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第八章 再びリアン魔国へ
第百四十六話 重い愛情
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「なるほど、その『建国史』には『建国神話』が隠れていたと」
「えっと、はい。多分、ですけれど……」
あの後、ジークさんとアマーリエさんも来て、何か異常はないかと盛大に心配され、医者や呪いの専門家という魔族が来てからもずっと離れてはくれなかった。それぞれに異常はなく、健康体であるお墨付きをもらってからもそれは続き、ハミルさんに至っては、ずっと謝りながら私を後ろから抱き締めている始末だ。
「それに、その光景の中では、本は二冊あったんです。ですから、もう一冊、同じような本があるはずなんです」
「そうか、そちらは、俺達の方でも探してみよう」
とりあえず動くことのできない私は、ジークさんとハミルさんに何があったのかを詳しく話しているところだ。ちなみに、少し落ち着いたアマーリエさんは、護衛として近くで待機してくれている。
「この世界の神の名前は、リュティカ神とヒイラギ神とされているから、ユーカが見たのは本当に神かもしれないけど……魔法陣が隠されてることに気づけなかった自分が不甲斐ないよ」
さらりと、金髪のヒイラと呼ばれていた男と、黒髪のリュカと呼ばれていた男が神である可能性を示唆されつつ、私はハミルさんにぎゅうぎゅうと抱き締められる。不可抗力とはいえ、心配をかけてしまったのは確かなので、私はそれを拒絶することなく受け入れる。……かなり、心臓はドキドキするけれど。
「それで、ですね。そろそろお城の探索をしたいと「ダメだ!」「ダメだよっ!」」
そろそろ本来の目的のために行動したいと思って、それを口にすると、二人から一斉にダメ出しをくらう。しかも、その二人の目はとっても真剣だ。
「医者や呪いの専門家は何ともないと判断したが、ただでさえ得体の知れない魔法に巻き込まれたんだ。一日は安静にしておくべきだ」
「そうだよ、ユーカ。後から何か症状が出てくるかもしれないじゃないかっ。あぁっ、相手が神だとしても、ユーカを巻き込むなんて、許しがたいよっ」
こんこんと諭してくるジークさんと、涙目で嘆くハミルさんの様子に、私はそれに逆らってまで行動するべきかどうかを少し考えて……。
「大丈夫です。二人が一緒なら、危険もないでしょう?」
「それは……もちろん、そうだが……」
「ユーカ、僕はそれでも心配だよ。ユーカが居なくなるなんて、僕には耐えられないんだから」
探索に向かうべきだと判断して、二人も一緒にという提案をしてみるものの、どうにも簡単にはうなずいてくれそうにない。
(うーん、どうしよう……?)
今まで、何だかんだで私に甘い二人は、私の意思を尊重してくれていた。けれど、今回ばかりは別らしい。結果的に危険はなかったけれど、下手をすれば、私自身に何かが起こっていたかもしれないという事実が、二人を臆病にさせているのだ。
「私も、二人が居なくなるなんて、耐えられないんです」
上手い説得方法が思い浮かばない私は、とりあえず思うがままの言葉を紡ぐことにする。
「もし、私が間に合わなかったら、もし、邪王復活によって、二人に何かあったら、私は、生きていられる自信がありません」
正直な思いの丈を、もしかしたら、後日赤面するような内容になっているかもしれない想いを告げれば、二人の息を呑む音が聞こえる。
「そんなこと、言わないでくれっ! 俺達は、何があってもユーカの側にあり続けるっ。ユーカが死ぬのであれば、俺も一緒だ。だから、そんな、悲しいことは言わないでくれっ」
「僕も、ずっと、ずっと、ずーっと、ユーカの側に居続けるよっ! ユーカが離れてほしいって言っても聞いてあげないっ。絶対に生き残る! それでも、ユーカが死にたくなるのなら、僕も一緒に死ぬよ。どんなことがあっても、僕はユーカとともに居ることを約束するよっ」
悲壮な表情で重苦しい愛情を訴える二人に、私は、自分が何を言ったのかようやく自覚して、全身が沸騰したように熱くなる。
(こ、これって、私、すっごく重い告白をしたようなものじゃ……わーわーわーっ!)
