60 / 97
第三章 悪魔
第六十話 逃走
しおりを挟む
「えっ? えっ?」
ギースの振り下ろした剣は、何かに弾かれる。
……いや、私は、これが何かを知っている。
そっと、右手にあるいつもは見えない指輪を見れば、それは確かに光を発していて、結界を張る効果を発揮していることを表していた。
「お姉様の、魔法具……」
発動条件は、私が攻撃を受けた時だったはずなのだが、もしかした、私が大切に想う人が攻撃を受けた時も発動してくれるのかもしれない。
「ギー、ス……?」
結界で弾かれ、距離を取ったギース。そして、振り向いたアルムは、敵の正体を知り、瞠目する。しかし……。
「……いや、違うな。何者だ?」
「おや? ギースで間違ってはいませんよ? この体は、ですがね」
(それは、どういう……?)
ギースであって、ギースでないという言い方に、私は疑問を覚える。しかし、それを問いただす前に、ギースが動く。
「せっかく殺すチャンスでしたが、仕方ありませんね。今日のところは、お暇させていただきましょう」
「させると思うか?」
ニッコリと笑うギースに対して、アルムは厳しい視線と殺気を向ける。そして、一瞬、私の方にギースの視線が向いた時……何とも言えない嫌な予感がした。
「またお会いしましょう。シェイラ様」
私に意識が向いていると分かり、駆け出したアルム。そして、ギースがウインクをした次の瞬間……ふっと、体が軽くなる。
「えっ? ……き、きゃあぁぁぁぁあっ!!」
「シェイラ!?」
私の悲鳴に驚いて振り向きかけたアルムに……私は、つい、水球を飛ばしていた。
「見ないでぇっ!」
「うぷっ」
(ふっ、服が、服がっ、服がぁっ! 何でっ、どうしてぇっ!!)
一応、拐われてから、着替えとして用意されていたワンピース。それが、肩口のところから大きく裂けて、ハラリと地面に落ちてしまっていた。
「シェイラっ!」
「シェイラさんっ!」
「お姉様以外来ないでぇっ!」
お姉様と、ついでにルティアスの声までして、私は大混乱に陥りながら叫ぶ。ちなみに、ギースはその混乱に乗じて、いつの間にか姿を消し、アルムはアルムで耳を真っ赤にして後ろを向いてうずくまっている。
その後、お姉様に服を用意してもらった私は、何とか、立ち直ることができた。
……いや、アルムとギースに見られたであろう事実は消せないが、そこは思い出したら危険だ。
私達は、その後すぐに、竜珠殿へと引き上げるのだった。
ギースの振り下ろした剣は、何かに弾かれる。
……いや、私は、これが何かを知っている。
そっと、右手にあるいつもは見えない指輪を見れば、それは確かに光を発していて、結界を張る効果を発揮していることを表していた。
「お姉様の、魔法具……」
発動条件は、私が攻撃を受けた時だったはずなのだが、もしかした、私が大切に想う人が攻撃を受けた時も発動してくれるのかもしれない。
「ギー、ス……?」
結界で弾かれ、距離を取ったギース。そして、振り向いたアルムは、敵の正体を知り、瞠目する。しかし……。
「……いや、違うな。何者だ?」
「おや? ギースで間違ってはいませんよ? この体は、ですがね」
(それは、どういう……?)
ギースであって、ギースでないという言い方に、私は疑問を覚える。しかし、それを問いただす前に、ギースが動く。
「せっかく殺すチャンスでしたが、仕方ありませんね。今日のところは、お暇させていただきましょう」
「させると思うか?」
ニッコリと笑うギースに対して、アルムは厳しい視線と殺気を向ける。そして、一瞬、私の方にギースの視線が向いた時……何とも言えない嫌な予感がした。
「またお会いしましょう。シェイラ様」
私に意識が向いていると分かり、駆け出したアルム。そして、ギースがウインクをした次の瞬間……ふっと、体が軽くなる。
「えっ? ……き、きゃあぁぁぁぁあっ!!」
「シェイラ!?」
私の悲鳴に驚いて振り向きかけたアルムに……私は、つい、水球を飛ばしていた。
「見ないでぇっ!」
「うぷっ」
(ふっ、服が、服がっ、服がぁっ! 何でっ、どうしてぇっ!!)
一応、拐われてから、着替えとして用意されていたワンピース。それが、肩口のところから大きく裂けて、ハラリと地面に落ちてしまっていた。
「シェイラっ!」
「シェイラさんっ!」
「お姉様以外来ないでぇっ!」
お姉様と、ついでにルティアスの声までして、私は大混乱に陥りながら叫ぶ。ちなみに、ギースはその混乱に乗じて、いつの間にか姿を消し、アルムはアルムで耳を真っ赤にして後ろを向いてうずくまっている。
その後、お姉様に服を用意してもらった私は、何とか、立ち直ることができた。
……いや、アルムとギースに見られたであろう事実は消せないが、そこは思い出したら危険だ。
私達は、その後すぐに、竜珠殿へと引き上げるのだった。
1
お気に入りに追加
1,199
あなたにおすすめの小説
【完結】元お飾り聖女はなぜか腹黒宰相様に溺愛されています!?
