俺の番が最凶過ぎるっ

星宮歌

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第一章 神嫌いの最凶神

第九話 訓練という名の……

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 永遠に雷が降り注ぎ、絶対零度の雪原が広がる神界で最も標高の高い山。狂暴な神獣が多く生息し、例え五枚羽の戦闘系の神であっても近づくことのない禁域。しかし、その場所には現在、小さなログハウスが建っていた。


「ほら、もうへたばってるの? 最初に僕に突っ掛かってきた威勢はどこに行ったのかな?」

「ひぃぃいっ!」

「お、お許しをぉぉおっ!!」

「あは、あはははハ……」


 そのログハウスの中は、一つ一つの部屋の空間を拡張してあるらしく、調教場と書かれたプレートがかかっている部屋の中は、草原エリア、火山エリア、雪原エリア、暗黒エリアの四つに区分され、それぞれが膨大な広さで存在している。その内の、草原エリアにおいて、三馬鹿こと、チンピラの神な、スキン、ロン、チャラ(ルカ命名)達が、懸命に、逃げ惑っていた。彼らを追うのは、ルカではなく、ルカが創造の力で生み出したウサギ型のモンスターだ。見た目は、茶色かったり、黒かったり、黄色かったり、ピンクだったりな、色とりどりの可愛らしいウサギ。彼らに囲まれれば、その愛らしさに破顔する者が続出するであろうと思えるほどなのだが……そんなウサギ達は、飼い主に似て、凶暴だった。


「ぐあぁぁあっ!!」


 まずは一人。スキンが、茶色ウサギのヤンチャな体当たりを受けて、十メートル以上先まで吹き飛ばされ、その後、毬で遊ぶかのように、地面に落ちることなく、連続で体当たりや蹴りをくらい続ける。


「ひぃっ、ひぃっ、ひぃぃぃいっ」


 そして、次に、ロンは、黄色のモフモフウサギに、そのロン毛をモッシャモッシャとむしられ、第二のスキンヘッド街道を突き進み、白目を剥く。


「あぼあぁぁあっ」


 最後に、黒ウサギに捕まったチャラは、その顔を執拗にドゴンドコンという音とともに踏みつけられ、いわおのような顔に強制整形させられる。

 しばらくして、抵抗が弱くなったと感じれば、ルカは、ウサギ達に集合をかけて、三馬鹿を回復させる。


「ねぇ、僕も暇じゃないんだよ? だから、さっさと、副神格取得して、戦闘能力を手に入れてよ」

「すっ、すみませんんんっ」

「髪が、髪が、髪が……」

「無理、無理ですぅ。そもそも、何で、そんなことを……」


 ガクガク震えて謝罪するスキンに、ちょっと壊れかけなロン、顔は元に戻ったものの、心がポッキリ折れたらしいチャラ。最後のチャラの質問に、スキンとロンは、一瞬にしてギョッとした表情を浮かべるものの、問いかけられたルカは、『そういえば、言ってなかったね』と、至極真面目に応える。


「お前達は、僕に暴言を吐いて、不快な思いをさせたことを償うために、この家の守護をしてもらおうかと思ってる。まっ、当然だよね」


 ルカの返答に、三馬鹿は、互いに顔を見合せ、この空間に存在する『窓』へと視線を移す。正真正銘、外の様子が分かる『窓』。ただでさえ、色々と弄っている空間に、更なる空間魔法の付与によって、浮かんだ空間魔法の球体の中に外の景色を映すなどという芸当をやってのけたために存在する異質な『窓』。その光景は、世界の終わりとしか思えないものだ。


「あれにタイトルをつけるなら、破壊神?」

「世界の破滅」

「終焉の日」


 遠い目で、チャラ、スキン、ロンの順に、似通った感想が並べられる。彼らの心は、今、完全に一致していた。


(((無理だろっ!)))


 何度も言うようだが、ここは、禁域だ。そもそも、こんな場所に家を建てるのも正気の沙汰ではないと言えるのに、強力な結界やら何やらを張り巡らせて、神獣の攻撃を防いでいるという状態の家を守るなど、そもそも、それでも守らなければならない状況など、三馬鹿がそれぞれ千人居たところで、どうにならない。


「さて、と。僕も暇じゃないし、この空間は、時間操作して、タイミング良く回復してくれるように設定しておくから、さっさと使えるようになってよね?」

「へっ?」

「えっ? まっ」

「う、うそぉっ!?」


 三馬鹿が止める間もなく、ルカは、何もない空間に穴を開けて、さっさとそこから出てしまう。
 ……取り残された三馬鹿の周りには、ギラギラと目を輝かせた猛獣ウサギ達が、取り囲んでいたのだった。
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