61 / 132
第一章 帰還と波乱
第六十一話 私は常識人(ミーシャ視点)
しおりを挟む
(よしっ、始まった!)
爆発とともに始まる罠。神であるとはいえ、全てを見渡す千里眼を誰もが持つわけではない。むしろ、そうした方向に特化した神でなければ、千里眼など持つことはない。しかし、相手は恐らく人形遣い。それに似た力を使うことは可能だ。……操り人形を通して、全てを見通すという方向で。
「なっ、何をしたんだっ! お前のお姉ちゃんとやらはっ!」
「んー? 薬のばら撒き?」
「薬!?」
取り乱すのは、アクー一人。ジークとリンクスは、何やら遠い目をして、『始末書が……』とか、『被害総額、いくら、でしょう……?』とか呟いているのが聞こえる。
「まだまだ行くよー」
「「「やめて!?」」」
しかし、やめてと言われても、すでに発動してしまった罠を止めることなど不可能だ。人形遣いによって、操られた人間が爆発を起こした場所の確認で動き出すと、それによって空き部屋となった場所が、さらに爆発を起こす。連鎖する爆発に、アクーは青ざめ、ジークは現実逃避か、居ないはずの小鳥と戯れ、リンクスは気絶する。
とりあえず、リンクスにはもう一度気付け薬を嗅がせて、意識を取り戻してもらいながら、お千ちゃんから報告される進行率を確認していく。
「んー、お姉ちゃん、張り切ってる」
「は、はは……これ、俺の責任、なのか? いや、きっと、これは現実じゃない、現実じゃ……」
「ダメだよ? ちゃんと、見届けるって約束した!」
アクーまで現実逃避を始めようとしていたため、私は、アクーをベシベシ叩いて現実へと視線を向けさせる。
「大丈夫だよ? 音は派手だけど、煙は出てないでしょう? ただ、薬をばら撒いてるだけだから、この爆発そのものでは何にも壊れてないよ?」
「っ、本当か!?」
「えっ、それなら、始末書いらない!?」
「あぁっ、良かった! 本当に、本当に、良かった!!」
どうにも、常識外れだと思われていたらしいが、私は一応常識人だ。そんな、城を破壊したり、国を落としたり、世界を破滅させたりなんて行為は、お姉様達くらいしかしないはずだ。
「ただ、操られてる人達が壊したものはあるかもしれないけど、本当に爆発するわけじゃないから、大丈」
『大丈夫』と告げかけたところで、それを遮るように、一際大きな爆発が起こる。
「……今の、は?」
「……えっと、お姉ちゃんじゃない誰かが、どこかを爆破した、んじゃないかなぁ?」
私の罠による爆音とは質が違う音。それを察知したアクーの言葉に、私は、受け入れがたいであろう現実を告げる。
「……ふっ、それならば、黒幕を徹底的に追い詰めてやるのみだ!!」
そして、ギラギラとした目でヤケになったらしいアクー。
(……できるだけ、少ない被害で終わらせてあげよう)
もしくは、壊れたものをコッソリと修復してあげるのも良いかもしれない。私は、アクー達のためにも、早くこの事態を終息させようと、続きの罠が発動するタイミングを早めた。
爆発とともに始まる罠。神であるとはいえ、全てを見渡す千里眼を誰もが持つわけではない。むしろ、そうした方向に特化した神でなければ、千里眼など持つことはない。しかし、相手は恐らく人形遣い。それに似た力を使うことは可能だ。……操り人形を通して、全てを見通すという方向で。
「なっ、何をしたんだっ! お前のお姉ちゃんとやらはっ!」
「んー? 薬のばら撒き?」
「薬!?」
取り乱すのは、アクー一人。ジークとリンクスは、何やら遠い目をして、『始末書が……』とか、『被害総額、いくら、でしょう……?』とか呟いているのが聞こえる。
「まだまだ行くよー」
「「「やめて!?」」」
しかし、やめてと言われても、すでに発動してしまった罠を止めることなど不可能だ。人形遣いによって、操られた人間が爆発を起こした場所の確認で動き出すと、それによって空き部屋となった場所が、さらに爆発を起こす。連鎖する爆発に、アクーは青ざめ、ジークは現実逃避か、居ないはずの小鳥と戯れ、リンクスは気絶する。
とりあえず、リンクスにはもう一度気付け薬を嗅がせて、意識を取り戻してもらいながら、お千ちゃんから報告される進行率を確認していく。
「んー、お姉ちゃん、張り切ってる」
「は、はは……これ、俺の責任、なのか? いや、きっと、これは現実じゃない、現実じゃ……」
「ダメだよ? ちゃんと、見届けるって約束した!」
アクーまで現実逃避を始めようとしていたため、私は、アクーをベシベシ叩いて現実へと視線を向けさせる。
「大丈夫だよ? 音は派手だけど、煙は出てないでしょう? ただ、薬をばら撒いてるだけだから、この爆発そのものでは何にも壊れてないよ?」
「っ、本当か!?」
「えっ、それなら、始末書いらない!?」
「あぁっ、良かった! 本当に、本当に、良かった!!」
どうにも、常識外れだと思われていたらしいが、私は一応常識人だ。そんな、城を破壊したり、国を落としたり、世界を破滅させたりなんて行為は、お姉様達くらいしかしないはずだ。
「ただ、操られてる人達が壊したものはあるかもしれないけど、本当に爆発するわけじゃないから、大丈」
『大丈夫』と告げかけたところで、それを遮るように、一際大きな爆発が起こる。
「……今の、は?」
「……えっと、お姉ちゃんじゃない誰かが、どこかを爆破した、んじゃないかなぁ?」
私の罠による爆音とは質が違う音。それを察知したアクーの言葉に、私は、受け入れがたいであろう現実を告げる。
「……ふっ、それならば、黒幕を徹底的に追い詰めてやるのみだ!!」
そして、ギラギラとした目でヤケになったらしいアクー。
(……できるだけ、少ない被害で終わらせてあげよう)
もしくは、壊れたものをコッソリと修復してあげるのも良いかもしれない。私は、アクー達のためにも、早くこの事態を終息させようと、続きの罠が発動するタイミングを早めた。
0
お気に入りに追加
372
あなたにおすすめの小説
記憶を失くした代わりに攻略対象の婚約者だったことを思い出しました
冬野月子
恋愛
ある日目覚めると記憶をなくしていた伯爵令嬢のアレクシア。
家族の事も思い出せず、けれどアレクシアではない別の人物らしき記憶がうっすらと残っている。
過保護な弟と仲が悪かったはずの婚約者に大事にされながら、やがて戻った学園である少女と出会い、ここが前世で遊んでいた「乙女ゲーム」の世界だと思い出し、自分は攻略対象の婚約者でありながらゲームにはほとんど出てこないモブだと知る。
関係のないはずのゲームとの関わり、そして自身への疑問。
記憶と共に隠された真実とは———
※小説家になろうでも投稿しています。
【完結】私ですか?ただの令嬢です。
凛 伊緒
恋愛
死んで転生したら、大好きな乙女ゲーの世界の悪役令嬢だった!?
