155 / 173
第八章 再びリアン魔国へ
第百五十話 推理と絵本(ハミルトン視点)
しおりを挟む
あーちゃん姿でユーカと眠った翌日、ジークフリートが訪ねて来たことで、事態は動く。
「『高く奥深き間』? それはもしかして、星見の塔のことじゃないか?」
朝食の席で、昨日、ユーカと一緒になって考えても答えが出なかったそれに、ジークフリートはあっさりと答えを出す。もちろん、それが正しい保証はないものの、何だか少し悔しかった。
「なぜ、星見の塔なんだい?」
「俺もチラリと読んだくらいの記憶しかないが、昔、星見の塔の最上階は、『奥の間』と呼ばれていたらしい。高い場所という符号も一致するし、もしかしたらと思ってな」
「なら、この『青と赤』っていうのは何でしょう? 星見の塔というくらいだから、星を指していたりするんでしょうか?」
「あっ……」
ユーカの推測に、僕は一つの心当たりを見つけて声を上げる。
「何かあるのか? ハミル?」
問いかけられるままに、僕は心当たりを告げる。
「うん、確か、星の物語で青と赤の星をモチーフにした物語があったはずだよ。内容までは覚えてないけど……」
そう言いながら、『『青赤の星々』ってタイトルの絵本だよ』と、待機していたアマーリエに告げて、探しに行ってもらう。
「じゃあ、もしかしたらその本が手がかりになるかもしれないですね」
「うん、そうだね」
僕もユーカの役に立てた。そのことが嬉しくて相好を崩していると、隣に居たジークフリートから強い視線を感じる。どうやら、先程の僕みたいに、今度はジークフリートの方が嫉妬しているらしい。
「えっと、それじゃあ、この後はすぐに星見の塔に行ってみますか?」
「あぁ、それが良いだろう。俺も、仕事は調整しているから、少しの間は一緒に居られる」
「僕もだよ」
とりあえず、朝から少し仕事をこなしておいたため、ユーカと二時間くらいなら探索に付き合うことも可能だ。
「ありがとうございます」
ふわりと微笑むユーカの表情に、僕は一気に抱き締めたい衝動に駆られ、それを一生懸命抑え込む。
(ダメだよ。今、抱き締めたら、抑えが効かなくなるっ)
本当は、ずっと前からプロポーズしてしまおうと考えていた。ただ、どんなセリフが良いだろうかと考え続けているうちに邪王とやらの討伐をしなければならないとなってしまって、タイミングを逃してしまったのだ。想いが通じ合っていると分かった時から、もう、僕はユーカにプロポーズしたくて仕方がなかった。そしてそれは、恐らくジークフリートもそうだろう。
(プロポーズの言葉は、ジークと被らないように、そして、よりユーカの心に残るようにしなきゃいけないよねっ)
この話をアマーリエが聞いたら、『何をウジウジしているんですのっ!』と怒られそうだが、僕は真剣に思い悩んでいるのだ。時間はかかりそうだが、必ず、ユーカに最高のプロポーズを届けてみせると気合いを入れる。
(まぁ、まずはこの件を解決してからじゃなきゃ難しいだろうけどね)
邪王の討伐が終わったら、ユーカにプロポーズをしよう。きっと、ジークも同じことを考えているだろうから、ジークよりも早くプロポーズできるように、今のうちにセリフを考えておかなければならないだろう。
朝食を終え、またユーカの両手を僕とジークフリートで取りながら歩いていくと、絵本を探しに行ったアマーリエが僕達の方へと向かってきていた。
「お兄様。言われた絵本はこれで間違いないですか?」
「うん、間違いないよ」
そこには、青と赤の光の玉が表紙に描かれた絵本があった。タイトルも、僕の記憶通りのものだ。
「綺麗な絵柄ですね」
「うん、そうだね。何だか暖かみを感じる光の描き方だよね」
そう言いながら、僕は奥付けの部分を見て、この絵本がいつ出されたものなのかを確認しようとして、その違和感に首をかしげる。
「皇魔歴九千六十四年……?」
「何だその数字は?」
奥付けに書かれていた出版年を確認して声に出すと、案の定、ジークフリートから突っ込みが入る。
「千年も先の未来に何かあるのか?」
そう、そこに書かれているのは、今から千年後としか思えない年号だった。ちなみに、現在は皇魔歴八千五十年だ。
とりあえず、僕は無言のまま、奥付けをジークフリートやアマーリエにも見せてみる。
「……」
「……」
「……」
「あ、あの? どうしたんですか?」
三人で沈黙すると、ユーカが不安そうに僕達を見つめていることに気づいて、慌てて事情を説明する。
「い、いや、この本の出版年がおかしくてねっ」
「千年も先の未来に出版されていることになってるんだ」
「これ、書き間違いですわよね?」
そう言う僕達を見ながら、ユーカは自分にも見せてほしいと絵本を受け取る。そして、しばらくそのページをパラパラと捲った後、パタンとそれを閉じる。
「……」
「ユーカ?」
どこか戸惑っている様子のユーカに、ジークフリートが真っ先に声をかける。すると……。
「……私の字でした」
「「「はっ?」」」
「この絵本の文章は、私が書いてるみたいです」
「「「えぇっ!?」」」
どうやら、僕達はとんでもないものを見つけたらしかった。
