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第三章 悪魔
第四十九話 調査報告書(アルム視点)
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シェイラとドライムから、婚約の打診が来た。ボクは、それだけでショックを受けて、返事をすることもできなかった。
(い、いや、返事をしなかったのは、婚約の先延ばしになる)
ひとまずは、ドライムは家に戻ってもらい、帰ってきたシェイラには、部屋で休んでもらっている。
「どう、したものか……」
もちろん、分かっている。ボクは、シェイラとドライムの婚約を認めるべきだと。そうして、シェイラへの想いを絶ち切ってしまうべきなのだと。何せ、ドライムは顔以外は完璧なのだ。顔だけが、どうしても気に入らないだけ。しかも、一般的に見れば、ドライムの顔は十分整っている。ボクのこの気持ちは、完全ないちゃもんでしかなかった。
「陛下、調査報告書です」
「あぁ」
あともう少しで仕事が終わり、シェイラと向き合わなければならないというところで、ギースから送られてきた調査報告書が来る。
「悪魔に関しては、成果、なしか……」
ギースの調査報告書では、今のところ、悪魔に関しての進展はない。どうやら、引き続き調査するようだ。そして……。
「こちらは片付いたな。フィーク伯爵家、ナット領主に闇魔法が施された調度品を売るよう指示した家。叩けば埃が出るとは思っていたが、存外、埃だらけだったな」
叩けば叩くほどに埃が出るその様子に、ボクは何度も様々な悪事の報告を読んできたが、今日、それがようやく出揃った。そもそも、これだけの悪事を働いていながら見つけられなかったのは問題なのだが、なぜ今までこれらのことが露見しなかったのかは不明だ。横領、殺人、恐喝、暴行、誘拐、人身売買などなど、悪事のオンパレードで、それを知ったボクは目を剥いたものだ。
「こっちは、まだか。調度品を売っていたバルファ商会……ここは、怪しいのだがな」
限りなく黒に近い灰色で、ずっと存在しているバルファ商会。悪魔が関わるなら、ここにも探りを入れるべきだと思える場所なのだが、どうしても情報が出てこない。こちらも、引き続きギースに調べさせなければならない。
「はぁ……。……ん? これは……」
悪魔やナット領に関する調査報告書を読み進めていくと、ふと、別の報告書類に行き当たる。
「……ドライム・レンドルクについての報告書?」
どうやら、ギースはドライムのことまで調べてくれていたらしい。
どうせ、完璧な経歴しか出てこないのだろうと高を括りながらも、それでも一縷の希望を持って、その報告書を開く。
『ドライム・レンドルクは、何もかもが完璧な男として有名であるが、一つだけ、奇妙な噂があった。ドライム・レンドルクは死人であるという噂が。信憑性はないと思われるが、それらの噂は離れた場所でも噂されているため、調査を行うこととする』
「ドライムが、死人?」
そんなはずはない。ドライムは、ちゃんと話もできるし、動くこともできる。きっと、何かの間違いだろう。
そう、思うはずなのに、ボクは頭の中で何かが引っ掛かるような気がした。
「……ドライムは、あんな顔だっただろうか?」
一瞬だけ浮かんだ疑問。しかし、それももしかしたら、シェイラとの仲を認めたくないがためのものかもしれない。
「……シェイラのことなると、冷静な判断もできない、か……。重症だな」
頭を振って、ドライムへの不信感をひとまず払うと、ボクはもう一度報告書に目を通して――。コンコンコンと響いたノックの音に、誰何するのだった。
(い、いや、返事をしなかったのは、婚約の先延ばしになる)
ひとまずは、ドライムは家に戻ってもらい、帰ってきたシェイラには、部屋で休んでもらっている。
「どう、したものか……」
もちろん、分かっている。ボクは、シェイラとドライムの婚約を認めるべきだと。そうして、シェイラへの想いを絶ち切ってしまうべきなのだと。何せ、ドライムは顔以外は完璧なのだ。顔だけが、どうしても気に入らないだけ。しかも、一般的に見れば、ドライムの顔は十分整っている。ボクのこの気持ちは、完全ないちゃもんでしかなかった。
「陛下、調査報告書です」
「あぁ」
あともう少しで仕事が終わり、シェイラと向き合わなければならないというところで、ギースから送られてきた調査報告書が来る。
「悪魔に関しては、成果、なしか……」
ギースの調査報告書では、今のところ、悪魔に関しての進展はない。どうやら、引き続き調査するようだ。そして……。
「こちらは片付いたな。フィーク伯爵家、ナット領主に闇魔法が施された調度品を売るよう指示した家。叩けば埃が出るとは思っていたが、存外、埃だらけだったな」
叩けば叩くほどに埃が出るその様子に、ボクは何度も様々な悪事の報告を読んできたが、今日、それがようやく出揃った。そもそも、これだけの悪事を働いていながら見つけられなかったのは問題なのだが、なぜ今までこれらのことが露見しなかったのかは不明だ。横領、殺人、恐喝、暴行、誘拐、人身売買などなど、悪事のオンパレードで、それを知ったボクは目を剥いたものだ。
「こっちは、まだか。調度品を売っていたバルファ商会……ここは、怪しいのだがな」
限りなく黒に近い灰色で、ずっと存在しているバルファ商会。悪魔が関わるなら、ここにも探りを入れるべきだと思える場所なのだが、どうしても情報が出てこない。こちらも、引き続きギースに調べさせなければならない。
「はぁ……。……ん? これは……」
悪魔やナット領に関する調査報告書を読み進めていくと、ふと、別の報告書類に行き当たる。
「……ドライム・レンドルクについての報告書?」
どうやら、ギースはドライムのことまで調べてくれていたらしい。
どうせ、完璧な経歴しか出てこないのだろうと高を括りながらも、それでも一縷の希望を持って、その報告書を開く。
『ドライム・レンドルクは、何もかもが完璧な男として有名であるが、一つだけ、奇妙な噂があった。ドライム・レンドルクは死人であるという噂が。信憑性はないと思われるが、それらの噂は離れた場所でも噂されているため、調査を行うこととする』
「ドライムが、死人?」
そんなはずはない。ドライムは、ちゃんと話もできるし、動くこともできる。きっと、何かの間違いだろう。
そう、思うはずなのに、ボクは頭の中で何かが引っ掛かるような気がした。
「……ドライムは、あんな顔だっただろうか?」
一瞬だけ浮かんだ疑問。しかし、それももしかしたら、シェイラとの仲を認めたくないがためのものかもしれない。
「……シェイラのことなると、冷静な判断もできない、か……。重症だな」
頭を振って、ドライムへの不信感をひとまず払うと、ボクはもう一度報告書に目を通して――。コンコンコンと響いたノックの音に、誰何するのだった。
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