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第三章 歩み寄り
第四十七話 告白
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魔力訓練五日目。今日も今日とて、全く上手くいかない魔力コントロールを必死になって行っていたのだけれど……なぜか、ジークフリートさんとハミルトン様の様子がおかしかった。
ジークフリートさんは、何か気難しい顔で、何度も何かを言いかけては悲しげな顔で思い止まることを繰り返していたし、ハミルトン様は、鼻歌でも歌いそうなほどに上機嫌だ。そんないつもと違う様子に、私はいつも以上に距離を取る。
「ユーカお嬢様。今日はここまでと致しましょうとのことです」
ジークフリートさんから指示を聞いてきたらしいララによって、今日の訓練も終わる。そうして、ララとリリに先導され、リド姉さんと一緒に部屋に戻った私は、リド姉さんには先に出てもらい、ララとリリの二人に質問をすることにする。
三人でテーブルを囲んで、少し問答はあったものの、簡易的なお茶会状態だ。
「(ねぇ、ララ、リリ。ジークフリートさんとハミルトン様って、どんな人?)」
まだまだ顔を合わせるだけで気まずい私は、片翼に関しての情報よりも、二人の人間性(魔族だから、魔族性?)を知りたいと思って、問いかけたのだった。
「そうですね。まず、ご主人様はとてもお優しい方です」
「私とララお姉ちゃんは、ご主人様に助けられたんですよっ」
そうして話してくれたのは、孤児であり、魔族ですらなかった行き場のない二人を、いかにジークフリートさんが優しく保護してくれたのかということだった。
どうやら、獣人は人間には迫害されるし、魔族からはあまり力のないものとして関心を持たれないらしく、そんな二人は、ヴァイラン魔国で捨てられてから、必死に生きてきたそうだ。どんな生活だったのかは、私には教えてくれなかったけれど、きっと汚いことでもやらざるを得ない状態だったのだろう。
そして、そんな中、ジークフリートさんに出会って、全てが変わった。身形は綺麗になるし、教育も受けさせてもらえる。美味しい食事も、給金ももらえる。そんな環境に置かれて、二人は心底ジークフリートさんに感謝したらしい。出会いのきっかけが、お忍びで街を訪れていたジークフリートさんの財布を狙ったからというのが、何ともつらい環境を連想させたけれど、とにかくそういうわけで、二人はジークフリートさんのことがとっても大好きらしかった。
「(そっか……)」
(私も助けてもらったし、本当に良い人、なんだろうなぁ)
いつも無表情なララがほんのり笑顔を浮かべるくらいだ。きっと、この考えは間違っていないだろう。
「(じゃあ、ハミルトン様は?)」
「ハミルトン様、ですか……私達は、ハミルトン様がご主人様よりも魔法に秀でていることと、剣では劣ること、古くからの友人であることくらいしか知りませんね」
「後は、ご主人様と同じように、『片翼の宿命』で悩んでいたとかっ?」
「こらっ、リリ。その話は本人がするものです」
「……ごめんなさい」
どうやら、ハミルトン様についての情報はほとんどないらしい。それを少し残念に思っていると、ふいに、部屋の扉が勝手に開かれる。
「っ、二人も居たのか」
「ご主人様っ?」
「どうなさいましたか?」
驚いたように声を上げる二人を見て、あぁ、驚くのは正解なんだなと思う。毎回毎回、ノックもなしに入って来られるのは心臓に悪い。特に今は顔を合わせづらいのだから、ノックは重要だ。
ノックの重要性を伝えようと思い、気まずさを圧し殺して必死に顔を上げた私は、直後、硬直する。
そこには、とっても切ない表情をしたジークフリートさんが居た。
(えっ? 何!? 何で、そんな表情!?)
あまりにも予想外の表情に、私の心臓はドクリと脈打つ。美形のその表情は、色気が強過ぎて、破壊力がとんでもなかった。
そうして、目が離せないまま固まっていると、なぜかララとリリが心得たとばかりに退出してしまう。
(ち、ちょっと待って!? この状況で置いてかないでっ!)
何だか妙なことになっているのを察知した私は、大慌てですがるように二人へ視線を向けるものの、普段、察しの良いはずのララでさえ、私の視線に気づいた様子もなく、立ち去ってしまう。
(わーっ、わーっ、ど、どどどど、どうしようっ)
無情にも、パタンと音を立てて閉じられた扉。鎖のせいで、逃げることすらままならない。あたふたとしながら、とりあえず距離を取るべく立ち上がって後退りしかけると……。
「行くな」
恐ろしく切ない声に、私は固まることしかできない。そして、ジークフリートさんの目を見ることすらできず、内心パニックになる。
(何で何で!? 何があったの? ジークフリートさんっ!?)
こういう時、男性への……異性への耐性がないことは、非常に困る。もう、どう行動して良いのかすら分からない私は、壊れたレコードのように思考をループさせることしかできない。
(何で!? どうして!?)
「あ……いや、その。すまない。命令するつもりじゃ、なくてだな」
動かない私を見て、何を勘違いしたのか、そんなことを言い出すジークフリートさん。
(命令だとは思ってませんよーっ)
それを言う度胸もない私は、とにかく現状を打開する手立てがないか探す。
「今日は、その……伝えたいことがあって、だな?」
(待って待って、待ってくださいっ! 今、好きとか言われたら、絶対ダメですっ。オーバーヒート確実ですからぁっ)
頭にあるのは、あの『片翼の心構え』に書いてあった、『魔族は毎日『好き』だと、『愛している』と伝えたいものなのだ』というとんでもない記述。恋愛初心者の私には、その言葉だけでもハードルが高い。
「す……」
(く、来るっ!)
思わず、その続きの言葉を予想して目をギュッと瞑る私。そして……。
「すまなかったっ!!」
「(…………ふぇ?)」
予想と異なる言葉に、私は目を開いて固まる。
「ユーカと出会った時、俺は罵倒されるのを恐れて、ユーカの声を封じた。本当に、すまないっ」
(えーと、えーと……えーと?)
「そして、本来ならば、すぐにでも魔法を解きたいところなのだが、魔力を発現したばかりで、それをコントロールできていないユーカにそれをするのは危険が伴う。魔力のコントロールができるようになった暁には、必ず声を戻すと誓う。だから、本当に、すまなかったっ」
大混乱の真っ只中にある私は、随分と重要な話をされているにもかかわらず、いまいち真剣になれなかった。
(声が出ない原因がジークフリートさん? それで、声を戻すためには、魔力コントロールができてないと危険? えーっと……うん。問題ないかな?)
理由があった上に、本人も反省している。私の危険を考慮して動こうとしてくれている。それが分かって、責めるようなことをするつもりはない。
「俺に言いたいことはいくらでもあるだろう。残念ながら、俺は読唇術が使えないから、メアリー達から伝え聞くことしかできないが、どんな罵倒でも受け入れるつもりだ」
「(いえ、罵倒するつもりはありませんが)」
「本当に、すまない。これからすぐにメアリーが来る。だから、何か言いたいことがあれば、メアリーを通してほしい」
苦し気に告げるジークフリートさんを見ていると、本当に本心から反省をしていることが見て取れて、そして、自分が読唇術を使えないことを後悔しているようでもあった。そうして、退出していったジークフリートさんをぼんやり見送った私は、少しだけモヤモヤとする心に気づく。
(……残念?)
予想とは違う言葉に、なぜか心がそう反応した気がして、私は首をかしげるのだった。
ジークフリートさんは、何か気難しい顔で、何度も何かを言いかけては悲しげな顔で思い止まることを繰り返していたし、ハミルトン様は、鼻歌でも歌いそうなほどに上機嫌だ。そんないつもと違う様子に、私はいつも以上に距離を取る。
「ユーカお嬢様。今日はここまでと致しましょうとのことです」
ジークフリートさんから指示を聞いてきたらしいララによって、今日の訓練も終わる。そうして、ララとリリに先導され、リド姉さんと一緒に部屋に戻った私は、リド姉さんには先に出てもらい、ララとリリの二人に質問をすることにする。
三人でテーブルを囲んで、少し問答はあったものの、簡易的なお茶会状態だ。
「(ねぇ、ララ、リリ。ジークフリートさんとハミルトン様って、どんな人?)」
まだまだ顔を合わせるだけで気まずい私は、片翼に関しての情報よりも、二人の人間性(魔族だから、魔族性?)を知りたいと思って、問いかけたのだった。
「そうですね。まず、ご主人様はとてもお優しい方です」
「私とララお姉ちゃんは、ご主人様に助けられたんですよっ」
そうして話してくれたのは、孤児であり、魔族ですらなかった行き場のない二人を、いかにジークフリートさんが優しく保護してくれたのかということだった。
どうやら、獣人は人間には迫害されるし、魔族からはあまり力のないものとして関心を持たれないらしく、そんな二人は、ヴァイラン魔国で捨てられてから、必死に生きてきたそうだ。どんな生活だったのかは、私には教えてくれなかったけれど、きっと汚いことでもやらざるを得ない状態だったのだろう。
そして、そんな中、ジークフリートさんに出会って、全てが変わった。身形は綺麗になるし、教育も受けさせてもらえる。美味しい食事も、給金ももらえる。そんな環境に置かれて、二人は心底ジークフリートさんに感謝したらしい。出会いのきっかけが、お忍びで街を訪れていたジークフリートさんの財布を狙ったからというのが、何ともつらい環境を連想させたけれど、とにかくそういうわけで、二人はジークフリートさんのことがとっても大好きらしかった。
「(そっか……)」
(私も助けてもらったし、本当に良い人、なんだろうなぁ)
いつも無表情なララがほんのり笑顔を浮かべるくらいだ。きっと、この考えは間違っていないだろう。
「(じゃあ、ハミルトン様は?)」
「ハミルトン様、ですか……私達は、ハミルトン様がご主人様よりも魔法に秀でていることと、剣では劣ること、古くからの友人であることくらいしか知りませんね」
「後は、ご主人様と同じように、『片翼の宿命』で悩んでいたとかっ?」
「こらっ、リリ。その話は本人がするものです」
「……ごめんなさい」
どうやら、ハミルトン様についての情報はほとんどないらしい。それを少し残念に思っていると、ふいに、部屋の扉が勝手に開かれる。
「っ、二人も居たのか」
「ご主人様っ?」
「どうなさいましたか?」
驚いたように声を上げる二人を見て、あぁ、驚くのは正解なんだなと思う。毎回毎回、ノックもなしに入って来られるのは心臓に悪い。特に今は顔を合わせづらいのだから、ノックは重要だ。
ノックの重要性を伝えようと思い、気まずさを圧し殺して必死に顔を上げた私は、直後、硬直する。
そこには、とっても切ない表情をしたジークフリートさんが居た。
(えっ? 何!? 何で、そんな表情!?)