「『高く奥深き間』? それはもしかして、星見の塔のことじゃないか?」
朝食の席で、昨日、ユーカと一緒になって考えても答えが出なかったそれに、ジークフリートはあっさりと答えを出す。もちろん、それが正しい保証はないものの、何だか少し悔しかった。
「なぜ、星見の塔なんだい?」
「俺もチラリと読んだくらいの記憶しかないが、昔、星見の塔の最上階は、『奥の間』と呼ばれていたらしい。高い場所という符号も一致するし、もしかしたらと思ってな」
「なら、この『青と赤』っていうのは何でしょう? 星見の塔というくらいだから、星を指していたりするんでしょうか?」
「あっ……」
ユーカの推測に、僕は一つの心当たりを見つけて声を上げる。
「何かあるのか? ハミル?」
問いかけられるままに、僕は心当たりを告げる。
「うん、確か、星の物語で青と赤の星をモチーフにした物語があったはずだよ。内容までは覚えてないけど……」
そう言いながら、『『青赤の星々』ってタイトルの絵本だよ』と、待機していたアマーリエに告げて、探しに行ってもらう。
「じゃあ、もしかしたらその本が手がかりになるかもしれないですね」
「うん、そうだね」
僕もユーカの役に立てた。そのことが嬉しくて相好を崩していると、隣に居たジークフリートから強い視線を感じる。どうやら、先程の僕みたいに、今度はジークフリートの方が嫉妬しているらしい。
「えっと、それじゃあ、この後はすぐに星見の塔に行ってみますか?」
「あぁ、それが良いだろう。俺も、仕事は調整しているから、少しの間は一緒に居られる」
「僕もだよ」
とりあえず、朝から少し仕事をこなしておいたため、ユーカと二時間くらいなら探索に付き合うことも可能だ。
「ありがとうございます」
ふわりと微笑むユーカの表情に、僕は一気に抱き締めたい衝動に駆られ、それを一生懸命抑え込む。
(ダメだよ。今、抱き締めたら、抑えが効かなくなるっ)
本当は、ずっと前からプロポーズしてしまおうと考えていた。ただ、どんなセリフが良いだろうかと考え続けているうちに邪王とやらの討伐をしなければならないとなってしまって、タイミングを逃してしまったのだ。想いが通じ合っていると分かった時から、もう、僕はユーカにプロポーズしたくて仕方がなかった。そしてそれは、恐らくジークフリートもそうだろう。
(プロポーズの言葉は、ジークと被らないように、そして、よりユーカの心に残るようにしなきゃいけないよねっ)
この話をアマーリエが聞いたら、『何をウジウジしているんですのっ!』と怒られそうだが、僕は真剣に思い悩んでいるのだ。時間はかかりそうだが、必ず、ユーカに最高のプロポーズを届けてみせると気合いを入れる。
(まぁ、まずはこの件を解決してからじゃなきゃ難しいだろうけどね)
邪王の討伐が終わったら、ユーカにプロポーズをしよう。きっと、ジークも同じことを考えているだろうから、ジークよりも早くプロポーズできるように、今のうちにセリフを考えておかなければならないだろう。
朝食を終え、またユーカの両手を僕とジークフリートで取りながら歩いていくと、絵本を探しに行ったアマーリエが僕達の方へと向かってきていた。
「お兄様。言われた絵本はこれで間違いないですか?」
「うん、間違いないよ」
そこには、青と赤の光の玉が表紙に描かれた絵本があった。タイトルも、僕の記憶通りのものだ。
「綺麗な絵柄ですね」
「うん、そうだね。何だか暖かみを感じる光の描き方だよね」
そう言いながら、僕は奥付けの部分を見て、この絵本がいつ出されたものなのかを確認しようとして、その違和感に首をかしげる。
「皇魔歴九千六十四年……?」
「何だその数字は?」
奥付けに書かれていた出版年を確認して声に出すと、案の定、ジークフリートから突っ込みが入る。
「千年も先の未来に何かあるのか?」
そう、そこに書かれているのは、今から千年後としか思えない年号だった。ちなみに、現在は皇魔歴八千五十年だ。
とりあえず、僕は無言のまま、奥付けをジークフリートやアマーリエにも見せてみる。
「……」
「……」
「……」
「あ、あの? どうしたんですか?」
三人で沈黙すると、ユーカが不安そうに僕達を見つめていることに気づいて、慌てて事情を説明する。
「い、いや、この本の出版年がおかしくてねっ」
「千年も先の未来に出版されていることになってるんだ」
「これ、書き間違いですわよね?」
そう言う僕達を見ながら、ユーカは自分にも見せてほしいと絵本を受け取る。そして、しばらくそのページをパラパラと捲った後、パタンとそれを閉じる。
「……」
「ユーカ?」
どこか戸惑っている様子のユーカに、ジークフリートが真っ先に声をかける。すると……。
「……私の字でした」
「「「はっ?」」」
「この絵本の文章は、私が書いてるみたいです」
「「「えぇっ!?」」」
どうやら、僕達はとんでもないものを見つけたらしかった。
77
お気に入り登録や感想を、ありがとうございます。これを励みに楽しく更新していきますね。
お気に入りに追加
8,219
あなたにおすすめの小説

