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第二章 本当の心
第二十七話 友達第一号
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後から考えれば、この時の私は随分と浮かれていたのだろうと思う。出会って間もない少女を守るために権力をチラつかせるなど、普段の私なら絶対にやらないことだろう。
それでも、この時の私は、ロレーヌを守りたいと思った。
「っ、ロットール家なんて、聞いたことな「おいっ、やめろっ! ロットール家は、ヴァイラン魔国の有名な貴族家だぞっ!?」」
さすがに隣国にまで、ロットール家の名前が届いているかどうかは怪しかったが、どうやら知っている者も居たらしい。
しかも都合の良いことに、ヴァイラン魔国では比較的知られている私の魔力の低さなどは、隣国であるからこそ、知られていなかったらしい。
「「「し、失礼しましたー!」」」
これから授業が始まるはずなのに、一斉に教室を去る男子生徒達。
それに一瞬、呆気に取られるものの、確かに他国の貴族、しかも上級貴族に当たる存在に喧嘩を売ってしまえば、逃げたくなるのも当然だと思い直す。
「あ、あの。ありがとう、ございます」
男子生徒達が出ていった扉をぼんやり見ていると、後ろからそんな声がかけられる。
「ロレーヌ」
「ありがとうございます! 私、私……」
ロレーヌに何があって、あんなことを言われていたのかは分からない。ただ、ロレーヌは緊張の糸が切れたかのようにポロポロと涙をこぼして、何度も何度も『ありがとうございます』と言い続けていた。
こんな時、何か気の利いた言葉でも掛けられれば、それなりにコミュニケーション能力が高いということになるのだろうが、私には何も思いつかず、かといってそのままにすることもできず、手持ちのカバンを慌てて探って、目当てのものを見つけ出す。
「えっと、ロレーヌが大丈夫なら良いんです。その、ハンカチ、どうぞ」
混乱しているなという自覚をしながらも、そっとハンカチを差し出すと、ロレーヌはまた『ありがとうございます』と告げてそっと受け取ってくれる。
最初に、とても明るい女の子だという印象を抱いたものの、今、大人しくしている彼女を見ると、それはただの強がりだったのではないかとも思えてくる。
少しして、泣き止んだロレーヌは改めて居住まいを正すと、深々と頭を下げる。
「本当に、ありがとうございます。ロットール様の言葉で、私は救われました」
「さっきも言いましたが、ミオで良いですよ。それに、私はただ、あの男子生徒達が目障りだっただけですし」
こうして、大袈裟なくらい感謝されることには、正直、慣れてはいない。
蛇足とも言うべき言葉を付け足してしまったと思いながらも、ロレーヌの様子を伺えば、ロレーヌはフワリと微笑む。
「最初に声をかけたのが、ミオ様で良かったです」
心からそう思っている様子のロレーヌに、私は戸惑いながらも、一つのチャンスに気づく。すなわち……。
「で、では、私と、その……友達に、なってくれません、か?」
最初は、少し強引にでも仲良くなれたら、と思っていたが、この流れなら、もしかすると自然と友人関係になれるかもしれない。そう思って問いかければ、ロレーヌは少しだけ目を丸くして、その後にしっかりと返事をしてくれる。
「っ、はいっ! 私で、良ければっ」
こうして、私は友達第一号をゲットしたのだった。
それでも、この時の私は、ロレーヌを守りたいと思った。
「っ、ロットール家なんて、聞いたことな「おいっ、やめろっ! ロットール家は、ヴァイラン魔国の有名な貴族家だぞっ!?」」
さすがに隣国にまで、ロットール家の名前が届いているかどうかは怪しかったが、どうやら知っている者も居たらしい。
しかも都合の良いことに、ヴァイラン魔国では比較的知られている私の魔力の低さなどは、隣国であるからこそ、知られていなかったらしい。
「「「し、失礼しましたー!」」」
これから授業が始まるはずなのに、一斉に教室を去る男子生徒達。
それに一瞬、呆気に取られるものの、確かに他国の貴族、しかも上級貴族に当たる存在に喧嘩を売ってしまえば、逃げたくなるのも当然だと思い直す。
「あ、あの。ありがとう、ございます」
男子生徒達が出ていった扉をぼんやり見ていると、後ろからそんな声がかけられる。
「ロレーヌ」
「ありがとうございます! 私、私……」
ロレーヌに何があって、あんなことを言われていたのかは分からない。ただ、ロレーヌは緊張の糸が切れたかのようにポロポロと涙をこぼして、何度も何度も『ありがとうございます』と言い続けていた。
こんな時、何か気の利いた言葉でも掛けられれば、それなりにコミュニケーション能力が高いということになるのだろうが、私には何も思いつかず、かといってそのままにすることもできず、手持ちのカバンを慌てて探って、目当てのものを見つけ出す。
「えっと、ロレーヌが大丈夫なら良いんです。その、ハンカチ、どうぞ」
混乱しているなという自覚をしながらも、そっとハンカチを差し出すと、ロレーヌはまた『ありがとうございます』と告げてそっと受け取ってくれる。
最初に、とても明るい女の子だという印象を抱いたものの、今、大人しくしている彼女を見ると、それはただの強がりだったのではないかとも思えてくる。
少しして、泣き止んだロレーヌは改めて居住まいを正すと、深々と頭を下げる。
「本当に、ありがとうございます。ロットール様の言葉で、私は救われました」
「さっきも言いましたが、ミオで良いですよ。それに、私はただ、あの男子生徒達が目障りだっただけですし」
こうして、大袈裟なくらい感謝されることには、正直、慣れてはいない。
蛇足とも言うべき言葉を付け足してしまったと思いながらも、ロレーヌの様子を伺えば、ロレーヌはフワリと微笑む。
「最初に声をかけたのが、ミオ様で良かったです」
心からそう思っている様子のロレーヌに、私は戸惑いながらも、一つのチャンスに気づく。すなわち……。
「で、では、私と、その……友達に、なってくれません、か?」
最初は、少し強引にでも仲良くなれたら、と思っていたが、この流れなら、もしかすると自然と友人関係になれるかもしれない。そう思って問いかければ、ロレーヌは少しだけ目を丸くして、その後にしっかりと返事をしてくれる。
「っ、はいっ! 私で、良ければっ」
こうして、私は友達第一号をゲットしたのだった。
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