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第二章 本当の心
第二十二話 進路
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中等科三年。それは、中等科の最終学年だ。
ケインを片翼だと誤認したままに一年という月日が過ぎて、私は今、どこへ進学しようかと必死に悩んでいた。
「目標、か……」
きっと、普通ならば何らかの目標を立てて、そこへ向かうべく勉強するものなのだろう。私もかつては、そうしていたのだから、目標があるということの強みは十分に理解している。ただし、その目標を見失ったせいで、今の私は、はっきり言って迷子状態だ。
「ミオ姉、今、良い?」
「ケイン? うん、大丈夫だよ」
自室で進路希望の紙と向き合っていると、ケインがやってきて、ドキリとする。それでも、平常心を心がけて対応すれば、ひょっこりとケインが顔を覗かせる。
「やっぱり、ミオ姉、悩んでた」
ケインは、私のすぐ近くまで来て、進路希望の用紙を確認するとそう告げる。
「うん……そうだね。ケインは、どうするか決めた?」
高等部に進学することは私もケインも決定事項として考えているが、どこにするのかはまだ決まっていない。
私に関しては、魔法や剣術関連に力を注いでいる場所は無理だろうと除外しているのだが、それにしても選択肢が多い。
「僕も、考え中。ミオ姉は、何か候補ある?」
「……候補が絞れなくて、まだ駄目。明日が提出期限なのに……」
魔族の国では、高等科からは専門色の強い学校となってくる。前世で言う『大学』や『専門学校』というものと似たような位置づけらしい。そして、魔族の寿命は長いので、いくつもの高等科を受験して、そこの卒業資格を取るということもよくあることだった。
だから、前世のように一つしか選べないのだと神経質になる必要はなく、気楽に興味のあるところへ行けば良いというのがこの国でのスタイルだ。
「……ミオ姉、こことか、ここは?」
そんな中、ケインが示して来たのは、二つの高等科だった。
それは、どちらももの作りに特化した場所であり、『ピッケル学院』は鉱石や魔石を使った細工を学ぶ場所、『ドレッシー学院』はお針子の技術を学べる場所だ。
「ミオ姉、もの作りが好きだし、魔力の有無で出来ないことが少ない分野だと、思う。それに、この国の中でもあるし……」
ケインの言う通り、魔力の量によっては無理だという科も存在する。そして、何よりも、私はもの作りが好きだった。料理も裁縫も、大工仕事も、魔力が少ない分、不便は多くとも、楽しく作っていた。しかし……。
「私がもの作りが好きって、よく知ってたね」
「見てたら、分かるよ」
ケインとは、特にそんな話をしたことはなかったし、出来上がったものを見せたこともない。いずれ、満足のできるものが作れるようになったら、喜んでもらえるだろうかと、ひっそりと作っていたのだから。
「目標、無くても良いんじゃないかな?」
「え?」
と、そこで、私が気にしていたことをケインが切り込む。
「通ってるうちに、目標ができるかもしれない。だから、今はミオ姉のために、ミオ姉の心の赴くままに選べば良いよ」
ケインを片翼だと誤認している私は、ケインと同じ高等科へ進学したいという気持ちと、ケインとは別の技術を身につけて、ケインを支えたいという気持ちが大半を占めている。それでも、私が、私のために選ぶのだとすれば……。
「ありがとう。おかげで、決まりそう」
たとえ、道が分かれたとしても、片翼という誤認をしたままの状態よりはマシなはずだ。
その後、ケインの進路に関しても色々と話しをして、ケインが部屋を出た後、私は、進学先の記入を行った。
ケインを片翼だと誤認したままに一年という月日が過ぎて、私は今、どこへ進学しようかと必死に悩んでいた。
「目標、か……」
きっと、普通ならば何らかの目標を立てて、そこへ向かうべく勉強するものなのだろう。私もかつては、そうしていたのだから、目標があるということの強みは十分に理解している。ただし、その目標を見失ったせいで、今の私は、はっきり言って迷子状態だ。
「ミオ姉、今、良い?」
「ケイン? うん、大丈夫だよ」
自室で進路希望の紙と向き合っていると、ケインがやってきて、ドキリとする。それでも、平常心を心がけて対応すれば、ひょっこりとケインが顔を覗かせる。
「やっぱり、ミオ姉、悩んでた」
ケインは、私のすぐ近くまで来て、進路希望の用紙を確認するとそう告げる。
「うん……そうだね。ケインは、どうするか決めた?」
高等部に進学することは私もケインも決定事項として考えているが、どこにするのかはまだ決まっていない。
私に関しては、魔法や剣術関連に力を注いでいる場所は無理だろうと除外しているのだが、それにしても選択肢が多い。
「僕も、考え中。ミオ姉は、何か候補ある?」
「……候補が絞れなくて、まだ駄目。明日が提出期限なのに……」
魔族の国では、高等科からは専門色の強い学校となってくる。前世で言う『大学』や『専門学校』というものと似たような位置づけらしい。そして、魔族の寿命は長いので、いくつもの高等科を受験して、そこの卒業資格を取るということもよくあることだった。
だから、前世のように一つしか選べないのだと神経質になる必要はなく、気楽に興味のあるところへ行けば良いというのがこの国でのスタイルだ。
「……ミオ姉、こことか、ここは?」
そんな中、ケインが示して来たのは、二つの高等科だった。
それは、どちらももの作りに特化した場所であり、『ピッケル学院』は鉱石や魔石を使った細工を学ぶ場所、『ドレッシー学院』はお針子の技術を学べる場所だ。
「ミオ姉、もの作りが好きだし、魔力の有無で出来ないことが少ない分野だと、思う。それに、この国の中でもあるし……」
ケインの言う通り、魔力の量によっては無理だという科も存在する。そして、何よりも、私はもの作りが好きだった。料理も裁縫も、大工仕事も、魔力が少ない分、不便は多くとも、楽しく作っていた。しかし……。
「私がもの作りが好きって、よく知ってたね」
「見てたら、分かるよ」
ケインとは、特にそんな話をしたことはなかったし、出来上がったものを見せたこともない。いずれ、満足のできるものが作れるようになったら、喜んでもらえるだろうかと、ひっそりと作っていたのだから。
「目標、無くても良いんじゃないかな?」
「え?」
と、そこで、私が気にしていたことをケインが切り込む。
「通ってるうちに、目標ができるかもしれない。だから、今はミオ姉のために、ミオ姉の心の赴くままに選べば良いよ」
ケインを片翼だと誤認している私は、ケインと同じ高等科へ進学したいという気持ちと、ケインとは別の技術を身につけて、ケインを支えたいという気持ちが大半を占めている。それでも、私が、私のために選ぶのだとすれば……。
「ありがとう。おかげで、決まりそう」
たとえ、道が分かれたとしても、片翼という誤認をしたままの状態よりはマシなはずだ。
その後、ケインの進路に関しても色々と話しをして、ケインが部屋を出た後、私は、進学先の記入を行った。
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