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第一章 ドラグニル竜国へ
第十七話 怖い人(ギース視点)
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「ふふふっ、本当に、愚かな方はどこにでも居るものですね?」
現在、俺は新たに主となったシェイラ様の元に情報を届けて……冷や汗が止まらない状態だ。
「ドムル子爵に、ゲイズ男爵……とっても面白い情報です」
「はっ、ありがとうございます」
シェイラ様は……この方は、とんでもない諜報能力を持つ化け物だ。たった一人で、百人以上居る諜報員と渡り合い、あろうことか圧勝してみせたこの方に、俺は一生逆らえそうにない。
ただただ、自分で情報を集めるのは疲れるからという理由で俺達影を求めた彼女は、今、動きのある貴族家の資料を片手に笑みを深めている。彼らの共通点はただ一つ。寵妃であるシェイラ様を排除しようとしていることだ。
(そんなこと、陛下が許さない、だろうが……その前に、シェイラ様を敵に回した時点で、未来はない)
恐らく、今この国で一番敵に回したくない相手は、シェイラ様だろう。しかし、それが分からない愚か者達は、いつの間にか消えていくことになる。今だって、シェイラ様はご機嫌で彼らの不正の数々を暴く気満々だ。
「軽い情報ならありますよ? ですが、調べるなら、徹底的に、そして、それでも足りないなら、情報操作で追い詰めるくらい簡単ですし、ね?」
ニコニコするシェイラ様が、俺は怖い。陛下から、特別に、俺はシェイラ様の正確な背景を教えていただいているが、シェイラ様をそこらの適当な貴族に下賜するのは不味いような気がしてならない。影でも太刀打ちできない情報量とその操作能力を持つ彼女が、もし反王政派のところにでも嫁げば……いや、そうでなくとも、彼女の能力があれば、王座の簒奪をも可能だろう。
「どうかしましたか? ギース?」
「……いえ」
できることなら、陛下に、シェイラ様を落としてもらいたいと思いながら、しかし下手な動きもできず、ただただ恐縮することしかできない。
「……そんなに警戒しないでください。私は、アルムとは良い関係を築いていきたいと思っていますのよ?」
「それは、理解しています」
「そう、ですか?」
「はい」
今は、今だけは、シェイラ様が敵に回ることはない。それがどれだけ奇跡的なことか、できることなら誰かに叫んで聞かせたい。
(もちろん、そんなこと、言えるはずもないが……)
「……とりあえず、情報操作は必要ですね? 今回はギース達に任せましょう。よろしくお願いしますね?」
「承知」
言われながら、いくつかの紙を手渡された俺は、そこにはきっと、問題の子爵家と男爵家の情報があるのだろうとげっそりしながら、彼女の機嫌を損ねないように、しっかりと働きで返すことにするのだった。
現在、俺は新たに主となったシェイラ様の元に情報を届けて……冷や汗が止まらない状態だ。
「ドムル子爵に、ゲイズ男爵……とっても面白い情報です」
「はっ、ありがとうございます」
シェイラ様は……この方は、とんでもない諜報能力を持つ化け物だ。たった一人で、百人以上居る諜報員と渡り合い、あろうことか圧勝してみせたこの方に、俺は一生逆らえそうにない。
ただただ、自分で情報を集めるのは疲れるからという理由で俺達影を求めた彼女は、今、動きのある貴族家の資料を片手に笑みを深めている。彼らの共通点はただ一つ。寵妃であるシェイラ様を排除しようとしていることだ。
(そんなこと、陛下が許さない、だろうが……その前に、シェイラ様を敵に回した時点で、未来はない)
恐らく、今この国で一番敵に回したくない相手は、シェイラ様だろう。しかし、それが分からない愚か者達は、いつの間にか消えていくことになる。今だって、シェイラ様はご機嫌で彼らの不正の数々を暴く気満々だ。
「軽い情報ならありますよ? ですが、調べるなら、徹底的に、そして、それでも足りないなら、情報操作で追い詰めるくらい簡単ですし、ね?」
ニコニコするシェイラ様が、俺は怖い。陛下から、特別に、俺はシェイラ様の正確な背景を教えていただいているが、シェイラ様をそこらの適当な貴族に下賜するのは不味いような気がしてならない。影でも太刀打ちできない情報量とその操作能力を持つ彼女が、もし反王政派のところにでも嫁げば……いや、そうでなくとも、彼女の能力があれば、王座の簒奪をも可能だろう。
「どうかしましたか? ギース?」
「……いえ」
できることなら、陛下に、シェイラ様を落としてもらいたいと思いながら、しかし下手な動きもできず、ただただ恐縮することしかできない。
「……そんなに警戒しないでください。私は、アルムとは良い関係を築いていきたいと思っていますのよ?」
「それは、理解しています」
「そう、ですか?」
「はい」
今は、今だけは、シェイラ様が敵に回ることはない。それがどれだけ奇跡的なことか、できることなら誰かに叫んで聞かせたい。
(もちろん、そんなこと、言えるはずもないが……)
「……とりあえず、情報操作は必要ですね? 今回はギース達に任せましょう。よろしくお願いしますね?」
「承知」
言われながら、いくつかの紙を手渡された俺は、そこにはきっと、問題の子爵家と男爵家の情報があるのだろうとげっそりしながら、彼女の機嫌を損ねないように、しっかりと働きで返すことにするのだった。
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