私、異世界で監禁されました!?

星宮歌

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第八章 再びリアン魔国へ

第百五十二話 勘違い

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 ハミルさんにお姫様抱っこという羞恥を、何と私の部屋まで体験させられた私は、最近、慣れたせいか、気絶ができなくなっていることを恨めしく思いながら、部屋で悶絶を続けるはめになった。

 そうして、どのくらいの時間が経っただろうか。しばらくすると、昼食に呼ばれ、ついでに見つけた箱に危険はないと判断されたということで、それを受けとる。箱に入っていたのは、青く輝く二つの石。これが『青の輝石』であろうことは一目瞭然だった。

 昼食の席には、ジークさんはいなかった。何でも、仕事があるから、そちらを先に片付けたいとのことで、自分に付き合わせてしまって申し訳ない気持ちと、ハミルさんと二人という緊張感とでどうにかなりそうだった。
 けれど、昼食にと食べたのは、美味しいチーズ入りの煮込みハンバーグで、とろーりとしたチーズの濃厚な風味と、ジューシーなハンバーグがとってもマッチしていて、大満足だった。
 思わず、ハミルさんに酷い羞恥を受けたことすらも忘れてしまうほどに、私は昼食に満足して……その後、ハミルさんから『じっくり話したいことがあるから、これからユーカの部屋に行っても良い?』と問われ、すぐさま少し前にお姫様抱っこをされていたことを思い出し、真っ赤になった。


「えっと、その……」

「大丈夫。変なことはしないよ? ただ……ちょっと話をするだけだから」


 どこか妖艶な雰囲気を醸し出しながら、にっこりと笑うハミルさんは、何だか信用ならない。けれど、これが大切な話かもしれないとも思った私は、ぎこちないながらもどうにかうなずく。


「それじゃあ、行こうか」


 ハミルさんにエスコートされて、私は導かれるままに部屋へと戻る。扉を閉めて、後ろ手に鍵をかけたハミルさんは、そのまま何かの魔法を発動させる。


「ハミル、さん?」

「あぁ、大丈夫だよ。ただの防音結界だから」


 そして、部屋を見渡したハミルさんは、窓が開いていることに気づき、そこも閉めて、カーテンも閉める。これで、私はハミルさんから逃げられない。


「え、えっ、と……?」

(何だろう? 何か、ハミルさんを怒らせるようなこと、しちゃった? それとも……)


 頭の中に浮かんだのは、先程の妖艶なハミルさん。もしかしたら、そういうことかもしれないと混乱した頭で考えてしまった私は、顔に熱が集中するのを抑えられなかった。


「おいで、ユーカ」

「は、はい……」

(ど、どうしよう? こういう時って、他の人はどうしてるのっ!?)


 ゆっくりとハミルさんの前まで向かう中、私は懸命に思考を巡らせる。けれど、生憎とこんなシチュエーションの話を友達とした記憶はない。いや、そもそも、日本では友達なんて居なかったし、こっちに来てからは、レティシアさんやアマーリエさんが女友達ではあるけれど、そういう話まではできていない。
 内心で大パニックを起こす私は、それをハミルさんに気づかれないように思わずうつむく。


「ユーカ」


 所詮、離れているのは数歩の距離。どんなにゆっくり歩いたところで、良い案を出せる時間を稼ぐことなどできない。ハミルさんの腕にすっぽりと隠れる形で抱き締められた私は、もう、完全に思考停止状態だ。


「ユーカ。多分だけど、ムルムルの森には今日行くべきなんだと思う。塔にあったメッセージと、絵本の内容を考えると、月と月が重なる今日に、何かあるんだと思うんだ」


 だから、私はハミルさんの言葉をすぐには理解できなかった。


「『その日』っていうのは、きっと、絵本にあった『月が重なる日』なんじゃないかなって思って……そうなると、それは今日なんだ。でも、僕はこの後、ちょっとした仕事が入っていて、抜ける口実を作るのが難しい。だから、今から、僕らがここに居ると見せかけて、ムルムルの森に飛ぼうと思うんだけど、大丈夫かな?」


 抱き締めたまま、ゆっくりと説明してくれるハミルさんに、私はようやく、早とちりをしてしまったことに気づく。


「わ、分かり、ました」

「そっか! それじゃあ、ジークにも連絡を入れて、現地集合ってなってるから行くよ! って、ユーカ? 顔が赤いけど、大丈夫?」

「だっ、大丈夫ですっ!」

(言えない。とんでもなく破廉恥な勘違いをしていたなんてっ)


 必死にハミルさんに返事をした私は、訝しげにするハミルさんに『早く行きましょう』とせっつくことによって、ようやく、窮地を脱するのだった。
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