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第一章 神嫌いの最凶神
第五十話 シグルドと監視
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そう、簡単なはず、だった。ルカ本人が、本調子であれば、だが……。
「ぐっ」
「っ、ルカ!!」
一瞬の揺らぎ。しかし、シグルドには、その一瞬だけで十分だった。
発動しかけていた転移魔法を打ち消して、シグルドはルカの元へと駆け寄ってその腕を取る。
「ルカっ、どうしたんだ!?」
「っ、うるさい、よ……。何でもないから、さっさと帰って」
本当に何でもないわけがない、というのは、シグルドに腕を取られた程度でよろめいたルカを見れば明らかだった。
「帰るわけがないだろう! こんな、ツラそうなルカを放っておいて、帰れるわけがないだろうっ!!」
声を荒げるシグルドに、ルカはため息を一つ吐くと、力を込めて、シグルドを振り払う。
「あっそ。今なら、僕が帰してあげたのにね。なら、自分で勝手に帰りなよ」
「ルっ……ぐぅ……」
ルカを追おうとしたシグルドだったが、そのシグルドは、無理が祟ったのか、その場で崩れ落ちる。ちなみに、事後なため、シグルドは一糸纏わぬ姿だ。
「レイ、こいつの監視をしておいて」
「……承知致しました」
そんな言葉を最後に、ルカはシグルドの前から姿を消す。
「……改めまして、この度、あなた様の監視を仰せつかりました、レイと申します。どうぞ、よろしくお願いいたします」
「……シグルド・スナー・コルロだ。残念ながら、俺はルカの側を離れるつもりはない」
まともに動けないながらも、威嚇するシグルドに、レイは表情を変えることなくうなずく。
「構いません。私が仰せつかったのは、あくまでも監視のみ。あなた様が何かをして、主様がそれを禁じない限りは、見逃してしまうかもしれません」
元々、レイはルカのことを大切に思っていたのだ。そして、一応は、ルカの癒やしとなるはずのシグルドを害するつもりは、今のレイにはないらしい。むしろ、この十日間で何かを認めたとでも言うのか、レイの態度は、最初の頃よりも緩和しているようにすら見える。
「……分かった」
そんなレイの態度に、『良いのか』と問いかけることなく、シグルドはそれを呑み込む。シグルドにとっても、その方が都合が良い。
「ついでに、ルカのことを教えてもらうことは……?」
「私の任務は、あくまでも監視ですので」
しかし、さすがにそこまで甘くはなかったらしく、バッサリと切り捨てられたシグルドほ苦笑を浮かべて、もう一度『分かった』と告げる。
「なら、よろしく、頼む」
そこまで告げたシグルドは、限界だったのか、そのままその場で意識を失った。
「ぐっ」
「っ、ルカ!!」
一瞬の揺らぎ。しかし、シグルドには、その一瞬だけで十分だった。
発動しかけていた転移魔法を打ち消して、シグルドはルカの元へと駆け寄ってその腕を取る。
「ルカっ、どうしたんだ!?」
「っ、うるさい、よ……。何でもないから、さっさと帰って」
本当に何でもないわけがない、というのは、シグルドに腕を取られた程度でよろめいたルカを見れば明らかだった。
「帰るわけがないだろう! こんな、ツラそうなルカを放っておいて、帰れるわけがないだろうっ!!」
声を荒げるシグルドに、ルカはため息を一つ吐くと、力を込めて、シグルドを振り払う。
「あっそ。今なら、僕が帰してあげたのにね。なら、自分で勝手に帰りなよ」
「ルっ……ぐぅ……」
ルカを追おうとしたシグルドだったが、そのシグルドは、無理が祟ったのか、その場で崩れ落ちる。ちなみに、事後なため、シグルドは一糸纏わぬ姿だ。
「レイ、こいつの監視をしておいて」
「……承知致しました」
そんな言葉を最後に、ルカはシグルドの前から姿を消す。
「……改めまして、この度、あなた様の監視を仰せつかりました、レイと申します。どうぞ、よろしくお願いいたします」
「……シグルド・スナー・コルロだ。残念ながら、俺はルカの側を離れるつもりはない」
まともに動けないながらも、威嚇するシグルドに、レイは表情を変えることなくうなずく。
「構いません。私が仰せつかったのは、あくまでも監視のみ。あなた様が何かをして、主様がそれを禁じない限りは、見逃してしまうかもしれません」
元々、レイはルカのことを大切に思っていたのだ。そして、一応は、ルカの癒やしとなるはずのシグルドを害するつもりは、今のレイにはないらしい。むしろ、この十日間で何かを認めたとでも言うのか、レイの態度は、最初の頃よりも緩和しているようにすら見える。
「……分かった」
そんなレイの態度に、『良いのか』と問いかけることなく、シグルドはそれを呑み込む。シグルドにとっても、その方が都合が良い。
「ついでに、ルカのことを教えてもらうことは……?」
「私の任務は、あくまでも監視ですので」
しかし、さすがにそこまで甘くはなかったらしく、バッサリと切り捨てられたシグルドほ苦笑を浮かべて、もう一度『分かった』と告げる。
「なら、よろしく、頼む」
そこまで告げたシグルドは、限界だったのか、そのままその場で意識を失った。
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