15 / 49
第一章 保護されました
第十五話 お見合い当日
しおりを挟む
お見合いの話を承諾してから、はや一週間。その間、ケインからはどうにもお見合いを止めて欲しそうに色々と言われたものの、これだけはどうしても譲れない。それに……。
「よし、それじゃあ行きましょう!」
今日が、そのお見合い当日だった。
できるだけ先方に気に入ってもらえるようにドレスアップして、自室を出ると、何故かそこには、ケインが居た。
「ミオ姉……」
「ケイン?」
また、お見合いをしないで欲しいという話かと思ったものの、ケインの様子はいつもと少し違った。
「ミオ姉、綺麗だよ」
「! ありがとう!」
ケインに褒められて、ようやく、認めてもらえた気になった私は喜んだ。
「今日は、お見合いの席に家族も同席ということで、僕も一緒に行くから、エスコートさせてね」
「そうなの? なら、お願いね」
久々に見るケインの笑顔に、私はホッとしながら馬車に乗り、お見合い会場へと向かう。
お互いが貴族であるため、場所は高級レストランだ。
「……よし、頑張ろう」
『私なら大丈夫』。そんな声が、どこからか聞こえてくるような感覚にそっと目を閉じると、私はレストランへと足を踏み入れた。
多分、好印象……かな?
レストランで相対した人は、穏やかな物腰の紳士的な人だった。魔族は長寿で、三百歳くらいは普通に居るという世界だが、実際に三百歳の魔族を見ても、成人したばかりの二十代から三十代くらいに見える人が多い。
今回会った人も例にもれず、二十代前半くらいの見た目で、とても穏やかな男性魔族だった。
終始、トラブルらしいトラブルもなく、色々なことを質問され、私も色々なことを質問するよう心掛けた。
「では、また後ほど、返事をお送りいたしますので」
「はい、よろしくお願いします」
きっと、このお見合いは問題なく進むだろう。そう、思ったのに……。
「えっ? 断られた?」
「そうだね。やっぱり、片翼への欲求が強くて考えられなかったそうだよ」
「そう、ですか……」
その可能性は、ゼロではないと分かっていた。しかし、ようやく恩返しができると思っていた私を落ち込ませるには十分で、ライト様の前でついつい項垂れてしまう。
「……ミオは、お見合いのお相手のことを気に入っていたのかな?」
「好感の持てる方だとは思いましたが、それだけです。今後、良好な関係を築こうとは思っていましたが、片翼を得るまでの繋ぎだとも思っていたので、それ以上のことは何も」
「そ、そう……」
とても好条件だったのに残念だと示せば、ライト様は何故か戸惑ったような表情を浮かべる。
「……ミオは、自分の片翼には興味なさそうだけど、どう考えてるのかな?」
ただ、その質問でようやく、魔族としてズレた意見を言ったから、ライト様は戸惑ったのではないかと思い至る。
しかし、それならば、私の考えを知ってもらうのにいい機会だろうと思い直し、少しだけ考えを纏めてから、話を始めた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
お知らせです
新作、『黒板の怪談』を本日より投稿しています。
来月から開催の『きずな児童書大賞』に応募すべく書き始めた作品でして、子供でも読める(残酷な描写がない)ホラーを目指して書いています。
良ければ、読んでみてください♪
「よし、それじゃあ行きましょう!」
今日が、そのお見合い当日だった。
できるだけ先方に気に入ってもらえるようにドレスアップして、自室を出ると、何故かそこには、ケインが居た。
「ミオ姉……」
「ケイン?」
また、お見合いをしないで欲しいという話かと思ったものの、ケインの様子はいつもと少し違った。
「ミオ姉、綺麗だよ」
「! ありがとう!」
ケインに褒められて、ようやく、認めてもらえた気になった私は喜んだ。
「今日は、お見合いの席に家族も同席ということで、僕も一緒に行くから、エスコートさせてね」
「そうなの? なら、お願いね」
久々に見るケインの笑顔に、私はホッとしながら馬車に乗り、お見合い会場へと向かう。
お互いが貴族であるため、場所は高級レストランだ。
「……よし、頑張ろう」
『私なら大丈夫』。そんな声が、どこからか聞こえてくるような感覚にそっと目を閉じると、私はレストランへと足を踏み入れた。
多分、好印象……かな?
レストランで相対した人は、穏やかな物腰の紳士的な人だった。魔族は長寿で、三百歳くらいは普通に居るという世界だが、実際に三百歳の魔族を見ても、成人したばかりの二十代から三十代くらいに見える人が多い。
今回会った人も例にもれず、二十代前半くらいの見た目で、とても穏やかな男性魔族だった。
終始、トラブルらしいトラブルもなく、色々なことを質問され、私も色々なことを質問するよう心掛けた。
「では、また後ほど、返事をお送りいたしますので」
「はい、よろしくお願いします」
きっと、このお見合いは問題なく進むだろう。そう、思ったのに……。
「えっ? 断られた?」
「そうだね。やっぱり、片翼への欲求が強くて考えられなかったそうだよ」
「そう、ですか……」
その可能性は、ゼロではないと分かっていた。しかし、ようやく恩返しができると思っていた私を落ち込ませるには十分で、ライト様の前でついつい項垂れてしまう。
「……ミオは、お見合いのお相手のことを気に入っていたのかな?」
「好感の持てる方だとは思いましたが、それだけです。今後、良好な関係を築こうとは思っていましたが、片翼を得るまでの繋ぎだとも思っていたので、それ以上のことは何も」
「そ、そう……」
とても好条件だったのに残念だと示せば、ライト様は何故か戸惑ったような表情を浮かべる。
「……ミオは、自分の片翼には興味なさそうだけど、どう考えてるのかな?」
ただ、その質問でようやく、魔族としてズレた意見を言ったから、ライト様は戸惑ったのではないかと思い至る。
しかし、それならば、私の考えを知ってもらうのにいい機会だろうと思い直し、少しだけ考えを纏めてから、話を始めた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
お知らせです
新作、『黒板の怪談』を本日より投稿しています。
来月から開催の『きずな児童書大賞』に応募すべく書き始めた作品でして、子供でも読める(残酷な描写がない)ホラーを目指して書いています。
良ければ、読んでみてください♪
23
お気に入りに追加
169
あなたにおすすめの小説
王子様、お仕えさせて下さいませ
編端みどり
恋愛
伯爵令嬢のジーナは、本が大好き。ずっと本を読んでいたせいで目が悪くなり、近眼気味。
ある日、兄の職場を訪ねたジーナは図書館らしき場所を見つけて大興奮。兄への届け物も忘れてフラフラと本棚に近づこうとして第二王子を踏んづけてしまう。家が取り潰しされかねない不敬を、第二王子はあっさり許してくれた。
だけど、それを知った王太子はジーナを許さなかった。期限付きで城に留まる事になったジーナは、優しい第二王子に生涯の忠誠を誓う。
みんなに馬鹿にされても、舐められても何も言わなかった第二王子は、ジーナの命を助けたくて今まで逃げていた事に必死で向き合い始めた。全ては、初めて好きになったジーナの為。だけど第二王子を主人として慕うジーナは、王子の気持ちに全く気が付かない。
ジーナと第二王子をくっつけたい王太子の企みをスルーして、ジーナを疑う第三王子の信頼を得て、召喚された聖女と仲良くなり、ジーナの世界はどんどん広がっていく。
どんなにアプローチしても気付かれない可哀想な王子と、少し毒舌で鈍感な伯爵令嬢のラブストーリー。
旦那の真実の愛の相手がやってきた。今まで邪魔をしてしまっていた妻はお祝いにリボンもおつけします
暖夢 由
恋愛
「キュリール様、私カダール様と心から愛し合っておりますの。
いつ子を身ごもってもおかしくはありません。いえ、お腹には既に育っているかもしれません。
子を身ごもってからでは遅いのです。
あんな素晴らしい男性、キュリール様が手放せないのも頷けますが、カダール様のことを想うならどうか潔く身を引いてカダール様の幸せを願ってあげてください」