バッドエンドだらけの悪役令嬢。
しかし、
「悪さをしなければ、最悪な結末は回避出来るのでは!?」
そう考え、ただの令嬢として生きていくことを決意する。
運命を変えたい主人公の、バッドエンド回避の物語!
※完結済です。
※作者がシステムに不慣れな時に書いたものなので、温かく見守っていだければ幸いです……(。_。///)
悪役令嬢が死んだ後
ぐう
恋愛
王立学園で殺人事件が起きた。
被害者は公爵令嬢 加害者は男爵令嬢
男爵令嬢は王立学園で多くの高位貴族令息を侍らせていたと言う。
公爵令嬢は婚約者の第二王子に常に邪険にされていた。
殺害理由はなんなのか?
視察に訪れていた第一王子の目の前で事件は起きた。第一王子が事件を調査する目的は?
*一話に流血・残虐な表現が有ります。話はわかる様になっていますのでお嫌いな方は二話からお読み下さい。
【完結済】悪役になりきれなかったので、そろそろ引退したいと思います。
木嶋うめ香
恋愛
私、突然思い出しました。
前世は日本という国に住む高校生だったのです。
現在の私、乙女ゲームの世界に転生し、お先真っ暗な人生しかないなんて。
いっそ、悪役として散ってみましょうか?
悲劇のヒロイン気分な主人公を目指して書いております。
以前他サイトに掲載していたものに加筆しました。
サクッと読んでいただける内容です。
マリア→マリアーナに変更しました。
どうして私が我慢しなきゃいけないの?!~悪役令嬢のとりまきの母でした~
涼暮 月
恋愛
目を覚ますと別人になっていたわたし。なんだか冴えない異国の女の子ね。あれ、これってもしかして異世界転生?と思ったら、乙女ゲームの悪役令嬢のとりまきのうちの一人の母…かもしれないです。とりあえず婚約者が最悪なので、婚約回避のために頑張ります!
猛禽令嬢は王太子の溺愛を知らない
高遠すばる
恋愛
幼い頃、婚約者を庇って負った怪我のせいで目つきの悪い猛禽令嬢こと侯爵令嬢アリアナ・カレンデュラは、ある日、この世界は前世の自分がプレイしていた乙女ゲーム「マジカル・愛ラブユー」の世界で、自分はそのゲームの悪役令嬢だと気が付いた。
王太子であり婚約者でもあるフリードリヒ・ヴァン・アレンドロを心から愛しているアリアナは、それが破滅を呼ぶと分かっていてもヒロインをいじめることをやめられなかった。
最近ではフリードリヒとの仲もギクシャクして、目すら合わせてもらえない。
あとは断罪を待つばかりのアリアナに、フリードリヒが告げた言葉とはーー……!
積み重なった誤解が織りなす、溺愛・激重感情ラブコメディ!
※王太子の愛が重いです。
私の婚約者は6人目の攻略対象者でした
みかん桜(蜜柑桜)
恋愛
王立学園の入学式。主人公のクラウディアは婚約者と共に講堂に向かっていた。
すると「きゃあ!」と、私達の行く手を阻むように、髪色がピンクの女生徒が転けた。『バターン』って効果音が聞こえてきそうな見事な転け方で。
そういえば前世、異世界を舞台にした物語のヒロインはピンク色が定番だった。
確か…入学式の日に学園で迷って攻略対象者に助けられたり、攻略対象者とぶつかって転けてしまったところを手を貸してもらったり…っていうのが定番の出会いイベントよね。
って……えっ!? ここってもしかして乙女ゲームの世界なの!?
ヒロイン登場に驚きつつも、婚約者と共に無意識に攻略対象者のフラグを折っていたクラウディア。
そんなクラウディアが幸せになる話。
※本編完結済※番外編更新中
婚約破棄は踊り続ける
お好み焼き
恋愛
聖女が現れたことによりルベデルカ公爵令嬢はルーベルバッハ王太子殿下との婚約を白紙にされた。だがその半年後、ルーベルバッハが訪れてきてこう言った。
「聖女は王太子妃じゃなく神の花嫁となる道を選んだよ。頼むから結婚しておくれよ」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる