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第一章 復讐の聖女候補
第五十一話 調査の結果
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「……?」
「どうなさいましたか? 殿下?」
「いや、なんでもない」
(今、誰かに見られている気がしたが、気のせいだったか?)
リナス伯爵家の人間が、リアン・リナスを除いて全員、何らかの形で死亡したという報告は、数日前に受けたものだ。その際、次男に暴行を加えて殺害した護衛達には処分を言い渡したものの、実際のところ、彼らの背景を考えると、情状酌量の余地もあるのではないかと思えてしまう。
(いや、この考え方は、この世界にはまだ生まれていないものだったな……)
情状酌量で罪を軽くするという考え方は、まだ、この世界には誕生していない。そのため、貴族に手を下した彼らは、一族郎党処刑という形を取らざるを得ない。
「それで、聖華塔に居たもう一人の聖女候補に関しては、何か分かったか?」
「はっ、彼女の名前はレアナ。東第三区画の孤児院で育った孤児であり、聖魔力を開花させ、聖華塔で一月暮らしていたとのことです」
「一月……聖女候補は、全て、聖女を決める時まで聖華塔を出ることができない習わしだ。彼女が高位貴族であれば、それを潜り抜けることも可能だが、なぜ、今、彼女が居ない?」
サミュエルが問うのは、サミュエル自身の騎士団。濃紺の隊服に身を包む彼らは、サミュエルの要望を叶えるためだけに動く。
サミュエルの前に立つ熊のような大男の名は、ドルク・レードン。サミュエルの騎士団において、騎士団長の位についている。
「……追放された、とのことです」
「理由と追放場所は?」
その問いに、ドルクは言いづらそうにしながらも、口を開く。
「理由は、不特定多数の男と関係を持ったため。追放場所は、魔の森だそうです」
「……そのレアナという者の年齢は?」
「十二、だそうです」
十二の少女が、不特定多数の男と関係を持つ。確かに、それはとんでもない醜聞だ。しかし、サミュエルは知っている。平民を前に、貴族達がどれだけ横暴に振る舞うのかを。平民が、貴族によって、どれだけ虐げられるのかを。
「その者の聖魔力は、どれほどのものだったかは調べたか?」
「はっ! 彼女は、歴代最高の聖魔力の持ち主だったとのことです」
「なるほど。嫉妬を買うには十分だな」
「……でしょうね」
落ち込むようなドルクの様子に、意外なものを見たとでも言うかのように、サミュエルは眉を顰める。
「……何があった?」
そうして、サミュエルは、レアナが居た孤児院の悲劇を知ることとなる。
「どうなさいましたか? 殿下?」
「いや、なんでもない」
(今、誰かに見られている気がしたが、気のせいだったか?)
リナス伯爵家の人間が、リアン・リナスを除いて全員、何らかの形で死亡したという報告は、数日前に受けたものだ。その際、次男に暴行を加えて殺害した護衛達には処分を言い渡したものの、実際のところ、彼らの背景を考えると、情状酌量の余地もあるのではないかと思えてしまう。
(いや、この考え方は、この世界にはまだ生まれていないものだったな……)
情状酌量で罪を軽くするという考え方は、まだ、この世界には誕生していない。そのため、貴族に手を下した彼らは、一族郎党処刑という形を取らざるを得ない。
「それで、聖華塔に居たもう一人の聖女候補に関しては、何か分かったか?」
「はっ、彼女の名前はレアナ。東第三区画の孤児院で育った孤児であり、聖魔力を開花させ、聖華塔で一月暮らしていたとのことです」
「一月……聖女候補は、全て、聖女を決める時まで聖華塔を出ることができない習わしだ。彼女が高位貴族であれば、それを潜り抜けることも可能だが、なぜ、今、彼女が居ない?」
サミュエルが問うのは、サミュエル自身の騎士団。濃紺の隊服に身を包む彼らは、サミュエルの要望を叶えるためだけに動く。
サミュエルの前に立つ熊のような大男の名は、ドルク・レードン。サミュエルの騎士団において、騎士団長の位についている。
「……追放された、とのことです」
「理由と追放場所は?」
その問いに、ドルクは言いづらそうにしながらも、口を開く。
「理由は、不特定多数の男と関係を持ったため。追放場所は、魔の森だそうです」
「……そのレアナという者の年齢は?」
「十二、だそうです」
十二の少女が、不特定多数の男と関係を持つ。確かに、それはとんでもない醜聞だ。しかし、サミュエルは知っている。平民を前に、貴族達がどれだけ横暴に振る舞うのかを。平民が、貴族によって、どれだけ虐げられるのかを。
「その者の聖魔力は、どれほどのものだったかは調べたか?」
「はっ! 彼女は、歴代最高の聖魔力の持ち主だったとのことです」
「なるほど。嫉妬を買うには十分だな」
「……でしょうね」
落ち込むようなドルクの様子に、意外なものを見たとでも言うかのように、サミュエルは眉を顰める。
「……何があった?」
そうして、サミュエルは、レアナが居た孤児院の悲劇を知ることとなる。
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