私、異世界で保護されました! 〜やりたいことのために猪突猛進です〜

星宮歌

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第二章 本当の心

第二十八話 ロレーヌという少女(一)

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 初めての友達という存在に、私は浮かれきっていた。これからは、一緒にお昼を食べたり、遊んだり、時には勉強会をしてみたりと、こなしたいイベントが盛り沢山だと喜んでいた。
 だから、私はそれに対する心構えなど、全くできていなかった。


「ロレーヌ、お昼、一緒に食べよう」

「えっと、私、お弁当だけど、ミオは?」

「私は学食かなぁ。ひとまず、一緒に行こう!」


 お昼までの間にすっかり打ち解けた私達は、何の不安もなく食堂へと訪れる。そして……。


「?」

「あ……」


 入った瞬間に向けられたのは、ロレーヌに対する侮蔑の視線。
 誰かが何かを言ってくる気配は無いものの、出会った時のことも含め、ロレーヌには何かがあるらしかった。


 ……どうしよう。こういう時って、踏み込むべき? それとも、そっと知らないフリ?


 まともに人付き合いをしてこなかった弊害として、こういう時にどうすれば良いのか、全く分からない。しかも、本人は視線に気付いて俯いているため、その表情すら読めない。


 ど、どうしようっ!


 もしかしたら、友情崩壊の危機かもしれない。
 まだ出会って一日しか経っていないとはいえ、大切な大切な友達第一号なのだ。何とか、この場を切り抜けないとと頭を回転させていると、ロレーヌがそっと声をかけてくる。


「えっと、私は歓迎されてないみたいだから、一人で食べるね?」


 明らかに無理に作った笑顔で、私を気遣うロレーヌ。


 …………よし。


「大丈夫よ、ロレーヌ。学食はどこで食べても良いそうだから、受け取ったらどこか良い場所を見つけて一緒に食べよう」


 踏み込むかどうかは後回し。そう結論付けて、ひとまずは行動することにする。
 少しだけ待ってもらって、適当に選んだ食事を持ってロレーヌと合流すると、さっさとその場を後にする。

 食事をする場所として見つけたのは、校舎裏にひっそりと佇んでいたガゼボ。
 適度に手入れをされている様子なので、そこに誰も居なかったことは幸運だったかもしれない。


「良いところがあったね。さ、食べよう」


 二人で食べるには少し大きなテーブル。椅子の数からして、六人は座れるだろうそこに、私は持ってきていた食事を載せたおぼんを置き、対面の席を勧める。


「その……ミオは、聞かないの?」


 恐る恐るといった様子で問いかけるロレーヌに、私は少しだけ考えて……。


「とりあえず、冷める前に食事してから、かな?」


 もうちょっと、問題を先延ばしにしても問題はないはず、とばかりに、そう答えていた。
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