俺の番が最凶過ぎるっ

星宮歌

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第二章 復活と変化

第三十四話 シグルドの歓迎

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「ルカっ!」


 ルカがシグルドの元へ帰ると、シグルドは、飼い主が帰ってきたことを喜ぶワンコのように、ルカへと飛びつく。


「ねぇ、休んでろって言ったはずだけど?」

「ルカが来るまでは休んでた!」

「……そう」


 何を言っても無駄だと悟ったのか、ルカは小さくため息を吐く。尻尾をブンブンと振るワンコに絆されたとも言うが……。


「? ルカ、何か悲しいことがあったのか? はっ、誰かに泣かされたのかっ!?」


 ルカを抱き締めたまま、ルカの匂いをクンクン嗅いでいたシグルドは、ふいに、そんなことを尋ねる。


「何のこと?」

「誤魔化さないでくれっ。ルカから、涙の匂いがするんだっ」

「……チッ」


 涙の匂いと言われ、誤魔化せないことを悟ったルカは、小さく舌打ちをして、とりあえず家の中に入ろうとシグルドを促す。シグルドがルカに飛びついたのは玄関だ。そのため、ルカはまだ、仮面を外してすらいない。


「ちゃんと聞かせてくれるか?」

「分かってから、さっさと入るよ」

「おうっ!」


 ルカが帰ってきたのが嬉しいということを全身で表現するシグルドは、ルカとともに家の中へ入る。
 ちなみに、ルカに連れられた男神は、拘束されたまま外に放置だ。もちろん、結界も張ってあるため、別の神が助けに来たとしてもすぐに分かる仕様で。そして、中の男神は、意識を取り戻す度にトラウマの激痛が蘇って気絶する仕様で。
 それはひとえに、ルカの優先順位がシグルドの方へと傾いていたためであったが、まだ、それをシグルドが知ることはない。と、いうか、今は喜んでいるシグルドだが、そんな余裕はすぐになくなる。


「シグルド……」

「っ、なんだ?」


 名前を呼ばれて、嬉しそうに振り返るシグルド。次の瞬間、シグルドはルカに抱き付かれる。


「ルカ……?」


 抱き付かれた瞬間こそ、嬉しそうな表情になったシグルドだが、そのルカが震えて居ることに気づいて、即座に表情を引き締める。


「…………」


 何も答えずに、ただ、小さく震えるルカ。そんなルカをしっかりと抱き締め返して、シグルドは問う。


「何があった?」


 ルカを怯えさせた奴が居る。そして、完全にスルーしていたが、ルカがボコボコにして持ち帰った男神も何か関係があるかもしれない。そのくらいのことは、シグルドの頭でも理解できた。


「外の男神が原因か? ぶちのめしてこようか?」

「……大丈夫。これ以上ないくらいには追い込んでおいたから。アレは問題ないよ」


 ようやく、シグルドの問いに口を開くルカ。そして……。


「ねぇ、『淫獄』は、まだ、滅びてなかったみたい」


 そんな一言に、シグルドは目を丸くした。
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