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第二章

第四十話 失敗?(セイン視点)

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 俺は、何かを失敗してしまったのでしょうか?


 そう思ってしまうのは、病院からリコを家に送る道中、彼女が全く話すことなく、難しい表情で黙り込んでいるからだ。
 馬車に乗る前、リコは確かに、何かを伝えようとしてくれていた。ただ、あまりにも伝えづらそうだったため、大人の余裕を見せるチャンスとばかりに、『ゆっくりで良い』なんてことを言ったが、それが不味かったのかもしれない。

 真剣に考え込んでいる様子のリコを邪魔するのは忍びない。ただし、その内容次第でもあるのは確かで……。


 もし、トラブルに見舞われたことで、リコが俺と居たくないと思っているとしたら……?


 この場合、恐らくはトラブルに巻き込みたくない、という理由だろうことは想像に難くないが、そうだとしても、俺は嬉しくはない。


 もしも、そうこうしている間に、リコに運命の番が現れたりしたらっ……。


 獣人は、運命の番に出会うと、その相手しか見えなくなるし、その相手にしか欲情できない状態になる。
 リコの様子からして、俺がその運命の番ではなさそうだ、ということが、大きな問題だ。


 運命の番だろうと、想いで負けることはないと思っていますが、それとこれとは別問題。リコが運命の番に出会わないに越したことはないのですから。


 運命の番とリコが出会わないようにするためには、素早く求婚して、リコを捕まえておかなければならない。リコが他の男を目に映さないように、徹底的にリコの周囲を管理してしまえば、ようやく安心できる。


 とにかく、口実は何でも良いので、次の約束を取り付けなければ。


 どんな口実でも良い。リコと会えなくなるなんて、もはや考えられないのだから。
 そう思って、口実を頭の中で精査して、リコが断り難く、なおかつ、無理矢理でもないであろうものを選出する。


 絶対に、逃しませんよ?


 もしかしたら、この時の俺は、リコを獲物を見るような目で見つめていたかもしれない。それほどまでに、俺の頭の中は危機感に包まれていた。

 そうして、馬車が停まったその瞬間、俺は声を出していた。
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