私、異世界で監禁されました!?

星宮歌

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第八章 再びリアン魔国へ

第百四十二話 説得

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(確かに、『俺達がなんとかしてみせる』とは聞いた、けれど……)

「ユーカお嬢様? どうなさいましたか?」


 ジークさんもハミルさんも居ないテラスで、一人、お茶を飲んでため息を吐く私に、ララが心配そうに問いかけてくる。


「うん……ジークさん達から、何の話もないなぁって」

「話、ですか……ご主人様方は、お忙しいと伺っていますが」

「うん、予言者を要請するって話だったのに、未だに何の音沙汰もないのはおかしいと思うの」


 あの手紙の一件から、五日が経った今日。あからさまに私への接触が減ったということも、私に何も話してくれないというのも、何だか不満だった。


(そういえば、手紙では二人を説得するように書かれてたっけ……)


 もしかしたら、この状況を見越して書いていたのかもしれない。そう思うと、私はすぐにでも会いにいかなければならないような気がした。

 残り少なかったお茶を一気に飲み干すと、私はすぐに、ジークさんが居るはずの執務室へと向かうことにする。護衛のライナードさんも引き連れて、早足で城の中を進む。


「ジークさん、入っても良いですか?」


 執務室の前に辿り着いた私は、ノックとともに声をかけてみる。


「あぁ、良いぞ」


 すぐに返事がきたことで、私は扉を開けて、ちょうど良くハミルさんも一緒に居るのを見つける。


「ユーカ、どうしたんだ?」


 優しい笑顔で尋ねてくるジークさんだったけれど、今回、私は物申しにきているわけで、それに流されるわけにはいかない。


「予言者のことを聞きにきました。どうなりましたか?」


 まさか、まだ要請を出していないということはあるまい。むしろ、もう予言が終わっている可能性だってある。ただし、その場合、私は二人に猛抗議をするつもりだけれど……。


「あ、あぁ、それに関しては、こちらで進めているから問題ない」

「……私も聞く権利はあると思いますが?」

「そ、そんなことより、ユーカ、庭に出て、紅茶でも飲まないかい?」

「紅茶は、先ほどいただきましたし、予言のことを聞きたいです」


 あからさまに狼狽える二人を見て、私は確信する。二人はきっと、もう予言者に接触しているのだと。


「えっと、だね。予言者って、結構忙しくて、まだ、接触できていないというか……「嘘を吐く人は嫌いです」ごめんっ! もう接触してますっ!」

「お、おいっ」


 私の一言ですっかり発言を翻したハミルさんに、ジークさんは慌てて口を挟むものの、にっこりと笑ってジークさんを見てみると、そのまま口をつぐむ。


「手紙には、私の力が必要だとありました。それなのに、何で私に情報をくれないんですか?」

「ユーカ……もしかして、怒ってる?」

「もしかしなくとも、怒ってます」


 恐る恐るといった様子で尋ねるハミルさんに、私はきっぱりと宣言する。


「これ以上隠すようなら、これからはもう、二人と口をききませんので」


 そう言った途端、二人は真っ青になって、その場で土下座を始める。


「すまないっ、ユーカ! それだけは勘弁してくれっ!」

「ごめんっ、ユーカ! 全部話すから、口をきかないなんて言わないで!」


 見事なまでの綺麗に揃った土下座に、私は感心するでもなく、ただただ怒りのために淡々と告げる。


「それじゃあ、話してくれますよね?」

「「はいっ!」」


 キビキビとした返事を返した二人は、すぐに近況報告を始める。曰く、予言者とは三日前に接触して予言してもらった。曰く、確かに滅亡の未来が見えた。曰く、予言者の力が強くないため、その未来の回避方法までは分からない。とのことだった。つまりは、予言の手紙以上の予言はできなかったということだ。


「なら、私の力が必要ってことになりますよね?」

「いや、しかし……」

「ユーカを危険にさらすわけには……」


 手紙に書いてあった通りのことを言えば、ジークさんもハミルさんも渋る。とにかく渋る。


「……では、こうしましょう。私は、ジークさんかハミルさん、もしくは、二人が信頼する護衛の誰かと一緒に、お城探索をする。それで、『建国神話』や、お城に隠されている邪王討伐のために必要なものを見つける努力をする。それなら、心配はないですよね?」


 これで反論するようなら、容赦はしないという思いを込めて睨めば、二人はぎこちないながらもうなずいてくれる。


「う、む」

「それなら、まぁ……」

「なら決まりです。それじゃあ、まずはリアン魔国に向かってみましょう」


 『建国神話』がどちらの国にあるか分からない以上、まずは、リアン魔国を調べろとの言葉に従うべきだろう。そう提案すれば、ハミルさんが分かりやすく喜びの色を顔に浮かべる。


「うんっ、歓迎するよっ、ユーカ!」

「よろしくお願いします。ハミルさん」

「……俺も、仕事の合間にそちらに行く」

「はいっ」


 手紙の通りに、精一杯説得した結果、ようやく、事態は動き出すのだった。
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