110 / 129
第二章 復活と変化
第三十四話 シグルドの歓迎
しおりを挟む
「ルカっ!」
ルカがシグルドの元へ帰ると、シグルドは、飼い主が帰ってきたことを喜ぶワンコのように、ルカへと飛びつく。
「ねぇ、休んでろって言ったはずだけど?」
「ルカが来るまでは休んでた!」
「……そう」
何を言っても無駄だと悟ったのか、ルカは小さくため息を吐く。尻尾をブンブンと振るワンコに絆されたとも言うが……。
「? ルカ、何か悲しいことがあったのか? はっ、誰かに泣かされたのかっ!?」
ルカを抱き締めたまま、ルカの匂いをクンクン嗅いでいたシグルドは、ふいに、そんなことを尋ねる。
「何のこと?」
「誤魔化さないでくれっ。ルカから、涙の匂いがするんだっ」
「……チッ」
涙の匂いと言われ、誤魔化せないことを悟ったルカは、小さく舌打ちをして、とりあえず家の中に入ろうとシグルドを促す。シグルドがルカに飛びついたのは玄関だ。そのため、ルカはまだ、仮面を外してすらいない。
「ちゃんと聞かせてくれるか?」
「分かってから、さっさと入るよ」
「おうっ!」
ルカが帰ってきたのが嬉しいということを全身で表現するシグルドは、ルカとともに家の中へ入る。
ちなみに、ルカに連れられた男神は、拘束されたまま外に放置だ。もちろん、結界も張ってあるため、別の神が助けに来たとしてもすぐに分かる仕様で。そして、中の男神は、意識を取り戻す度にトラウマの激痛が蘇って気絶する仕様で。
それはひとえに、ルカの優先順位がシグルドの方へと傾いていたためであったが、まだ、それをシグルドが知ることはない。と、いうか、今は喜んでいるシグルドだが、そんな余裕はすぐになくなる。
「シグルド……」
「っ、なんだ?」
名前を呼ばれて、嬉しそうに振り返るシグルド。次の瞬間、シグルドはルカに抱き付かれる。
「ルカ……?」
抱き付かれた瞬間こそ、嬉しそうな表情になったシグルドだが、そのルカが震えて居ることに気づいて、即座に表情を引き締める。
「…………」
何も答えずに、ただ、小さく震えるルカ。そんなルカをしっかりと抱き締め返して、シグルドは問う。
「何があった?」
ルカを怯えさせた奴が居る。そして、完全にスルーしていたが、ルカがボコボコにして持ち帰った男神も何か関係があるかもしれない。そのくらいのことは、シグルドの頭でも理解できた。
「外の男神が原因か? ぶちのめしてこようか?」
「……大丈夫。これ以上ないくらいには追い込んでおいたから。アレは問題ないよ」
ようやく、シグルドの問いに口を開くルカ。そして……。
「ねぇ、『淫獄』は、まだ、滅びてなかったみたい」
そんな一言に、シグルドは目を丸くした。
ルカがシグルドの元へ帰ると、シグルドは、飼い主が帰ってきたことを喜ぶワンコのように、ルカへと飛びつく。
「ねぇ、休んでろって言ったはずだけど?」
「ルカが来るまでは休んでた!」
「……そう」
何を言っても無駄だと悟ったのか、ルカは小さくため息を吐く。尻尾をブンブンと振るワンコに絆されたとも言うが……。
「? ルカ、何か悲しいことがあったのか? はっ、誰かに泣かされたのかっ!?」
ルカを抱き締めたまま、ルカの匂いをクンクン嗅いでいたシグルドは、ふいに、そんなことを尋ねる。
「何のこと?」
「誤魔化さないでくれっ。ルカから、涙の匂いがするんだっ」
「……チッ」
涙の匂いと言われ、誤魔化せないことを悟ったルカは、小さく舌打ちをして、とりあえず家の中に入ろうとシグルドを促す。シグルドがルカに飛びついたのは玄関だ。そのため、ルカはまだ、仮面を外してすらいない。
「ちゃんと聞かせてくれるか?」
「分かってから、さっさと入るよ」
「おうっ!」
ルカが帰ってきたのが嬉しいということを全身で表現するシグルドは、ルカとともに家の中へ入る。
ちなみに、ルカに連れられた男神は、拘束されたまま外に放置だ。もちろん、結界も張ってあるため、別の神が助けに来たとしてもすぐに分かる仕様で。そして、中の男神は、意識を取り戻す度にトラウマの激痛が蘇って気絶する仕様で。
それはひとえに、ルカの優先順位がシグルドの方へと傾いていたためであったが、まだ、それをシグルドが知ることはない。と、いうか、今は喜んでいるシグルドだが、そんな余裕はすぐになくなる。
「シグルド……」
「っ、なんだ?」
名前を呼ばれて、嬉しそうに振り返るシグルド。次の瞬間、シグルドはルカに抱き付かれる。
「ルカ……?」
抱き付かれた瞬間こそ、嬉しそうな表情になったシグルドだが、そのルカが震えて居ることに気づいて、即座に表情を引き締める。
「…………」
何も答えずに、ただ、小さく震えるルカ。そんなルカをしっかりと抱き締め返して、シグルドは問う。
「何があった?」
ルカを怯えさせた奴が居る。そして、完全にスルーしていたが、ルカがボコボコにして持ち帰った男神も何か関係があるかもしれない。そのくらいのことは、シグルドの頭でも理解できた。
「外の男神が原因か? ぶちのめしてこようか?」
「……大丈夫。これ以上ないくらいには追い込んでおいたから。アレは問題ないよ」
ようやく、シグルドの問いに口を開くルカ。そして……。
「ねぇ、『淫獄』は、まだ、滅びてなかったみたい」
そんな一言に、シグルドは目を丸くした。
0
お気に入りに追加
378
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
黄色い水仙を君に贈る
えんがわ
BL
──────────
「ねぇ、別れよっか……俺たち……。」
「ああ、そうだな」
「っ……ばいばい……」
俺は……ただっ……
「うわああああああああ!」
君に愛して欲しかっただけなのに……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる