私、異世界で保護されました! 〜やりたいことのために猪突猛進です〜

星宮歌

文字の大きさ
上 下
22 / 49
第二章 本当の心

第二十二話 進路

しおりを挟む
 中等科三年。それは、中等科の最終学年だ。

 ケインを片翼だと誤認したままに一年という月日が過ぎて、私は今、どこへ進学しようかと必死に悩んでいた。


「目標、か……」


 きっと、普通ならば何らかの目標を立てて、そこへ向かうべく勉強するものなのだろう。私もかつては、そうしていたのだから、目標があるということの強みは十分に理解している。ただし、その目標を見失ったせいで、今の私は、はっきり言って迷子状態だ。


「ミオ姉、今、良い?」

「ケイン? うん、大丈夫だよ」


 自室で進路希望の紙と向き合っていると、ケインがやってきて、ドキリとする。それでも、平常心を心がけて対応すれば、ひょっこりとケインが顔を覗かせる。


「やっぱり、ミオ姉、悩んでた」


 ケインは、私のすぐ近くまで来て、進路希望の用紙を確認するとそう告げる。


「うん……そうだね。ケインは、どうするか決めた?」


 高等部に進学することは私もケインも決定事項として考えているが、どこにするのかはまだ決まっていない。
 私に関しては、魔法や剣術関連に力を注いでいる場所は無理だろうと除外しているのだが、それにしても選択肢が多い。


「僕も、考え中。ミオ姉は、何か候補ある?」

「……候補が絞れなくて、まだ駄目。明日が提出期限なのに……」


 魔族の国では、高等科からは専門色の強い学校となってくる。前世で言う『大学』や『専門学校』というものと似たような位置づけらしい。そして、魔族の寿命は長いので、いくつもの高等科を受験して、そこの卒業資格を取るということもよくあることだった。
 だから、前世のように一つしか選べないのだと神経質になる必要はなく、気楽に興味のあるところへ行けば良いというのがこの国でのスタイルだ。


「……ミオ姉、こことか、ここは?」


 そんな中、ケインが示して来たのは、二つの高等科だった。
 それは、どちらももの作りに特化した場所であり、『ピッケル学院』は鉱石や魔石を使った細工を学ぶ場所、『ドレッシー学院』はお針子の技術を学べる場所だ。


「ミオ姉、もの作りが好きだし、魔力の有無で出来ないことが少ない分野だと、思う。それに、この国の中でもあるし……」


 ケインの言う通り、魔力の量によっては無理だという科も存在する。そして、何よりも、私はもの作りが好きだった。料理も裁縫も、大工仕事も、魔力が少ない分、不便は多くとも、楽しく作っていた。しかし……。


「私がもの作りが好きって、よく知ってたね」

「見てたら、分かるよ」


 ケインとは、特にそんな話をしたことはなかったし、出来上がったものを見せたこともない。いずれ、満足のできるものが作れるようになったら、喜んでもらえるだろうかと、ひっそりと作っていたのだから。


「目標、無くても良いんじゃないかな?」

「え?」


 と、そこで、私が気にしていたことをケインが切り込む。


「通ってるうちに、目標ができるかもしれない。だから、今はミオ姉のために、ミオ姉の心の赴くままに選べば良いよ」


 ケインを片翼だと誤認している私は、ケインと同じ高等科へ進学したいという気持ちと、ケインとは別の技術を身につけて、ケインを支えたいという気持ちが大半を占めている。それでも、私が、私のために選ぶのだとすれば……。


「ありがとう。おかげで、決まりそう」


 たとえ、道が分かれたとしても、片翼という誤認をしたままの状態よりはマシなはずだ。
 その後、ケインの進路に関しても色々と話しをして、ケインが部屋を出た後、私は、進学先の記入を行った。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

【完結】転生白豚令嬢☆前世を思い出したので、ブラコンではいられません!

白雨 音
恋愛
エリザ=デュランド伯爵令嬢は、学院入学時に転倒し、頭を打った事で前世を思い出し、 《ここ》が嘗て好きだった小説の世界と似ている事に気付いた。 しかも自分は、義兄への恋を拗らせ、ヒロインを貶める為に悪役令嬢に加担した挙句、 義兄と無理心中バッドエンドを迎えるモブ令嬢だった! バッドエンドを回避する為、義兄への恋心は捨て去る事にし、 前世の推しである悪役令嬢の弟エミリアンに狙いを定めるも、義兄は気に入らない様で…??  異世界転生:恋愛 ※魔法無し  《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、ありがとうございます☆

【完結】仕事のための結婚だと聞きましたが?~貧乏令嬢は次期宰相候補に求められる

仙桜可律
恋愛
「もったいないわね……」それがフローラ・ホトレイク伯爵令嬢の口癖だった。社交界では皆が華やかさを競うなかで、彼女の考え方は異端だった。嘲笑されることも多い。 清貧、質素、堅実なんていうのはまだ良いほうで、陰では貧乏くさい、地味だと言われていることもある。 でも、違う見方をすれば合理的で革新的。 彼女の経済観念に興味を示したのは次期宰相候補として名高いラルフ・バリーヤ侯爵令息。王太子の側近でもある。 「まるで雷に打たれたような」と彼は後に語る。 「フローラ嬢と話すとグラッ(価値観)ときてビーン!ときて(閃き)ゾクゾク湧くんです(政策が)」 「当代随一の頭脳を誇るラルフ様、どうなさったのですか(語彙力どうされたのかしら)もったいない……」 仕事のことしか頭にない冷徹眼鏡と無駄使いをすると体調が悪くなる病気(メイド談)にかかった令嬢の話。

貧乏男爵家の末っ子が眠り姫になるまでとその後

空月
恋愛
貧乏男爵家の末っ子・アルティアの婚約者は、何故か公爵家嫡男で非の打ち所のない男・キースである。 魔術学院の二年生に進学して少し経った頃、「君と俺とでは釣り合わないと思わないか」と言われる。 そのときは曖昧な笑みで流したアルティアだったが、その数日後、倒れて眠ったままの状態になってしまう。 すると、キースの態度が豹変して……?

公爵令嬢アナスタシアの華麗なる鉄槌

招杜羅147
ファンタジー
「婚約は破棄だ!」 毒殺容疑の冤罪で、婚約者の手によって投獄された公爵令嬢・アナスタシア。 彼女は獄中死し、それによって3年前に巻き戻る。 そして…。

大聖女の姉と大聖者の兄の元に生まれた良くも悪くも普通の姫君、二人の絞りカスだと影で嘲笑されていたが実は一番神に祝福された存在だと発覚する。

下菊みこと
ファンタジー
絞りカスと言われて傷付き続けた姫君、それでも姉と兄が好きらしい。 ティモールとマルタは父王に詰め寄られる。結界と祝福が弱まっていると。しかしそれは当然だった。本当に神から愛されているのは、大聖女のマルタでも大聖者のティモールでもなく、平凡な妹リリィなのだから。 小説家になろう様でも投稿しています。

処理中です...