要するに、『あなたが死ぬなら、私も死ぬ』という宣言をしてしまったわけで、説得に困ったからといって話して良いことではなかったと自覚してしまう。
「あ、ああ、あのっ、えっと……」
けれど、世間一般では重過ぎるとされる私の言葉に対して、それ以上の重さを示してくる二人の様子に、私はどうしようもない嬉しさで頬が緩みそうになってしまう。今まで愛情を受けて来なかった弊害か、私はどうやら、二人の重過ぎるくらいの愛情が心地よくて堪らないらしい。
「そ、そうっ、だから、後悔しないためにも、お城の探索の許可を、くださいっ」
脱線しかけた話を無理矢理、元に戻した私は、渋い顔をしながらもうなずく二人にホッとするのだった。
「えっと、はい。多分、ですけれど……」
あの後、ジークさんとアマーリエさんも来て、何か異常はないかと盛大に心配され、医者や呪いの専門家という魔族が来てからもずっと離れてはくれなかった。それぞれに異常はなく、健康体であるお墨付きをもらってからもそれは続き、ハミルさんに至っては、ずっと謝りながら私を後ろから抱き締めている始末だ。
「それに、その光景の中では、本は二冊あったんです。ですから、もう一冊、同じような本があるはずなんです」
「そうか、そちらは、俺達の方でも探してみよう」
とりあえず動くことのできない私は、ジークさんとハミルさんに何があったのかを詳しく話しているところだ。ちなみに、少し落ち着いたアマーリエさんは、護衛として近くで待機してくれている。
「この世界の神の名前は、リュティカ神とヒイラギ神とされているから、ユーカが見たのは本当に神かもしれないけど……魔法陣が隠されてることに気づけなかった自分が不甲斐ないよ」
さらりと、金髪のヒイラと呼ばれていた男と、黒髪のリュカと呼ばれていた男が神である可能性を示唆されつつ、私はハミルさんにぎゅうぎゅうと抱き締められる。不可抗力とはいえ、心配をかけてしまったのは確かなので、私はそれを拒絶することなく受け入れる。……かなり、心臓はドキドキするけれど。
「それで、ですね。そろそろお城の探索をしたいと「ダメだ!」「ダメだよっ!」」
そろそろ本来の目的のために行動したいと思って、それを口にすると、二人から一斉にダメ出しをくらう。しかも、その二人の目はとっても真剣だ。
「医者や呪いの専門家は何ともないと判断したが、ただでさえ得体の知れない魔法に巻き込まれたんだ。一日は安静にしておくべきだ」
「そうだよ、ユーカ。後から何か症状が出てくるかもしれないじゃないかっ。あぁっ、相手が神だとしても、ユーカを巻き込むなんて、許しがたいよっ」
こんこんと諭してくるジークさんと、涙目で嘆くハミルさんの様子に、私はそれに逆らってまで行動するべきかどうかを少し考えて……。
「大丈夫です。二人が一緒なら、危険もないでしょう?」
「それは……もちろん、そうだが……」
「ユーカ、僕はそれでも心配だよ。ユーカが居なくなるなんて、僕には耐えられないんだから」
探索に向かうべきだと判断して、二人も一緒にという提案をしてみるものの、どうにも簡単にはうなずいてくれそうにない。
(うーん、どうしよう……?)
今まで、何だかんだで私に甘い二人は、私の意思を尊重してくれていた。けれど、今回ばかりは別らしい。結果的に危険はなかったけれど、下手をすれば、私自身に何かが起こっていたかもしれないという事実が、二人を臆病にさせているのだ。
「私も、二人が居なくなるなんて、耐えられないんです」
上手い説得方法が思い浮かばない私は、とりあえず思うがままの言葉を紡ぐことにする。
「もし、私が間に合わなかったら、もし、邪王復活によって、二人に何かあったら、私は、生きていられる自信がありません」
正直な思いの丈を、もしかしたら、後日赤面するような内容になっているかもしれない想いを告げれば、二人の息を呑む音が聞こえる。
「そんなこと、言わないでくれっ! 俺達は、何があってもユーカの側にあり続けるっ。ユーカが死ぬのであれば、俺も一緒だ。だから、そんな、悲しいことは言わないでくれっ」
「僕も、ずっと、ずっと、ずーっと、ユーカの側に居続けるよっ! ユーカが離れてほしいって言っても聞いてあげないっ。絶対に生き残る! それでも、ユーカが死にたくなるのなら、僕も一緒に死ぬよ。どんなことがあっても、僕はユーカとともに居ることを約束するよっ」
悲壮な表情で重苦しい愛情を訴える二人に、私は、自分が何を言ったのかようやく自覚して、全身が沸騰したように熱くなる。
(こ、これって、私、すっごく重い告白をしたようなものじゃ……わーわーわーっ!)
要するに、『あなたが死ぬなら、私も死ぬ』という宣言をしてしまったわけで、説得に困ったからといって話して良いことではなかったと自覚してしまう。
「あ、ああ、あのっ、えっと……」
けれど、世間一般では重過ぎるとされる私の言葉に対して、それ以上の重さを示してくる二人の様子に、私はどうしようもない嬉しさで頬が緩みそうになってしまう。今まで愛情を受けて来なかった弊害か、私はどうやら、二人の重過ぎるくらいの愛情が心地よくて堪らないらしい。
「そ、そうっ、だから、後悔しないためにも、お城の探索の許可を、くださいっ」
脱線しかけた話を無理矢理、元に戻した私は、渋い顔をしながらもうなずく二人にホッとするのだった。
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