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第一章

第十三話 領地へ

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 私の偽りの傷が噂になるのは時間の問題、ということで、私は、お母様と一緒に領地に行くこととなった。


「おとーさま、は?」

「すまない。私は、ここで仕事があるから、リコと一緒には行けないんだ。代わりに、私の両親……リコにとってはお祖父様とお祖母様が待っているし、ルミアもジーナも一緒だ。私も、時間があれば必ずそちらに顔を出す」


 お父様が、仕事でこの場所から動けないことは良く分かった。ただし……。


「おじーさま、おばーさま……」


 良く考えれば、そうした人達が居てもおかしくはない。しかし、前世の家族と縁遠かった私には、その存在は未知の存在だった。


 ど、しよう……。嫌われ、ない?


 前世のご老人には、そこまで嫌な思い出はない。しかし、だからといって良い思い出があるのかと問われると、それも違う。
 良くも悪くも、私には関心を向けない。それが、ご老人というものだと思っていた。


 仲良く……でも、どうしたら……?


 お祖父様だとか、お祖母様という人種と会話をした記憶は皆無で、そもそもまともに会話ができるのかどうか、恐ろしく不安だ。


「大丈夫だ。二人とも、リコにとても会いたがっていたから、リコが来ると分かれば歓迎してくれるよ」

「かんげい……?」


 そんなことが、本当にあるのだろうかとは思うものの、お父様が嘘を吐いているとは思えない。


「そうね。あのお二人だけじゃなくて、私の方の両親も……いえ、父の方が特に、リコに会いたいとうるさくって……ついつい、キュッとしちゃいましたね」


 その後、私はお父様とお母様から、まだ見ぬ祖父母の話を聞くこととなる。


「私の父は、かなり豪快なところもあるが、部下にとても慕われている人だな。私と同じ豹の獣人だ。それと、母の方は人間で、怒らせると怖いが、大抵それをするのは父だから、気にしなくて良い」

「私の方の両親はねぇ。父は、好奇心旺盛で、良く母と旅行に行ってるわ。その分、珍しい知識も豊富よ。後、母はあまり喋らないけど……そういえば、リコに似てるわね。もしかしたら、気が合うかもしれないわ」


 大まかに聞かされたその人物像は、どこまでが私にも適応されるのかが分からない。それでも……。


「あって、みたい、です……」


 楽しそうに話す両親の様子を見れば、もしかしたら、という思いも膨らむ。


「えぇ、きっと楽しいわ。それじゃあ、急いで準備を済ませて行きましょう!」

「私も、できるだけ顔を出すし、手紙も書くからな」


 実際に会うまで、どんな人達なのかは分からない。それでも、両親の楽しそうな様子は、私に少しだけ、勇気をくれるようだった。


「ん……たのしみに、してます……」


 翌日、私は予定通り、領地へ向かう馬車に乗った。
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