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第一章 ドラグニル竜国へ

第十五話 試験の行方

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 試験内容は至って単純。一週間という期間内に、アルムにとって有用な情報を見つけ出し、それがどれだけ有用なのかをアルムに判定してもらうというもの。そして、それにはもちろん、試験監督として私も参加する。


「陛下、ハンデを求める」

「あら? 私に敵わないからと、ハンデを求めるのですか? それも構いませんが「違う」」


 どこか怒りの空気を纏ったギースの言いたいことは分かる。ついこの間この国に来たばかりの私に、この国の有用な情報がどれかなど分かるはずもないと思った上での判断だろう。けれど、それは私にとって侮辱だ。


「私に、ハンデがいるとでも? 貴方よりよっぽどか優秀なこの私に?」


 煽れば煽るほどに怒りの色を強くするギース。けれど、私は全く負ける気がしなかった。


「吠え面をかかせてやる」

「ふふっ、楽しみにしています」


 お互い、笑わない目で見つめ合った後は、そのままその目をアルムに向ける。


「……分かった。それで気がすむのであれば、そうすると良い。ただし、シェイラ。お前の能力が劣っているとなった場合、影の貸し出しはなしだ」

「えぇ、分かりました」


 私は、アルムにニコリと微笑んで請け負う。レイリン王国一番の諜報員である私の実力を、とくとご覧に入れようではないか。


「陛下、御前、失礼しても?」

「許す」

「では、アルム。私も少し、席を外しますね? 情報が入り次第、報告に来ますので」

「分かった」


 私は、アルムの部屋を出て、自室へと迷わず進む。そうして、ベラを退出させ、周りに盗聴や監視ようの魔法がないことを確認した私は……。


「さぁ、出てきなさい。私の可愛い子達」


 それは、私の固有魔法。私の諜報の要。

 私の影が少し伸びたかと思えば、次の瞬間、そこから大量の子蜘蛛達が姿を現す。彼らが見聞きしたことは、全て、私に伝わる仕組みとなっているそれは、きっと、私以外に使いこなせる者など居ない。なぜなら……。


「さて、並列思考を始めましょうか」


 私は、一人で何人分もの思考を展開できるという能力を持っている。お姉様は分身の能力を持っていたが、私はそれとは別の能力として、この並列思考を持っていた。そしてそれは、諜報において莫大な力を発揮する。


「……紙が必要ですね」


 一気に散らばった蜘蛛達を眺めた私は、早速報告内容を見つけて、それらを紙に書き記すのだった。

 それから一週間後、当然のように、アルムは私の情報を評価し、この試験に参加した影達の中で、特に使えそうだった者達は、全て、私の傘下に入る。その中には、ギースも存在していたのだった。
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