。ずっトずっと、私だケ、見テくれタらイイ。


「色々、見て、回り、ましょう」


 今日はマダ、我慢、しナきゃいけなイ。でモ、逃さナイ。


 強引にでもセインさんを捕らえようとする自分を抑えながら、私は、セインさんとのデートを楽しむことにした。
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