あまりにも予想外の表情に、私の心臓はドクリと脈打つ。美形のその表情は、色気が強過ぎて、破壊力がとんでもなかった。
そうして、目が離せないまま固まっていると、なぜかララとリリが心得たとばかりに退出してしまう。
(ち、ちょっと待って!? この状況で置いてかないでっ!)
何だか妙なことになっているのを察知した私は、大慌てですがるように二人へ視線を向けるものの、普段、察しの良いはずのララでさえ、私の視線に気づいた様子もなく、立ち去ってしまう。
(わーっ、わーっ、ど、どどどど、どうしようっ)
無情にも、パタンと音を立てて閉じられた扉。鎖のせいで、逃げることすらままならない。あたふたとしながら、とりあえず距離を取るべく立ち上がって後退りしかけると……。
「行くな」
恐ろしく切ない声に、私は固まることしかできない。そして、ジークフリートさんの目を見ることすらできず、内心パニックになる。
(何で何で!? 何があったの? ジークフリートさんっ!?)
こういう時、男性への……異性への耐性がないことは、非常に困る。もう、どう行動して良いのかすら分からない私は、壊れたレコードのように思考をループさせることしかできない。
(何で!? どうして!?)
「あ……いや、その。すまない。命令するつもりじゃ、なくてだな」
動かない私を見て、何を勘違いしたのか、そんなことを言い出すジークフリートさん。
(命令だとは思ってませんよーっ)
それを言う度胸もない私は、とにかく現状を打開する手立てがないか探す。
「今日は、その……伝えたいことがあって、だな?」
(待って待って、待ってくださいっ! 今、好きとか言われたら、絶対ダメですっ。オーバーヒート確実ですからぁっ)
頭にあるのは、あの『片翼の心構え』に書いてあった、『魔族は毎日『好き』だと、『愛している』と伝えたいものなのだ』というとんでもない記述。恋愛初心者の私には、その言葉だけでもハードルが高い。
「す……」
(く、来るっ!)
思わず、その続きの言葉を予想して目をギュッと瞑る私。そして……。
「すまなかったっ!!」
「(…………ふぇ?)」
予想と異なる言葉に、私は目を開いて固まる。
「ユーカと出会った時、俺は罵倒されるのを恐れて、ユーカの声を封じた。本当に、すまないっ」
(えーと、えーと……えーと?)
「そして、本来ならば、すぐにでも魔法を解きたいところなのだが、魔力を発現したばかりで、それをコントロールできていないユーカにそれをするのは危険が伴う。魔力のコントロールができるようになった暁には、必ず声を戻すと誓う。だから、本当に、すまなかったっ」
大混乱の真っ只中にある私は、随分と重要な話をされているにもかかわらず、いまいち真剣になれなかった。
(声が出ない原因がジークフリートさん? それで、声を戻すためには、魔力コントロールができてないと危険? えーっと……うん。問題ないかな?)
理由があった上に、本人も反省している。私の危険を考慮して動こうとしてくれている。それが分かって、責めるようなことをするつもりはない。
「俺に言いたいことはいくらでもあるだろう。残念ながら、俺は読唇術が使えないから、メアリー達から伝え聞くことしかできないが、どんな罵倒でも受け入れるつもりだ」
「(いえ、罵倒するつもりはありませんが)」
「本当に、すまない。これからすぐにメアリーが来る。だから、何か言いたいことがあれば、メアリーを通してほしい」
苦し気に告げるジークフリートさんを見ていると、本当に本心から反省をしていることが見て取れて、そして、自分が読唇術を使えないことを後悔しているようでもあった。そうして、退出していったジークフリートさんをぼんやり見送った私は、少しだけモヤモヤとする心に気づく。
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予想とは違う言葉に、なぜか心がそう反応した気がして、私は首をかしげるのだった。
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