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第一章 保護されました

第十五話 お見合い当日

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 お見合いの話を承諾してから、はや一週間。その間、ケインからはどうにもお見合いを止めて欲しそうに色々と言われたものの、これだけはどうしても譲れない。それに……。


「よし、それじゃあ行きましょう!」


 今日が、そのお見合い当日だった。

 できるだけ先方に気に入ってもらえるようにドレスアップして、自室を出ると、何故かそこには、ケインが居た。


「ミオ姉……」

「ケイン?」


 また、お見合いをしないで欲しいという話かと思ったものの、ケインの様子はいつもと少し違った。


「ミオ姉、綺麗だよ」

「! ありがとう!」


 ケインに褒められて、ようやく、認めてもらえた気になった私は喜んだ。


「今日は、お見合いの席に家族も同席ということで、僕も一緒に行くから、エスコートさせてね」

「そうなの? なら、お願いね」


 久々に見るケインの笑顔に、私はホッとしながら馬車に乗り、お見合い会場へと向かう。
 お互いが貴族であるため、場所は高級レストランだ。


「……よし、頑張ろう」


 『私なら大丈夫』。そんな声が、どこからか聞こえてくるような感覚にそっと目を閉じると、私はレストランへと足を踏み入れた。








 多分、好印象……かな?


 レストランで相対した人は、穏やかな物腰の紳士的な人だった。魔族は長寿で、三百歳くらいは普通に居るという世界だが、実際に三百歳の魔族を見ても、成人したばかりの二十代から三十代くらいに見える人が多い。
 今回会った人も例にもれず、二十代前半くらいの見た目で、とても穏やかな男性魔族だった。

 終始、トラブルらしいトラブルもなく、色々なことを質問され、私も色々なことを質問するよう心掛けた。


「では、また後ほど、返事をお送りいたしますので」

「はい、よろしくお願いします」


 きっと、このお見合いは問題なく進むだろう。そう、思ったのに……。




「えっ? 断られた?」

「そうだね。やっぱり、片翼への欲求が強くて考えられなかったそうだよ」

「そう、ですか……」


 その可能性は、ゼロではないと分かっていた。しかし、ようやく恩返しができると思っていた私を落ち込ませるには十分で、ライト様の前でついつい項垂れてしまう。


「……ミオは、お見合いのお相手のことを気に入っていたのかな?」

「好感の持てる方だとは思いましたが、それだけです。今後、良好な関係を築こうとは思っていましたが、片翼を得るまでの繋ぎだとも思っていたので、それ以上のことは何も」

「そ、そう……」


 とても好条件だったのに残念だと示せば、ライト様は何故か戸惑ったような表情を浮かべる。


「……ミオは、自分の片翼には興味なさそうだけど、どう考えてるのかな?」


 ただ、その質問でようやく、魔族としてズレた意見を言ったから、ライト様は戸惑ったのではないかと思い至る。
 しかし、それならば、私の考えを知ってもらうのにいい機会だろうと思い直し、少しだけ考えを纏めてから、話を始めた。



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 お知らせです

 新作、『黒板の怪談』を本日より投稿しています。

 来月から開催の『きずな児童書大賞』に応募すべく書き始めた作品でして、子供でも読める(残酷な描写がない)ホラーを目指して書いています。

 良ければ、読んでみてください♪
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