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第二章 本当の心
第四十三話 処罰の行方(二)
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そこから続いて、魔王陛下はアリアナが処刑までに受ける罰を話し出す。
「その女はまず、ムチ打ち百回の刑が課せられる。もちろん、死にそうになったら適宜回復しながらでね。そこからは、魔女について知っていることを洗いざらい吐いてもらうための拷問。あぁ、あらかじめ、魔法が二度と使えないようにはしているから、魅了なんて意味がないけどね。後は、鉱山での十年間の強制労働。その後、二人の希望の刑を課した後、処刑って形を取ろうと思うんだ」
あまりにも過酷な刑を聞かされ、アリアナは必死に叫んで暴れて逃げようとするものの、騎士が直ぐ側に居るため、そのまま這いつくばるような形で取り押さえられる。
「んーっ! んむーっっ!!」
嫌だ嫌だと首を振る彼女の姿は、何も知らない者が見れば憐れみさえ覚える姿だろう。
過酷だと、酷い刑だと思うのに、それでもまだ、許せない気持ちが強いのは、片翼を害されたから、なんだろうなぁ。
魔族にとっての片翼がどんな存在なのか、知識はあっても、ここまでのものだとは知らなかった。そして、本当に、片翼をちゃんと認識できているという事実を改めて実感する。
「さて、二人は何か、望む刑があるかな? ただし、あくまでもアリアナ一人を対象にした刑で、だけど」
昔、少しだけ聞いたことがある。片翼を害された魔族は、その報復のために敵と見做した相手のみならず、その相手の大切にしている人物までをも害してしまうことがあると。そして、そこからまた連鎖的に悲劇が起き続けると。
そんな悲しい連鎖を起こさないために、片翼を害された魔族は、加害者である相手にのみ重い刑罰を与える権利を持つことができるのだと。
きっと、今がその時なのだろう。
「さぁ、何かあるなら、このリアン魔国魔王、ハミルトン・リアンが必ずその処罰を反映させることを約束しよう」
そう言われて、私は必死に考える。自分では、そんなに残酷なことなんて思い浮かばないと思っていたのに、ケインを奪われるところだったと思えば、いくらでも残酷な案が浮かんでしまう。けれど……。
「私から先に話しても良いでしょうか?」
「うん、もちろんだよ。ロレーヌ嬢」
考えている間に、まずはロレーヌが自分の望む罰を話すようだった。
「まず、その女によって受けた風評被害などの対処に関してはどうなりますか?」
「うん、それに関しては、こちらでも把握しているよ。魅了のことは伏せた上で、王家の力でその名誉を取り戻せるように働きかけることを約束するよ。詳しい内容については、ロレーヌ嬢やロレーヌ嬢のご家族そして、ロレーヌ嬢の片翼やその家族とも相談した上で行うこととしよう」
「ありがとうございます」
望む罰についてよりも、自分や家族の名誉挽回について話をするロレーヌに、私の頭も少しだけ冷える。
そう、考えることは処罰以外にもあるはずなのだ。
ケインのことも、ライト様達のことも、未来のために考えることはたくさんあった。
「その女はまず、ムチ打ち百回の刑が課せられる。もちろん、死にそうになったら適宜回復しながらでね。そこからは、魔女について知っていることを洗いざらい吐いてもらうための拷問。あぁ、あらかじめ、魔法が二度と使えないようにはしているから、魅了なんて意味がないけどね。後は、鉱山での十年間の強制労働。その後、二人の希望の刑を課した後、処刑って形を取ろうと思うんだ」
あまりにも過酷な刑を聞かされ、アリアナは必死に叫んで暴れて逃げようとするものの、騎士が直ぐ側に居るため、そのまま這いつくばるような形で取り押さえられる。
「んーっ! んむーっっ!!」
嫌だ嫌だと首を振る彼女の姿は、何も知らない者が見れば憐れみさえ覚える姿だろう。
過酷だと、酷い刑だと思うのに、それでもまだ、許せない気持ちが強いのは、片翼を害されたから、なんだろうなぁ。
魔族にとっての片翼がどんな存在なのか、知識はあっても、ここまでのものだとは知らなかった。そして、本当に、片翼をちゃんと認識できているという事実を改めて実感する。
「さて、二人は何か、望む刑があるかな? ただし、あくまでもアリアナ一人を対象にした刑で、だけど」
昔、少しだけ聞いたことがある。片翼を害された魔族は、その報復のために敵と見做した相手のみならず、その相手の大切にしている人物までをも害してしまうことがあると。そして、そこからまた連鎖的に悲劇が起き続けると。
そんな悲しい連鎖を起こさないために、片翼を害された魔族は、加害者である相手にのみ重い刑罰を与える権利を持つことができるのだと。
きっと、今がその時なのだろう。
「さぁ、何かあるなら、このリアン魔国魔王、ハミルトン・リアンが必ずその処罰を反映させることを約束しよう」
そう言われて、私は必死に考える。自分では、そんなに残酷なことなんて思い浮かばないと思っていたのに、ケインを奪われるところだったと思えば、いくらでも残酷な案が浮かんでしまう。けれど……。
「私から先に話しても良いでしょうか?」
「うん、もちろんだよ。ロレーヌ嬢」
考えている間に、まずはロレーヌが自分の望む罰を話すようだった。
「まず、その女によって受けた風評被害などの対処に関してはどうなりますか?」
「うん、それに関しては、こちらでも把握しているよ。魅了のことは伏せた上で、王家の力でその名誉を取り戻せるように働きかけることを約束するよ。詳しい内容については、ロレーヌ嬢やロレーヌ嬢のご家族そして、ロレーヌ嬢の片翼やその家族とも相談した上で行うこととしよう」
「ありがとうございます」
望む罰についてよりも、自分や家族の名誉挽回について話をするロレーヌに、私の頭も少しだけ冷える。
そう、考えることは処罰以外にもあるはずなのだ。
ケインのことも、ライト様達のことも、未来のために考えることはたくさんあった。
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