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エピローグ
おまけ小話 僕、異世界で悪魔にされました!?(ガイ視点)
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朝、五時に起きて、身支度を整えて出勤。夜は二十四時まで残業なのはザラで、残業代が払われることはない。絵に描いたようなパワハラ上司の下、毎日毎日、精神をすり減らす日々。
(前に、まともに眠れたのって、いつだっけ?)
目の下の隈は、もはや固定されていて、取れる気配はない。今日も残業を終えて、どうにか風呂だけはと、フラフラしながら立ち上がったところ……なぜか、目の前には床が見えた。
(あー、明日も、仕事……いや、だなぁ……)
享年二十九歳。それが僕の最後の記憶だった。
(ん? ここ、どこ? えっ? 僕、悪魔? ……はぁぁぁぁあっ!?)
次に目が覚めたのは、真っ暗な空間で。そして、僕の頭の中には、次々と覚えのない知識が流れ込んでくる。
『悪魔は、契約を行い、それを達成することで生を延長することができる。契約を行えば、悪魔はそれに縛られ、契約履行のために行動せずにはいられない。悪魔の位階は三段階あり――――』
と、まぁ、悪魔に対する知識が増える増える。そして何やら僕は一番強い位階の悪魔らしく、力が溢れてくるのが分かる。
「これは……もしかして、チート転生というやつでは!?」
その考えが、メープルシロップに砂糖と蜂蜜を混ぜたものよりも、さらに甘いことを知ったのは、案外早かった。
悪魔の世界は、何もない。そして、稀に召喚されたかと思えば、嫌すぎる依頼ばかり。断ろうにも、代償を払って召喚された場合は断れないのだと知った僕は、絶望しながら人を殺し、村を焼き、国を滅ぼした。そんな日々が続いて、盛大にやさぐれていたところに、僕はまた、召喚された。しかも、今回は代償を先に払ってのものではなく、後払いを前提とした召喚。僕は、すぐさま断ろうとしたのだが、他にも二体の悪魔が召喚されている事態に直面して、何とかできないものか、と思ってしまった。
(そうだ。こいつらが、代償を払えない事態に陥れば、僕は、自由だ)
契約に縛られない悪魔は、著しく弱体化して、討伐される運命だ。しかし、その前に契約主を見つけてしまえば良いのではないかという考えが浮かび、僕の中には久々の希望が見えた。
(よし、何がなんでもやってやるっ。こんなブラックな悪魔業からはおさらばしてやるんだっ!!)
そうして、一時、契約に縛られてシェイラちゃんを誘惑したりもしたが、何とか、僕はつらい契約から脱することができた。それから、数年後……。
「ぎゃあぁぁぁあっ! またやられたーっ!!」
「ガイがおこったー!」
「にっげろー!」
僕は、シェイラちゃんと陛下の子供のお世話係に抜擢されて……やたらといたずら好きに育った二人の子供、レイルとミルカの双子の兄妹を追い回す日々を送っていた。ちなみに、今日のいたずらは、洗濯物への落書きだ。しかも、魔法のインクによるものだから、簡単には落ちてくれない。それも、僕の服だけをピンポイントで狙う辺り、何やら悪魔をも越える悪意を感じる。
「こぉらぁぁぁあっ!!」
僕は、怒ったふりをしながら、二人を追いかける。
「きゃー、にいさまっ、ガイがこっちくるー」
「よし、ぼくにまかせろっ! インク、ついかー!」
ただし、インクを瓶ごと投げつけてきたのには、しっかりとキャッチして対応しておく。そして……。
「つーかーまーえーたーぞー!」
「「きゃー」」
可愛い二人を捕まえて、僕はシェイラちゃんの元へと二人を連行する。もう、この業務には慣れたものだった。
(うん、まぁ、こんな日常が幸せだよねっ)
適度に働き、適度に楽しめる生活。それを手に入れた僕は、ようやく得られた幸せに、頬が緩みそうになるのを何とか抑える。
「奥様ー、お宅の子供達が、まぁたやらかしましたよー」
「また、ですか?」
「はんせーしてまーす」
「まーすっ」
全く反省している様子ではない二人に、シェイラちゃんはあらあらと笑いながら……。
「では、鍛練を倍にしましょうね?」
「「え゛っ?」」
子供の扱いには、しっかりと長けていた。
「ガイは、そろそろ騎士団の方を見る時間では?」
「あー、そうですねぇ。じゃあ、二人はお任せしまーす」
「はい、ありがとうございました」
人の役に立って、お礼を言われる。それが、こんなにも貴重な経験なのだということを、きっと、悪魔になる前の僕は考えもしなかった。
(僕、ここにこれて、良かった)
使い潰されて死んだ僕は、悪魔として、また使い潰されそうになったものの、今は、とても幸せだ。
「さて、今日も頑張るかっ」
契約では、アルム陛下が死んでも、僕が相応しいと思う相手と、同じ契約を結べることになっている。だから、きっと、この幸せは、僕が見誤らない限り、ずっと続く。だから、僕は、幸せを振り撒く悪魔になろう。ずっとずっと、愛しい世界を守り抜こう。
「この世界は、最高だよ」
愛しい世界で、僕は今日も、生きていく。
(完)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
これで、ほんとに本当の終わりです。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました!
