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第二章 戻された世界

第八十一話 情報集めのために

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「さて、お兄様、アルガ様? 何か言うことは?」

「「申し訳ありませんでした!」」

「よろしいっ!」


 幼女に土下座をする青年二人の姿は、ともすればシュールな光景だったかもしれない。しかし、この三人を取り巻く侍女や護衛達は、特に取り乱す様子はない。彼らは全員、サミュエルとアルガの暴走を目撃した被害者達なのだから。


「それじゃあ、部屋に戻りましょうか」


 サクッと二人を許して先導するレアナ。最も幼いのはレアナのはずなのに、これではどちらが上なのか分からない。
 サミュエルとアルガは、レアナに付き従ってレアナの部屋にまで向かう。そうして、部屋に入り、侍女にお茶を淹れてもらって一息吐くと、周りに誰も居ないことを確認したサミュエルが切り出す。


「言われた通り盗聴魔法を仕掛けたが、私達が聞いても良いものなのか……」

「いやいや、聞かなきゃ意味ないでしょっ。でなきゃ、干からびる寸前まで魔力を絞られた意味がないからねっ!?」


 サミュエルの深刻な表情に対して、アルガは焦ったように告げる。


「お兄様、アルガ様の言う通りだよ。私達に足りないのは情報。それを得るために手段なんて選んでられないからね?」


 アルガの味方をするレアナに、サミュエルはまだ納得がいかない様子ではあるものの、一応うなずく。


「だが、母上にまで、というのは……」

「……念の為、よ」


 サミュエルとアルガが盗聴魔法を仕掛けたのは、つい先程、贈り物として渡した魔石だ。偶然にも、レアナを虐げたご令嬢達は揃い踏みであり、この機会を逃すべきではないとの判断で、レアナはお茶会会場からサミュエルとアルガを連れ出した後、その仕込みを行ったのだ。しかし、その盗聴魔法は唯一、誰に渡すか決まっていた魔石にすら施されていた。つまりは、サミュエルとレアナの母親その人だ。


「んー、俺も、レアナに賛成だねぇ。だって、レアナが毎回殺されたってことはさぁ、そこそこに権力を持ったやつが敵ってことだって有り得るわけだし、それなら、俺は疑うかな?」


 実の母親が容疑者として挙がっていることにサミュエルは苦い表情を浮かべながらも、否定はしない。ここに居るのは、何百年と生きた記憶を持つ猛者ばかり。慎重に事を見極める力くらい、それなりには養ってきている。


「分かった。盗聴そのものはどうする? 全員で聞くか?」

「一応、手分けをした方が良いかも。人数が多いしね」


 盗聴魔法は、かけて終わりではない。そこから、様々な情報を聞いていかなければならないのだ。そこそこの人数の情報を洗い出そうと思えば、それは、相当な労力となる。


「そうだねぇ。調査を同時並行にして、疑いがなさそうな対象の魔法は解く形が良いよね」


 レアナの意見に同意して、アルガが補足する。そうして、彼らは、独自の情報収集経路を確保していた。
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