異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜
京
恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。
右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。
そんな乙女ゲームのようなお話。


おばさんは、ひっそり暮らしたい
波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23

転生先は男女比50:1の世界!?
4036(シクミロ)
恋愛
男女比50:1の世界に転生した少女。
「まさか、男女比がおかしな世界とは・・・」
デブで自己中心的な女性が多い世界で、ひとり異質な少女は・・
どうなる!?学園生活!!

私、確かおばさんだったはずなんですが
花野はる
恋愛
不憫系男子をこよなく愛するヒロインの恋愛ストーリーです。
私は確か、日本人のおばさんだったはずなんですが、気がついたら西洋風異世界の貴族令嬢になっていました。
せっかく美しく若返ったのだから、人生勝ち組で楽しんでしまいましょう。
そう思っていたのですが、自分らしき令嬢の日記を見ると、クラスメイトの男の子をいじめていた事が分かって……。
正義感強いおばさんなめんな!
その男の子に謝って、きっとお友達になってみせましょう!
画像はフリー素材のとくだ屋さんからお借りしました。
目が覚めたら異世界でした!~病弱だけど、心優しい人達に出会えました。なので現代の知識で恩返ししながら元気に頑張って生きていきます!〜
楠ノ木雫
恋愛
病院に入院中だった私、奥村菖は知らず知らずに異世界へ続く穴に落っこちていたらしく、目が覚めたら知らない屋敷のベッドにいた。倒れていた菖を保護してくれたのはこの国の公爵家。彼女達からは、地球には帰れないと言われてしまった。
病気を患っている私はこのままでは死んでしまうのではないだろうかと悟ってしまったその時、いきなり目の前に〝妖精〟が現れた。その妖精達が持っていたものは幻の薬草と呼ばれるもので、自分の病気が治る事が発覚。治療を始めてどんどん元気になった。
元気になり、この国の公爵家にも歓迎されて。だから、恩返しの為に現代の知識をフル活用して頑張って元気に生きたいと思います!
でも、あれ? この世界には私の知る食材はないはずなのに、どうして食事にこの四角くて白い〝コレ〟が出てきたの……!?
※他の投稿サイトにも掲載しています。

転生した世界のイケメンが怖い
祐月
恋愛
わたしの通う学院では、近頃毎日のように喜劇が繰り広げられている。
第二皇子殿下を含む学院で人気の美形子息達がこぞって一人の子爵令嬢に愛を囁き、殿下の婚約者の公爵令嬢が諌めては返り討ちにあうという、わたしにはどこかで見覚えのある光景だ。
わたし以外の皆が口を揃えて言う。彼らはものすごい美形だと。
でもわたしは彼らが怖い。
わたしの目には彼らは同じ人間には見えない。
彼らはどこからどう見ても、女児向けアニメキャラクターショーの着ぐるみだった。
2024/10/06 IF追加
小説を読もう!にも掲載しています。

異世界に行った、そのあとで。
神宮寺 あおい
恋愛
新海なつめ三十五歳。
ある日見ず知らずの女子高校生の異世界転移に巻き込まれ、気づけばトルス国へ。
当然彼らが求めているのは聖女である女子高校生だけ。
おまけのような状態で現れたなつめに対しての扱いは散々な中、宰相の協力によって職と居場所を手に入れる。
いたって普通に過ごしていたら、いつのまにか聖女である女子高校生だけでなく王太子や高位貴族の子息たちがこぞって悩み相談をしにくるように。
『私はカウンセラーでも保健室の先生でもありません!』
そう思いつつも生来のお人好しの性格からみんなの悩みごとの相談にのっているうちに、いつの間にか年下の美丈夫に好かれるようになる。
そして、気づけば異世界で求婚されるという本人大混乱の事態に!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる