私、異世界で監禁されました!?

星宮歌

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第九章 邪王討伐

第百六十一話 聖剣を仲間にしますか?

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 ライナードさんは善戦した。私の部屋の中で、必死に聖剣を叩き潰そうとした。けれど……。


『ふんっ、ふんっ、まだまだぁっ!』


 聖剣は、どうやら自動的に戦闘行為が可能らしい。しかも、結構強い。そうしてしばらく経った頃、騒ぎを聞きつけたジークさんが現れる。


「ユーカっ、無事かっ!」

「えっと……はい。と、いうか……あれが、聖剣らしいんですけど……」

「聖剣?」


 ライナードさんと戦っている自立して動き回る剣を目撃したジークさんは、呆然と『あれが、聖剣……?』と呟く。


(どうしよう。戦いを止めさせた方が良いよね?)


 聖剣は、今のところ抜き身ではない。金の細工が施された美しい鞘に入ったまま、ライナードさんと戦っている。……しかも、ライナードさんをおちょくるように、度々足元を攻撃しながら……。


『さぁ、異世界の贈り人よっ。私を手に取ってくださいっ!』


 初めて、聖剣の足元への攻撃が決まった瞬間、聖剣は一気に私の方へと飛んできて、ちょっと反り返る。


「ふんっ」

『あふんっ』


 ただ、そんな聖剣に対して、ジークさんは蹴りを入れることを選択した。妙な悲鳴を上げた聖剣は、しかし、それでも私を諦めるつもりはないらしい。


『呼び方が不味いのでしょうか? では、異世界の姫君と呼ばせていただきますっ!』

「「そういう問題じゃないっ!」」


 ジークさんと私の声が重なり、聖剣への突っ込みが強行される。


(こんなに胡散臭いのが聖剣……神様、なんで、聖剣をこんな性格にしちゃったんですかっ!)


 あまりにも不審な聖剣を前に、私はどうしても手に取る勇気が持てないでいると、夕食が終わった頃に来ると宣言していたハミルさんが、この場に訪れる。


「? ジーク、ユーカ、どうしたの?」

「……聖剣が見つかった」

「ほんと!?」


 何も知らないハミルさんは、単純に目的のものが見つかったことに喜びの声を上げるものの、部屋の中へ向けた視線を外さないことや、断続的に響く金属音が気になったらしい。


「それで? 今度はどんな問題が起きたの?」

「……聖剣が胡散臭いです」

「?? 胡散臭い聖剣?」

『なんと失礼なっ! これでも私は、由緒正しき、神々に造られし聖剣っ! やっと、やーっと、出番を賜ったのですっ! 今度こそ活躍の場があるはずなのですっ!』


 何気に必死な聖剣の言葉に、そういえば、この聖剣は、邪王が誕生した時、邪王は封印されてしまったために、使われることなく放置されていたのだと思い出す。


『今度こそ、今度こそっ、私は世に語り継がれる活躍を残す時なのですっ! さぁ、姫っ! ともに参りましょう!』


 またしても、ライナードさんの足元に痛烈な攻撃を加えた聖剣は、私の前で反り返る。ただし、今度はジークさんだけじゃない。


「「ふんっ!」」

『あふんっ』


 二人に蹴られて、聖剣はまたしてもライナードさんの元へと戻る。

 ……そうして、その行為は、十回程続く。


『姫っ、姫っ、どうかっ、どうか私目とともに戦ってくださいっ! お願いしますっ、お願いしますっ』


 最後には、深く深く頭(?)を下げて頼み込む聖剣に、とりあえず話だけでも聞いて上げようとジークさんとハミルさんに提案するのだった。……ちなみに、ライナードさんはすでに、足が限界だったらしく、護衛の交代を余儀なくされた。


「えっと、とりあえず、あなたを持てば良いのかな?」

「ダメだ、ユーカ。こんな得体のしれないものを持つものじゃないっ」

「そうだよっ、ちゃんと分解して調べて、危険がないか確認しないとっ!」


 そう言いながら、ハミルさんは聖剣を手に取ろうとしたけれど、なぜかバチンッと弾かれてしまう。


『えぇっと、ですね。私、異世界人にしか触れないという設計が施されているのでありまして……はい』

「ふぅん? なら、なおさらユーカには持たせられないなぁ」

「ハミルさん……一応、聖剣らしいですし、私、持ってみようと「ダメだよっ」……はい」


 持ってみなくてはいけないのではないかと思うものの、ジークさんやハミルさんの心配も理解できるため、強くは出られない。けれどそんな中、聖剣は衝撃的な発言をする。


『もうまもなく、邪王が蘇りますっ! その時は、私を持った姫でなくては彼らを討伐することはできませんっ』

「まもなく? まもなくって、いつ?」


 そう、尋ねた直後だった。ズンッという音が響いたかと思えば、地面が大きく揺れ出す。


「きゃあっ」

「「ユーカ!」」


 バランスを崩した私は、ジークさんとハミルさんに抱き止められる。


『あぁ……復活してしまった……』


 数秒の地震が治まった後、聖剣の言葉が妙にはっきりと聞こえるのだった。
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