雨宮羽那
恋愛
元社畜聖女×笑顔の腹黒宰相のラブストーリー。
◇◇◇◇
名も無きお飾り聖女だった私は、過労で倒れたその日、思い出した。
自分が前世、疲れきった新卒社会人・花菱桔梗(はなびし ききょう)という日本人女性だったことに。
運良く婚約者の王子から婚約破棄を告げられたので、前世の教訓を活かし私は逃げることに決めました!
なのに、宰相閣下から求婚されて!? 何故か甘やかされているんですけど、何か裏があったりしますか!?
◇◇◇◇
お気に入り登録、エールありがとうございます♡
※ざまぁはゆっくりじわじわと進行します。
※「小説家になろう」「エブリスタ」様にも掲載しております(アルファポリス先行)。
※この作品はフィクションです。特定の政治思想を肯定または否定するものではありません(_ _*))
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
稀代の悪女として処刑されたはずの私は、なぜか幼女になって公爵様に溺愛されています
水谷繭
ファンタジー
グレースは皆に悪女と罵られながら処刑された。しかし、確かに死んだはずが目を覚ますと森の中だった。その上、なぜか元の姿とは似ても似つかない幼女の姿になっている。
森を彷徨っていたグレースは、公爵様に見つかりお屋敷に引き取られることに。初めは戸惑っていたグレースだが、都合がいいので、かわい子ぶって公爵家の力を利用することに決める。
公爵様にシャーリーと名付けられ、溺愛されながら過ごすグレース。そんなある日、前世で自分を陥れたシスターと出くわす。公爵様に好意を持っているそのシスターは、シャーリーを世話するという口実で公爵に近づこうとする。シスターの目的を察したグレースは、彼女に復讐することを思いつき……。
◇画像はGirly Drop様からお借りしました
◆エール送ってくれた方ありがとうございます!
この度、猛獣公爵の嫁になりまして~厄介払いされた令嬢は旦那様に溺愛されながら、もふもふ達と楽しくモノづくりライフを送っています~
柚木崎 史乃
ファンタジー
名門伯爵家の次女であるコーデリアは、魔力に恵まれなかったせいで双子の姉であるビクトリアと比較されて育った。
家族から疎まれ虐げられる日々に、コーデリアの心は疲弊し限界を迎えていた。
そんな時、どういうわけか縁談を持ちかけてきた貴族がいた。彼の名はジェイド。社交界では、「猛獣公爵」と呼ばれ恐れられている存在だ。
というのも、ある日を境に文字通り猛獣の姿へと変わってしまったらしいのだ。
けれど、いざ顔を合わせてみると全く怖くないどころか寧ろ優しく紳士で、その姿も動物が好きなコーデリアからすれば思わず触りたくなるほど毛並みの良い愛らしい白熊であった。
そんな彼は月に数回、人の姿に戻る。しかも、本来の姿は類まれな美青年なものだから、コーデリアはその度にたじたじになってしまう。
ジェイド曰くここ数年、公爵領では鉱山から流れてくる瘴気が原因で獣の姿になってしまう奇病が流行っているらしい。
それを知ったコーデリアは、瘴気の影響で不便な生活を強いられている領民たちのために鉱石を使って次々と便利な魔導具を発明していく。
そして、ジェイドからその才能を評価され知らず知らずのうちに溺愛されていくのであった。
一方、コーデリアを厄介払いした家族は悪事が白日のもとに晒された挙句、王家からも見放され窮地に追い込まれていくが……。
これは、虐げられていた才女が嫁ぎ先でその才能を発揮し、周囲の人々に無自覚に愛され幸せになるまでを描いた物語。
他サイトでも掲載中。
【完結】魔力がないと見下されていた私は仮面で素顔を隠した伯爵と結婚することになりました〜さらに魔力石まで作り出せなんて、冗談じゃない〜
光城 朱純
ファンタジー
魔力が強いはずの見た目に生まれた王女リーゼロッテ。
それにも拘わらず、魔力の片鱗すらみえないリーゼロッテは家族中から疎まれ、ある日辺境伯との結婚を決められる。
自分のあざを隠す為に仮面をつけて生活する辺境伯は、龍を操ることができると噂の伯爵。
隣に魔獣の出る森を持ち、雪深い辺境地での冷たい辺境伯との新婚生活は、身も心も凍えそう。
それでも国の端でひっそり生きていくから、もう放っておいて下さい。
私のことは私で何とかします。
ですから、国のことは国王が何とかすればいいのです。
魔力が使えない私に、魔力石を作り出せだなんて、そんなの無茶です。
もし作り出すことができたとしても、やすやすと渡したりしませんよ?
これまで虐げられた分、ちゃんと返して下さいね。
表紙はPhoto AC様よりお借りしております。
記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした
結城芙由奈@コミカライズ発売中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる