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第二章 異質な神界
第百三十話 告白(ラルフ視点)
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僕達の療養期間は、そこそこ長い期間となった。何せ、祝福を受けて強化されたとはいえ、それまでに様々な神の力を受け入れて放出するなんていう無茶をしていたのだ。一年の療養でもまだ足りていない、というのが現状だった。
「フィー、大丈夫?」
「う……だ、大丈夫です」
ようやく歩けるくらいには回復したものの、それでもまだよろけることがある。そんな時は、お互いにお互いを支えて、休憩を取ることにしていた。
今、僕達が居るのは、上位世界に建てた僕達の家の庭で、近くにあったガゼボまで歩いて、ゆっくりと椅子に腰を下ろす。
「ふぅ、それにしても、こんなに大変だとは思いませんでした」
「まぁね。僕も、この状態は予想していなかったよ」
本来、僕もフィーも感情を司る神であり、後々は人間達へそれを付与することが求められる立場だった。しかし、現在、その役割に関しては永久停止という形になっている。
「神格が上がり過ぎて、変質するなんて、聞いたこともありません」
「うん……。確か、上位神の中でも、概念神っていう最上の部類らしいけど、そもそも力が強過ぎて何もしなくて良い神が居るってこと自体初耳だったよね」
そう、フィーと僕は、罪悪感と純真という概念そのものを司る神になった。そのため、僕達は力のコントロールを考えなければならないなんていうことはなくなったのだ。ただ、あの事件の後遺症で、回復に時間がかかっているのは、もうどうしようもない現実だ。
項垂れるフィーを前に、僕はそっとフィーの手を取る。
「ラルフ……?」
「ねぇ、フィー? フィーは、僕のために女神になったんだよね? 僕の力が僕を殺さないために。僕の側に居るための条件だなんて言い訳をして」
「っ……そ、それは……」
ある程度神としての知識を得たところで、僕はちゃんと、フィーの行動の理由を理解していた。ただ、それを伝えなかったのは、こちらにも準備が必要だったからだ。
「そして、フィーは僕のことを、男神だった時から愛してくれていた。違う?」
「ぁ……」
女神から歪んだ愛情を押しつけられて傷ついてきた僕に、フィーが……フィルが愛情を示すことはできなかったのだろう。ただ、フィルがフィオナになって、僕を導くという建前を持ちながらも、その感情を暴走させつつあったのは、当然、僕の責任だ。そうなるように仕向けたのは僕自身なのだから。
「ご、ごめんなさい。あ、あの、ラルフのことは好きで、好き過ぎて、その、でも、ラルフを傷つけるつもりじゃあ……」
いつもは嫉妬したり、大好きだと、愛していると過激な行動にも出るフィーだが、今は、本来の目的と、僕のことを考える余裕ができたせいで、少し取り乱しているようだ。だから……。
「フィー、僕も、フィーのことが好きだよ? ずっと前から。それこそ、フィーがフィルだった頃から。だから、ね? フィー、愛してるよ」
そう言うと、フィーはボフンと顔を真っ赤にして、そのまま倒れてしまうのだった。
「フィー、大丈夫?」
「う……だ、大丈夫です」
ようやく歩けるくらいには回復したものの、それでもまだよろけることがある。そんな時は、お互いにお互いを支えて、休憩を取ることにしていた。
今、僕達が居るのは、上位世界に建てた僕達の家の庭で、近くにあったガゼボまで歩いて、ゆっくりと椅子に腰を下ろす。
「ふぅ、それにしても、こんなに大変だとは思いませんでした」
「まぁね。僕も、この状態は予想していなかったよ」
本来、僕もフィーも感情を司る神であり、後々は人間達へそれを付与することが求められる立場だった。しかし、現在、その役割に関しては永久停止という形になっている。
「神格が上がり過ぎて、変質するなんて、聞いたこともありません」
「うん……。確か、上位神の中でも、概念神っていう最上の部類らしいけど、そもそも力が強過ぎて何もしなくて良い神が居るってこと自体初耳だったよね」
そう、フィーと僕は、罪悪感と純真という概念そのものを司る神になった。そのため、僕達は力のコントロールを考えなければならないなんていうことはなくなったのだ。ただ、あの事件の後遺症で、回復に時間がかかっているのは、もうどうしようもない現実だ。
項垂れるフィーを前に、僕はそっとフィーの手を取る。
「ラルフ……?」
「ねぇ、フィー? フィーは、僕のために女神になったんだよね? 僕の力が僕を殺さないために。僕の側に居るための条件だなんて言い訳をして」
「っ……そ、それは……」
ある程度神としての知識を得たところで、僕はちゃんと、フィーの行動の理由を理解していた。ただ、それを伝えなかったのは、こちらにも準備が必要だったからだ。
「そして、フィーは僕のことを、男神だった時から愛してくれていた。違う?」
「ぁ……」
女神から歪んだ愛情を押しつけられて傷ついてきた僕に、フィーが……フィルが愛情を示すことはできなかったのだろう。ただ、フィルがフィオナになって、僕を導くという建前を持ちながらも、その感情を暴走させつつあったのは、当然、僕の責任だ。そうなるように仕向けたのは僕自身なのだから。
「ご、ごめんなさい。あ、あの、ラルフのことは好きで、好き過ぎて、その、でも、ラルフを傷つけるつもりじゃあ……」
いつもは嫉妬したり、大好きだと、愛していると過激な行動にも出るフィーだが、今は、本来の目的と、僕のことを考える余裕ができたせいで、少し取り乱しているようだ。だから……。
「フィー、僕も、フィーのことが好きだよ? ずっと前から。それこそ、フィーがフィルだった頃から。だから、ね? フィー、愛してるよ」
そう言うと、フィーはボフンと顔を真っ赤にして、そのまま倒れてしまうのだった。
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