次回作は、片翼シリーズではありませんが、『悪役令嬢の生産ライフ』という恋愛小説です。
本日より更新しますので、よかったらそちらも読んでみてください。
長いシリーズとなりましたが、あとは、たまに番外編が更新されるくらいだと思われます。
それでは、ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました!
(前に、まともに眠れたのって、いつだっけ?)
目の下の隈は、もはや固定されていて、取れる気配はない。今日も残業を終えて、どうにか風呂だけはと、フラフラしながら立ち上がったところ……なぜか、目の前には床が見えた。
(あー、明日も、仕事……いや、だなぁ……)
享年二十九歳。それが僕の最後の記憶だった。
(ん? ここ、どこ? えっ? 僕、悪魔? ……はぁぁぁぁあっ!?)
次に目が覚めたのは、真っ暗な空間で。そして、僕の頭の中には、次々と覚えのない知識が流れ込んでくる。
『悪魔は、契約を行い、それを達成することで生を延長することができる。契約を行えば、悪魔はそれに縛られ、契約履行のために行動せずにはいられない。悪魔の位階は三段階あり――――』
と、まぁ、悪魔に対する知識が増える増える。そして何やら僕は一番強い位階の悪魔らしく、力が溢れてくるのが分かる。
「これは……もしかして、チート転生というやつでは!?」
その考えが、メープルシロップに砂糖と蜂蜜を混ぜたものよりも、さらに甘いことを知ったのは、案外早かった。
悪魔の世界は、何もない。そして、稀に召喚されたかと思えば、嫌すぎる依頼ばかり。断ろうにも、代償を払って召喚された場合は断れないのだと知った僕は、絶望しながら人を殺し、村を焼き、国を滅ぼした。そんな日々が続いて、盛大にやさぐれていたところに、僕はまた、召喚された。しかも、今回は代償を先に払ってのものではなく、後払いを前提とした召喚。僕は、すぐさま断ろうとしたのだが、他にも二体の悪魔が召喚されている事態に直面して、何とかできないものか、と思ってしまった。
(そうだ。こいつらが、代償を払えない事態に陥れば、僕は、自由だ)
契約に縛られない悪魔は、著しく弱体化して、討伐される運命だ。しかし、その前に契約主を見つけてしまえば良いのではないかという考えが浮かび、僕の中には久々の希望が見えた。
(よし、何がなんでもやってやるっ。こんなブラックな悪魔業からはおさらばしてやるんだっ!!)
そうして、一時、契約に縛られてシェイラちゃんを誘惑したりもしたが、何とか、僕はつらい契約から脱することができた。それから、数年後……。
「ぎゃあぁぁぁあっ! またやられたーっ!!」
「ガイがおこったー!」
「にっげろー!」
僕は、シェイラちゃんと陛下の子供のお世話係に抜擢されて……やたらといたずら好きに育った二人の子供、レイルとミルカの双子の兄妹を追い回す日々を送っていた。ちなみに、今日のいたずらは、洗濯物への落書きだ。しかも、魔法のインクによるものだから、簡単には落ちてくれない。それも、僕の服だけをピンポイントで狙う辺り、何やら悪魔をも越える悪意を感じる。
「こぉらぁぁぁあっ!!」
僕は、怒ったふりをしながら、二人を追いかける。
「きゃー、にいさまっ、ガイがこっちくるー」
「よし、ぼくにまかせろっ! インク、ついかー!」
ただし、インクを瓶ごと投げつけてきたのには、しっかりとキャッチして対応しておく。そして……。
「つーかーまーえーたーぞー!」
「「きゃー」」
可愛い二人を捕まえて、僕はシェイラちゃんの元へと二人を連行する。もう、この業務には慣れたものだった。
(うん、まぁ、こんな日常が幸せだよねっ)
適度に働き、適度に楽しめる生活。それを手に入れた僕は、ようやく得られた幸せに、頬が緩みそうになるのを何とか抑える。
「奥様ー、お宅の子供達が、まぁたやらかしましたよー」
「また、ですか?」
「はんせーしてまーす」
「まーすっ」
全く反省している様子ではない二人に、シェイラちゃんはあらあらと笑いながら……。
「では、鍛練を倍にしましょうね?」
「「え゛っ?」」
子供の扱いには、しっかりと長けていた。
「ガイは、そろそろ騎士団の方を見る時間では?」
「あー、そうですねぇ。じゃあ、二人はお任せしまーす」
「はい、ありがとうございました」
人の役に立って、お礼を言われる。それが、こんなにも貴重な経験なのだということを、きっと、悪魔になる前の僕は考えもしなかった。
(僕、ここにこれて、良かった)
使い潰されて死んだ僕は、悪魔として、また使い潰されそうになったものの、今は、とても幸せだ。
「さて、今日も頑張るかっ」
契約では、アルム陛下が死んでも、僕が相応しいと思う相手と、同じ契約を結べることになっている。だから、きっと、この幸せは、僕が見誤らない限り、ずっと続く。だから、僕は、幸せを振り撒く悪魔になろう。ずっとずっと、愛しい世界を守り抜こう。
「この世界は、最高だよ」
愛しい世界で、僕は今日も、生きていく。
(完)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
これで、ほんとに本当の終わりです。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました!
次回作は、片翼シリーズではありませんが、『悪役令嬢の生産ライフ』という恋愛小説です。
本日より更新しますので、よかったらそちらも読んでみてください。
長いシリーズとなりましたが、あとは、たまに番外編が更新されるくらいだと思われます。
それでは、ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました!
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