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第二章 本当の心
第二十三話 合格とそれぞれの学院
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「ミオ姉っ、合格おめでとう!!」
「「「おめでとう!!」」」
進路を決めてからの私は、どんどんその目標に向かって勉強を進め、ついには希望の高等科に合格することができた。
「ありがとう。ライト様、オリアナ様、ケイン、ルキウス。おかげで、スイーツ学院に合格できました」
スイーツ学院は、その名の通りスイーツ専門の高等科だ。パティシエはもちろんのこと、スイーツの品評委員やスイーツの原材料の生産者になりたい者もこの学院を目指す。ただし……。
「ミオ姉……他国に行っちゃうんだよね」
寂しそうにポツリと呟くルキウス。
そう、スイーツ学院は、このヴァイラン魔国ではなく、隣国のリアン魔国にあるため、入学の時期までには住む場所を決めて、この家から出なければならないのだ。
「長期の休みには、毎回帰ってくるから、その時は思いっきり遊ぼう」
「っ、うん!」
正直、ここを離れることに辛さがないわけではない。特に、私は家族から愛されているのだと知って、それを段々と受け入れられるようになってきてからは、まだまだ一緒に居たい気持ちが大きかった。
それでも、私は、家族全員がスイーツ好きだということを知っているため、美味しいお菓子を自分の手で作れるようになりたかったのだ。
「そうね。長期休暇には、二人ともちゃんと帰って来なさい」
「住む場所は、二人で話し合って決めると良いよ」
未来の笑顔を夢見て、明るい気持ちになっていたところで、ふと、そんなオリアナ様とライト様の言葉が耳に入る。
「二人……? ケインは、国内の学院を受けたんじゃないの?」
二人、ということは、私ともう一人。恐らくは、同じ時期に受験をしたケインしか居ないだろうとケインへ尋ねれば、ケインはにっこりと笑う。
「うん、どちらにしようか迷って、結局はリアン魔国にある騎士養成のためのナイト学院に行くことにしたんだ」
ケインが進路を迷っていることは知っていた。そして、ケインは自分の運動能力を伸ばすべく、ヴァイラン魔国のソルジャー学院か、リアン魔国のナイト学院に絞っていたことも。ただし……。
「ソルジャー学院の方は良かったの?」
どちらかと言えば、ソルジャー学院に惹かれているように見えていたため、この決定は意外だった。
「うん、ミオ姉の恩人の卒業したところなんでしょ? それを聞いてから、ちょっと色々調べてみたんだ」
恩人というのは、私をかつて、あの家から救出しに来た騎士のことだ。ちなみに、名前はジルベルト・ワッドナー。今でも、時折手紙のやり取りをすることがある相手だ。
しかし、この話を出した時、ケインは随分と深刻な表情で考え込んでいる様子だったので、てっきりナイト学院には行きたくないのかもしれないと思っていたのだ。
「ちょうど、スイーツ学院もナイト学院もそんなに距離が離れてるわけじゃないから、一緒にどこか部屋を借りよう」
そんなケインの言葉に、私は、こっそりと立てていた弟離れをする、という目標が達成できそうにないことを悟った。
「「「おめでとう!!」」」
進路を決めてからの私は、どんどんその目標に向かって勉強を進め、ついには希望の高等科に合格することができた。
「ありがとう。ライト様、オリアナ様、ケイン、ルキウス。おかげで、スイーツ学院に合格できました」
スイーツ学院は、その名の通りスイーツ専門の高等科だ。パティシエはもちろんのこと、スイーツの品評委員やスイーツの原材料の生産者になりたい者もこの学院を目指す。ただし……。
「ミオ姉……他国に行っちゃうんだよね」
寂しそうにポツリと呟くルキウス。
そう、スイーツ学院は、このヴァイラン魔国ではなく、隣国のリアン魔国にあるため、入学の時期までには住む場所を決めて、この家から出なければならないのだ。
「長期の休みには、毎回帰ってくるから、その時は思いっきり遊ぼう」
「っ、うん!」
正直、ここを離れることに辛さがないわけではない。特に、私は家族から愛されているのだと知って、それを段々と受け入れられるようになってきてからは、まだまだ一緒に居たい気持ちが大きかった。
それでも、私は、家族全員がスイーツ好きだということを知っているため、美味しいお菓子を自分の手で作れるようになりたかったのだ。
「そうね。長期休暇には、二人ともちゃんと帰って来なさい」
「住む場所は、二人で話し合って決めると良いよ」
未来の笑顔を夢見て、明るい気持ちになっていたところで、ふと、そんなオリアナ様とライト様の言葉が耳に入る。
「二人……? ケインは、国内の学院を受けたんじゃないの?」
二人、ということは、私ともう一人。恐らくは、同じ時期に受験をしたケインしか居ないだろうとケインへ尋ねれば、ケインはにっこりと笑う。
「うん、どちらにしようか迷って、結局はリアン魔国にある騎士養成のためのナイト学院に行くことにしたんだ」
ケインが進路を迷っていることは知っていた。そして、ケインは自分の運動能力を伸ばすべく、ヴァイラン魔国のソルジャー学院か、リアン魔国のナイト学院に絞っていたことも。ただし……。
「ソルジャー学院の方は良かったの?」
どちらかと言えば、ソルジャー学院に惹かれているように見えていたため、この決定は意外だった。
「うん、ミオ姉の恩人の卒業したところなんでしょ? それを聞いてから、ちょっと色々調べてみたんだ」
恩人というのは、私をかつて、あの家から救出しに来た騎士のことだ。ちなみに、名前はジルベルト・ワッドナー。今でも、時折手紙のやり取りをすることがある相手だ。
しかし、この話を出した時、ケインは随分と深刻な表情で考え込んでいる様子だったので、てっきりナイト学院には行きたくないのかもしれないと思っていたのだ。
「ちょうど、スイーツ学院もナイト学院もそんなに距離が離れてるわけじゃないから、一緒にどこか部屋を借りよう」
そんなケインの言葉に、私は、こっそりと立てていた弟離れをする、という目標が達成できそうにないことを悟った。
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