伯爵家にいきなりやってきた女(ナリッタ)はそういった。
女は小説を読むかのように旦那とのなれそめから今までの話を話した。
妻であるキュリールは彼女の存在を今日まで知らなかった。
だから恥じた。
「こんなにもあの人のことを愛してくださる方がいるのにそれを阻んでいたなんて私はなんて野暮なのかしら。
本当に恥ずかしい…
私は潔く身を引くことにしますわ………」
そう言って女がサインした書類を神殿にもっていくことにする。
「私もあなたたちの真実の愛の前には敵いそうもないもの。
私は急ぎ神殿にこの書類を持っていくわ。
手続きが終わり次第、あの人にあなたの元へ向かうように伝えるわ。
そうだわ、私からお祝いとしていくつか宝石をプレゼントさせて頂きたいの。リボンもお付けしていいかしら。可愛らしいあなたととてもよく合うと思うの」
こうして一つの夫婦の姿が形を変えていく。
---------------------------------------------
※架空のお話です。
※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。
※現実世界とは異なりますのでご理解ください。
【完結】婚約者が好きなのです
maruko
恋愛
リリーベルの婚約者は誰にでも優しいオーラン・ドートル侯爵令息様。
でもそんな優しい婚約者がたった一人に対してだけ何故か冷たい。
冷たくされてるのはアリー・メーキリー侯爵令嬢。
彼の幼馴染だ。
そんなある日。偶然アリー様がこらえきれない涙を流すのを見てしまった。見つめる先には婚約者の姿。
私はどうすればいいのだろうか。
全34話(番外編含む)
※他サイトにも投稿しております
※1話〜4話までは文字数多めです
注)感想欄は全話読んでから閲覧ください(汗)
俺、異世界で置き去りにされました!?
星宮歌
恋愛
学校からの帰宅途中、俺は、突如として現れた魔法陣によって、異世界へと召喚される。
……なぜか、女の姿で。
魔王を討伐すると言い張る、男ども、プラス、一人の女。
何が何だか分からないままに脅されて、俺は、女の演技をしながら魔王討伐の旅に付き添い……魔王を討伐した直後、その場に置き去りにされるのだった。
片翼シリーズ第三弾。
今回の舞台は、ヴァイラン魔国です。
転性ものですよ~。
そして、この作品だけでも読めるようになっております。
それでは、どうぞ!
婚約破棄されたので、契約不履行により、秘密を明かします
tartan321
恋愛
婚約はある種の口止めだった。
だが、その婚約が破棄されてしまった以上、効力はない。しかも、婚約者は、悪役令嬢のスーザンだったのだ。
「へへへ、全部話しちゃいますか!!!」
悪役令嬢っぷりを発揮します!!!
無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました
結城芙由奈
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから――
※ 他サイトでも投稿中
異世界で王城生活~陛下の隣で~
遥
恋愛
女子大生の友梨香はキャンピングカーで一人旅の途中にトラックと衝突して、谷底へ転落し死亡した。けれど、気が付けば異世界に車ごと飛ばされ王城に落ちていた。神様の計らいでキャンピングカーの内部は電気も食料も永久に賄えるられる事になった。
グランティア王国の人達は異世界人の友梨香を客人として迎え入れてくれて。なぜか保護者となった国陛下シリウスはやたらと構ってくる。一度死んだ命だもん、これからは楽しく生きさせて頂きます!
※キャンピングカー、魔石効果などなどご都合主義です。
※のんびり更新。他サイトにも投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる