147 / 173
第八章 再びリアン魔国へ
第百四十二話 説得
しおりを挟む
(確かに、『俺達がなんとかしてみせる』とは聞いた、けれど……)
「ユーカお嬢様? どうなさいましたか?」
ジークさんもハミルさんも居ないテラスで、一人、お茶を飲んでため息を吐く私に、ララが心配そうに問いかけてくる。
「うん……ジークさん達から、何の話もないなぁって」
「話、ですか……ご主人様方は、お忙しいと伺っていますが」
「うん、予言者を要請するって話だったのに、未だに何の音沙汰もないのはおかしいと思うの」
あの手紙の一件から、五日が経った今日。あからさまに私への接触が減ったということも、私に何も話してくれないというのも、何だか不満だった。
(そういえば、手紙では二人を説得するように書かれてたっけ……)
もしかしたら、この状況を見越して書いていたのかもしれない。そう思うと、私はすぐにでも会いにいかなければならないような気がした。
残り少なかったお茶を一気に飲み干すと、私はすぐに、ジークさんが居るはずの執務室へと向かうことにする。護衛のライナードさんも引き連れて、早足で城の中を進む。
「ジークさん、入っても良いですか?」
執務室の前に辿り着いた私は、ノックとともに声をかけてみる。
「あぁ、良いぞ」
すぐに返事がきたことで、私は扉を開けて、ちょうど良くハミルさんも一緒に居るのを見つける。
「ユーカ、どうしたんだ?」
優しい笑顔で尋ねてくるジークさんだったけれど、今回、私は物申しにきているわけで、それに流されるわけにはいかない。
「予言者のことを聞きにきました。どうなりましたか?」
まさか、まだ要請を出していないということはあるまい。むしろ、もう予言が終わっている可能性だってある。ただし、その場合、私は二人に猛抗議をするつもりだけれど……。
「あ、あぁ、それに関しては、こちらで進めているから問題ない」
「……私も聞く権利はあると思いますが?」
「そ、そんなことより、ユーカ、庭に出て、紅茶でも飲まないかい?」
「紅茶は、先ほどいただきましたし、予言のことを聞きたいです」
あからさまに狼狽える二人を見て、私は確信する。二人はきっと、もう予言者に接触しているのだと。
「えっと、だね。予言者って、結構忙しくて、まだ、接触できていないというか……「嘘を吐く人は嫌いです」ごめんっ! もう接触してますっ!」
「お、おいっ」
私の一言ですっかり発言を翻したハミルさんに、ジークさんは慌てて口を挟むものの、にっこりと笑ってジークさんを見てみると、そのまま口をつぐむ。
「手紙には、私の力が必要だとありました。それなのに、何で私に情報をくれないんですか?」
「ユーカ……もしかして、怒ってる?」
「もしかしなくとも、怒ってます」
恐る恐るといった様子で尋ねるハミルさんに、私はきっぱりと宣言する。
「これ以上隠すようなら、これからはもう、二人と口をききませんので」
そう言った途端、二人は真っ青になって、その場で土下座を始める。
「すまないっ、ユーカ! それだけは勘弁してくれっ!」
「ごめんっ、ユーカ! 全部話すから、口をきかないなんて言わないで!」
見事なまでの綺麗に揃った土下座に、私は感心するでもなく、ただただ怒りのために淡々と告げる。
「それじゃあ、話してくれますよね?」
「「はいっ!」」
キビキビとした返事を返した二人は、すぐに近況報告を始める。曰く、予言者とは三日前に接触して予言してもらった。曰く、確かに滅亡の未来が見えた。曰く、予言者の力が強くないため、その未来の回避方法までは分からない。とのことだった。つまりは、予言の手紙以上の予言はできなかったということだ。
「なら、私の力が必要ってことになりますよね?」
「いや、しかし……」
「ユーカを危険にさらすわけには……」
手紙に書いてあった通りのことを言えば、ジークさんもハミルさんも渋る。とにかく渋る。
「……では、こうしましょう。私は、ジークさんかハミルさん、もしくは、二人が信頼する護衛の誰かと一緒に、お城探索をする。それで、『建国神話』や、お城に隠されている邪王討伐のために必要なものを見つける努力をする。それなら、心配はないですよね?」
これで反論するようなら、容赦はしないという思いを込めて睨めば、二人はぎこちないながらもうなずいてくれる。
「う、む」
「それなら、まぁ……」
「なら決まりです。それじゃあ、まずはリアン魔国に向かってみましょう」
『建国神話』がどちらの国にあるか分からない以上、まずは、リアン魔国を調べろとの言葉に従うべきだろう。そう提案すれば、ハミルさんが分かりやすく喜びの色を顔に浮かべる。
「うんっ、歓迎するよっ、ユーカ!」
「よろしくお願いします。ハミルさん」
「……俺も、仕事の合間にそちらに行く」
「はいっ」
手紙の通りに、精一杯説得した結果、ようやく、事態は動き出すのだった。
「ユーカお嬢様? どうなさいましたか?」
ジークさんもハミルさんも居ないテラスで、一人、お茶を飲んでため息を吐く私に、ララが心配そうに問いかけてくる。
「うん……ジークさん達から、何の話もないなぁって」
「話、ですか……ご主人様方は、お忙しいと伺っていますが」
「うん、予言者を要請するって話だったのに、未だに何の音沙汰もないのはおかしいと思うの」
あの手紙の一件から、五日が経った今日。あからさまに私への接触が減ったということも、私に何も話してくれないというのも、何だか不満だった。
(そういえば、手紙では二人を説得するように書かれてたっけ……)
もしかしたら、この状況を見越して書いていたのかもしれない。そう思うと、私はすぐにでも会いにいかなければならないような気がした。
残り少なかったお茶を一気に飲み干すと、私はすぐに、ジークさんが居るはずの執務室へと向かうことにする。護衛のライナードさんも引き連れて、早足で城の中を進む。
「ジークさん、入っても良いですか?」
執務室の前に辿り着いた私は、ノックとともに声をかけてみる。
「あぁ、良いぞ」
すぐに返事がきたことで、私は扉を開けて、ちょうど良くハミルさんも一緒に居るのを見つける。
「ユーカ、どうしたんだ?」
優しい笑顔で尋ねてくるジークさんだったけれど、今回、私は物申しにきているわけで、それに流されるわけにはいかない。
「予言者のことを聞きにきました。どうなりましたか?」
まさか、まだ要請を出していないということはあるまい。むしろ、もう予言が終わっている可能性だってある。ただし、その場合、私は二人に猛抗議をするつもりだけれど……。
「あ、あぁ、それに関しては、こちらで進めているから問題ない」
「……私も聞く権利はあると思いますが?」
「そ、そんなことより、ユーカ、庭に出て、紅茶でも飲まないかい?」
「紅茶は、先ほどいただきましたし、予言のことを聞きたいです」
あからさまに狼狽える二人を見て、私は確信する。二人はきっと、もう予言者に接触しているのだと。
「えっと、だね。予言者って、結構忙しくて、まだ、接触できていないというか……「嘘を吐く人は嫌いです」ごめんっ! もう接触してますっ!」
「お、おいっ」
私の一言ですっかり発言を翻したハミルさんに、ジークさんは慌てて口を挟むものの、にっこりと笑ってジークさんを見てみると、そのまま口をつぐむ。
「手紙には、私の力が必要だとありました。それなのに、何で私に情報をくれないんですか?」
「ユーカ……もしかして、怒ってる?」
「もしかしなくとも、怒ってます」
恐る恐るといった様子で尋ねるハミルさんに、私はきっぱりと宣言する。
「これ以上隠すようなら、これからはもう、二人と口をききませんので」
そう言った途端、二人は真っ青になって、その場で土下座を始める。
「すまないっ、ユーカ! それだけは勘弁してくれっ!」
「ごめんっ、ユーカ! 全部話すから、口をきかないなんて言わないで!」
見事なまでの綺麗に揃った土下座に、私は感心するでもなく、ただただ怒りのために淡々と告げる。
「それじゃあ、話してくれますよね?」
「「はいっ!」」
キビキビとした返事を返した二人は、すぐに近況報告を始める。曰く、予言者とは三日前に接触して予言してもらった。曰く、確かに滅亡の未来が見えた。曰く、予言者の力が強くないため、その未来の回避方法までは分からない。とのことだった。つまりは、予言の手紙以上の予言はできなかったということだ。
「なら、私の力が必要ってことになりますよね?」
「いや、しかし……」
「ユーカを危険にさらすわけには……」
手紙に書いてあった通りのことを言えば、ジークさんもハミルさんも渋る。とにかく渋る。
「……では、こうしましょう。私は、ジークさんかハミルさん、もしくは、二人が信頼する護衛の誰かと一緒に、お城探索をする。それで、『建国神話』や、お城に隠されている邪王討伐のために必要なものを見つける努力をする。それなら、心配はないですよね?」
これで反論するようなら、容赦はしないという思いを込めて睨めば、二人はぎこちないながらもうなずいてくれる。
「う、む」
「それなら、まぁ……」
「なら決まりです。それじゃあ、まずはリアン魔国に向かってみましょう」
『建国神話』がどちらの国にあるか分からない以上、まずは、リアン魔国を調べろとの言葉に従うべきだろう。そう提案すれば、ハミルさんが分かりやすく喜びの色を顔に浮かべる。
「うんっ、歓迎するよっ、ユーカ!」
「よろしくお願いします。ハミルさん」
「……俺も、仕事の合間にそちらに行く」
「はいっ」
手紙の通りに、精一杯説得した結果、ようやく、事態は動き出すのだった。
66
お気に入り登録や感想を、ありがとうございます。これを励みに楽しく更新していきますね。
お気に入りに追加
8,219
あなたにおすすめの小説

異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜
京
恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。
右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。
そんな乙女ゲームのようなお話。


おばさんは、ひっそり暮らしたい
波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23

転生先は男女比50:1の世界!?
4036(シクミロ)
恋愛
男女比50:1の世界に転生した少女。
「まさか、男女比がおかしな世界とは・・・」
デブで自己中心的な女性が多い世界で、ひとり異質な少女は・・
どうなる!?学園生活!!

私、確かおばさんだったはずなんですが
花野はる
恋愛
不憫系男子をこよなく愛するヒロインの恋愛ストーリーです。
私は確か、日本人のおばさんだったはずなんですが、気がついたら西洋風異世界の貴族令嬢になっていました。
せっかく美しく若返ったのだから、人生勝ち組で楽しんでしまいましょう。
そう思っていたのですが、自分らしき令嬢の日記を見ると、クラスメイトの男の子をいじめていた事が分かって……。
正義感強いおばさんなめんな!
その男の子に謝って、きっとお友達になってみせましょう!
画像はフリー素材のとくだ屋さんからお借りしました。

異世界に行った、そのあとで。
神宮寺 あおい
恋愛
新海なつめ三十五歳。
ある日見ず知らずの女子高校生の異世界転移に巻き込まれ、気づけばトルス国へ。
当然彼らが求めているのは聖女である女子高校生だけ。
おまけのような状態で現れたなつめに対しての扱いは散々な中、宰相の協力によって職と居場所を手に入れる。
いたって普通に過ごしていたら、いつのまにか聖女である女子高校生だけでなく王太子や高位貴族の子息たちがこぞって悩み相談をしにくるように。
『私はカウンセラーでも保健室の先生でもありません!』
そう思いつつも生来のお人好しの性格からみんなの悩みごとの相談にのっているうちに、いつの間にか年下の美丈夫に好かれるようになる。
そして、気づけば異世界で求婚されるという本人大混乱の事態に!
目が覚めたら異世界でした!~病弱だけど、心優しい人達に出会えました。なので現代の知識で恩返ししながら元気に頑張って生きていきます!〜
楠ノ木雫
恋愛
病院に入院中だった私、奥村菖は知らず知らずに異世界へ続く穴に落っこちていたらしく、目が覚めたら知らない屋敷のベッドにいた。倒れていた菖を保護してくれたのはこの国の公爵家。彼女達からは、地球には帰れないと言われてしまった。
病気を患っている私はこのままでは死んでしまうのではないだろうかと悟ってしまったその時、いきなり目の前に〝妖精〟が現れた。その妖精達が持っていたものは幻の薬草と呼ばれるもので、自分の病気が治る事が発覚。治療を始めてどんどん元気になった。
元気になり、この国の公爵家にも歓迎されて。だから、恩返しの為に現代の知識をフル活用して頑張って元気に生きたいと思います!
でも、あれ? この世界には私の知る食材はないはずなのに、どうして食事にこの四角くて白い〝コレ〟が出てきたの……!?
※他の投稿サイトにも掲載しています。

転生した世界のイケメンが怖い
祐月
恋愛
わたしの通う学院では、近頃毎日のように喜劇が繰り広げられている。
第二皇子殿下を含む学院で人気の美形子息達がこぞって一人の子爵令嬢に愛を囁き、殿下の婚約者の公爵令嬢が諌めては返り討ちにあうという、わたしにはどこかで見覚えのある光景だ。
わたし以外の皆が口を揃えて言う。彼らはものすごい美形だと。
でもわたしは彼らが怖い。
わたしの目には彼らは同じ人間には見えない。
彼らはどこからどう見ても、女児向けアニメキャラクターショーの着ぐるみだった。
2024/10/06 IF追加
小説を読もう!にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる