私、異世界で監禁されました!?

星宮歌

文字の大きさ
上 下
124 / 173
第七章 舞踏会

第百二十話 恋ばなをしましょう!

しおりを挟む
 舞踏会まで、あと九日。

 部屋の中で、新しく届いたドレスを眺め、これを当日に着るのかと思いを馳せていると、メアリー達が訪ねてきた。……アマーリエさんを伴って。


「ユーカっ、数日ぶりですわねっ」

「アマーリエさんっ!?」


 まさか、アマーリエさんが訪ねてくるとは思っていなかった私は、満面の笑みを浮かべて抱きついてきたアマーリエさんを前に混乱する。


「アマーリエ様、ユーカお嬢様に抱きつくのはおすすめ致しません」

「っ、なぜですの? わたくしは、ユーカとの再会を喜んでいるだけですのよ?」


 本当に、なぜだろうと思って、私に抱きつくべきじゃないと発言したララを見てみると、なぜか可哀想なものを見る目で見られる。


(えっ? 私、そんな目をされるようなことしたっけ?)


 さらなる混乱に陥って、オロオロとしていると、ララはゆっくりと口を開く。


「アマーリエ様。ユーカお嬢様は、ご主人様とハミルトン様の両翼なのですよ?」

「っ、ごめんなさいっ、ユーカ」

「へっ? えっと……?」


 一気に私から離れたアマーリエさんを見て、私は何が何だか分からないまま立ち尽くす。


「ユーカお嬢様。本来、片翼を持つ魔族はとても嫉妬深いものなのです。アマーリエ様がユーカお嬢様に抱きついたと知れれば、ご主人様方がどんな行動に出ることか……」


 そこまで言われれば、私もララが言いたいことは分かった。けれど、私にそこまで嫉妬されるような要素があるのだろうかという疑問も同時に沸く。


「ユーカ、お願いですから、お兄様とジークフリート様には何も言わないでくださいっ」

「えっ、あっ、はい」


 ただ、アマーリエさんの真剣な表情から、私は自分に嫉妬されるような要素がないのだとしても、とにかく黙っていようと決心する。


「ありがとうございますっ、ユーカ!」


 赤い瞳を輝かせるアマーリエさんに、『可愛いなぁ』と思いながら苦笑する。きっと、そんなに怯えなくとも、ジークさんもハミルさんも何かをしてくることはないだろう。


「今日はハミルさんに連れてきてもらったんですか?」

「そうですのっ。昨日のお兄様は、『ユーカに会いたい』とずっとブツブツ呟いてらしたので、それならばわたくしも一緒に連れていってくださいとお願いしたのですわ」

「そ、そっか」

(あれ? でも、昨日もハミルさんには会ってて……何で、そんなに会いたかったんだろう?)


 ハミルさんの行動に、少し疑問はあったものの、好きな人に会いたいと思ってもらえていたことを知った私は、ちょっとばかり嬉しい。とりあえず、顔がにやけないように頑張りながら、アマーリエさんの話を聞く。


「それでですね、今回、ユーカに会いに来たのは、ズバリ、恋ばなをするためですの!」

「……コイバナ?」


 そんな名前の花があっただろうか、と、少し現実逃避をしてしまうものの、周りがそれを許さない。


「それは素晴らしい提案ですね」

「では、場所を変えましょう」

「テラスが良いんじゃないですかっ?」


 メアリー、ララ、リリの順で、恋ばなをすること前提に話を推し進められる。これは、どうやら逃げられそうもない。


「さぁっ、ユーカ。洗いざらい話してもらいますわよ?」


 しかも、肉食獣の目でロックオンされてしまった私には、生存率が極めて低くなったようにしか思えなかった。


「えっと、アマーリエさんの恋ばなだったりは……」

「わたくし、まだ二百歳に到達しておりませんの。ですから、せめて、周りの片翼から色々な情報のろけを集めてみたいと思ってますのよ」


 要するに、アマーリエさんは成人前で、恋ばなに興味津々なお年頃ということらしい。そして、ターゲットとして私を選んだのだと。


「……ハミルさんに聞くとかは?」

「そんなの、もうしたに決まってますわっ! ただ、あんなに延々と続くのろけ話は甘いと感じる以上に劇物でしたわね。砂糖を吐くかと思いましたわ」

(ハミルさん、いったいどんな話をしたのっ!?)


 それを聞くのは、恐ろしいような気がしたため、私は極力、今聞いた事実を忘れることにする。


「ユーカお嬢様。ご友人との交流も大切なことと存じますよ」

「ご主人様達には、男子禁制だと通達致しましょう」

「アマーリエ様が居れば、護衛も十分ですしねっ。どんなお話か楽しみですっ」


 微笑ましいものを見るかのような表情を浮かべるメアリー。淡々としながらも、興味を隠しきれていないララ。もはや隠すつもりもなく、『楽しみ』だと言い切ったリリ。見渡す限り、味方が居ない状況に、私は頬を引きつらせる。


「では、わたくしどもは先に準備をして参りますね」


 そう言ったメアリーは、そのまま、私が止める間もなくララとリリを引き連れて退出し……私は、あえなくアマーリエさんに捕まってしまうのだった。
しおりを挟む
お気に入り登録や感想を、ありがとうございます。これを励みに楽しく更新していきますね。
感想 273

あなたにおすすめの小説

異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜

恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。 右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。 そんな乙女ゲームのようなお話。

眺めるだけならよいでしょうか?〜美醜逆転世界に飛ばされた私〜

波間柏
恋愛
美醜逆転の世界に飛ばされた。普通ならウハウハである。だけど。 ✻読んで下さり、ありがとうございました。✻

おばさんは、ひっそり暮らしたい

波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23

転生先は男女比50:1の世界!?

4036(シクミロ)
恋愛
男女比50:1の世界に転生した少女。 「まさか、男女比がおかしな世界とは・・・」 デブで自己中心的な女性が多い世界で、ひとり異質な少女は・・ どうなる!?学園生活!!

私、確かおばさんだったはずなんですが

花野はる
恋愛
不憫系男子をこよなく愛するヒロインの恋愛ストーリーです。 私は確か、日本人のおばさんだったはずなんですが、気がついたら西洋風異世界の貴族令嬢になっていました。 せっかく美しく若返ったのだから、人生勝ち組で楽しんでしまいましょう。 そう思っていたのですが、自分らしき令嬢の日記を見ると、クラスメイトの男の子をいじめていた事が分かって……。 正義感強いおばさんなめんな! その男の子に謝って、きっとお友達になってみせましょう! 画像はフリー素材のとくだ屋さんからお借りしました。

異世界に行った、そのあとで。

神宮寺 あおい
恋愛
新海なつめ三十五歳。 ある日見ず知らずの女子高校生の異世界転移に巻き込まれ、気づけばトルス国へ。 当然彼らが求めているのは聖女である女子高校生だけ。 おまけのような状態で現れたなつめに対しての扱いは散々な中、宰相の協力によって職と居場所を手に入れる。 いたって普通に過ごしていたら、いつのまにか聖女である女子高校生だけでなく王太子や高位貴族の子息たちがこぞって悩み相談をしにくるように。 『私はカウンセラーでも保健室の先生でもありません!』 そう思いつつも生来のお人好しの性格からみんなの悩みごとの相談にのっているうちに、いつの間にか年下の美丈夫に好かれるようになる。 そして、気づけば異世界で求婚されるという本人大混乱の事態に!

目が覚めたら異世界でした!~病弱だけど、心優しい人達に出会えました。なので現代の知識で恩返ししながら元気に頑張って生きていきます!〜

楠ノ木雫
恋愛
 病院に入院中だった私、奥村菖は知らず知らずに異世界へ続く穴に落っこちていたらしく、目が覚めたら知らない屋敷のベッドにいた。倒れていた菖を保護してくれたのはこの国の公爵家。彼女達からは、地球には帰れないと言われてしまった。  病気を患っている私はこのままでは死んでしまうのではないだろうかと悟ってしまったその時、いきなり目の前に〝妖精〟が現れた。その妖精達が持っていたものは幻の薬草と呼ばれるもので、自分の病気が治る事が発覚。治療を始めてどんどん元気になった。  元気になり、この国の公爵家にも歓迎されて。だから、恩返しの為に現代の知識をフル活用して頑張って元気に生きたいと思います!  でも、あれ? この世界には私の知る食材はないはずなのに、どうして食事にこの四角くて白い〝コレ〟が出てきたの……!?  ※他の投稿サイトにも掲載しています。

転生した世界のイケメンが怖い

祐月
恋愛
わたしの通う学院では、近頃毎日のように喜劇が繰り広げられている。 第二皇子殿下を含む学院で人気の美形子息達がこぞって一人の子爵令嬢に愛を囁き、殿下の婚約者の公爵令嬢が諌めては返り討ちにあうという、わたしにはどこかで見覚えのある光景だ。 わたし以外の皆が口を揃えて言う。彼らはものすごい美形だと。 でもわたしは彼らが怖い。 わたしの目には彼らは同じ人間には見えない。 彼らはどこからどう見ても、女児向けアニメキャラクターショーの着ぐるみだった。 2024/10/06 IF追加 小説を読もう!にも掲載しています。

処理中です...