悪役令嬢の神様ライフ

星宮歌

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第一章 帰還と波乱

第六十一話 私は常識人(ミーシャ視点)

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(よしっ、始まった!)


 爆発とともに始まる罠。神であるとはいえ、全てを見渡す千里眼を誰もが持つわけではない。むしろ、そうした方向に特化した神でなければ、千里眼など持つことはない。しかし、相手は恐らく人形遣い。それに似た力を使うことは可能だ。……操り人形を通して、全てを見通すという方向で。


「なっ、何をしたんだっ! お前のお姉ちゃんとやらはっ!」

「んー? 薬のばら撒き?」

「薬!?」


 取り乱すのは、アクー一人。ジークとリンクスは、何やら遠い目をして、『始末書が……』とか、『被害総額、いくら、でしょう……?』とか呟いているのが聞こえる。


「まだまだ行くよー」

「「「やめて!?」」」


 しかし、やめてと言われても、すでに発動してしまった罠を止めることなど不可能だ。人形遣いによって、操られた人間が爆発を起こした場所の確認で動き出すと、それによって空き部屋となった場所が、さらに爆発を起こす。連鎖する爆発に、アクーは青ざめ、ジークは現実逃避か、居ないはずの小鳥と戯れ、リンクスは気絶する。
 とりあえず、リンクスにはもう一度気付け薬を嗅がせて、意識を取り戻してもらいながら、お千ちゃんから報告される進行率を確認していく。


「んー、お姉ちゃん、張り切ってる」

「は、はは……これ、俺の責任、なのか? いや、きっと、これは現実じゃない、現実じゃ……」

「ダメだよ? ちゃんと、見届けるって約束した!」


 アクーまで現実逃避を始めようとしていたため、私は、アクーをベシベシ叩いて現実へと視線を向けさせる。


「大丈夫だよ? 音は派手だけど、煙は出てないでしょう? ただ、薬をばら撒いてるだけだから、この爆発そのものでは何にも壊れてないよ?」

「っ、本当か!?」

「えっ、それなら、始末書いらない!?」

「あぁっ、良かった! 本当に、本当に、良かった!!」


 どうにも、常識外れだと思われていたらしいが、私は一応常識人だ。そんな、城を破壊したり、国を落としたり、世界を破滅させたりなんて行為は、お姉様達くらいしかしないはずだ。


「ただ、操られてる人達が壊したものはあるかもしれないけど、本当に爆発するわけじゃないから、大丈」


 『大丈夫』と告げかけたところで、それを遮るように、一際大きな爆発が起こる。


「……今の、は?」

「……えっと、お姉ちゃんじゃない誰かが、どこかを爆破した、んじゃないかなぁ?」


 私の罠による爆音とは質が違う音。それを察知したアクーの言葉に、私は、受け入れがたいであろう現実を告げる。


「……ふっ、それならば、黒幕を徹底的に追い詰めてやるのみだ!!」


 そして、ギラギラとした目でヤケになったらしいアクー。


(……できるだけ、少ない被害で終わらせてあげよう)


 もしくは、壊れたものをコッソリと修復してあげるのも良いかもしれない。私は、アクー達のためにも、早くこの事態を終息させようと、続きの罠が発動するタイミングを早めた。
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