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第一章 保護されました
第十四話 岐路(ケイン視点)
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「失礼します」
父上の執務室へと入室すれば、父上はすぐに僕へと向き合ってくれる。
「どうぞ。それで、今訪ねてきた理由は恐らく、ミオのお見合いについてだね」
勧められた椅子へと座れば、早速とばかりに本題を提示してくる。
「はい。どうして、ミオ姉にお見合いの申込みがあったのか、そして、どうして、ミオ姉はあんなにも前向きなのか、とにかく聞きたいことが多いのですが、ひとまずはこの辺りの内容を教えていただけないかと思い、伺いました」
本当は、聞きたいこと以上に、とにかくミオをどこの馬の骨ともしれない男に会わせたくないと、直談判したいところだ。しかし、それは一応の事情を聞いた後にするべきだ。そうでなければ、何を間違うか分からない。
「なるほど、まず、一つ目の質問だけど、先方は片翼を諦めきれずにいる三百歳を超えた方だ。そして、かの方は、どうしても昇進のために身を固める必要がある。だから、契約結婚の相手として、片翼を諦めた者か、片翼を察知できない者を求めたそうだ」
「っ、では、ミオ姉を特別に求めたというわけではないのですね!」
「ただ、先方の方が地位も権力も、全てが上だ」
「っ……」
それはつまり、こちらから断ることは実質的に不可能だということ。
たとえ、契約結婚だとしても、片翼を諦められない魔族というのは、片翼以外と結婚したという事実に耐えられないことがある。そして、その場合、高確率で契約結婚の相手を殺害してしまう。
「つまりは、家のために、ミオ姉を差し出す、と?」
「いや、違う」
もしそうなら、父上だろうとも容赦はしない。そう告げようとしたところで、父上は即座に否定する。
「本来ならば、断れないような話だが、唯一、ミオ本人の意思で拒否するのであれば諦めるとだけ言われていた。だから、ミオさえ拒否してくれれば、何も問題は無かったんだよ……」
そう項垂れる父上は、まさかミオが本当にその見合いを受けるとは思わなかったのだろう。
「……ミオ姉は、なんで、あんなに見合いに前向きなんですか? メリットなんて、ミオ姉には何一つ無いじゃないですか」
契約結婚の末に得られるのは、ミオ本人にかかわるものではなく、僕達家族への利益のみだ。つまりは、普通は断るだろう話なのだ。
「僕達も、考えてはみたんだけど分からない。確かに、ミオは魔族らしくはないと思えるところもあるけど、まさか片翼への憧れが欠片もないとは思わなかったんだ」
その言葉で、僕は予想が正しかったことを知る。しかし、そうなると余計に、ミオを引き留めることが難しくなる。ただし……。
「……父上、もし、ミオ姉の片翼が魔族で、そんな契約結婚は認めないと乗り込んだ場合はどうなりますか?」
そう言えば、父上はジッと僕を見て、そっと口を開く。
「その時は、ミオの気持ち次第だろうな」
結局のところ、ミオがその意志を変えない限り、望みは薄いのだろう。
人生の岐路というものがあるのであれば、今、僕の状態こそが、人生の岐路に立たされた状態だった。
父上の執務室へと入室すれば、父上はすぐに僕へと向き合ってくれる。
「どうぞ。それで、今訪ねてきた理由は恐らく、ミオのお見合いについてだね」
勧められた椅子へと座れば、早速とばかりに本題を提示してくる。
「はい。どうして、ミオ姉にお見合いの申込みがあったのか、そして、どうして、ミオ姉はあんなにも前向きなのか、とにかく聞きたいことが多いのですが、ひとまずはこの辺りの内容を教えていただけないかと思い、伺いました」
本当は、聞きたいこと以上に、とにかくミオをどこの馬の骨ともしれない男に会わせたくないと、直談判したいところだ。しかし、それは一応の事情を聞いた後にするべきだ。そうでなければ、何を間違うか分からない。
「なるほど、まず、一つ目の質問だけど、先方は片翼を諦めきれずにいる三百歳を超えた方だ。そして、かの方は、どうしても昇進のために身を固める必要がある。だから、契約結婚の相手として、片翼を諦めた者か、片翼を察知できない者を求めたそうだ」
「っ、では、ミオ姉を特別に求めたというわけではないのですね!」
「ただ、先方の方が地位も権力も、全てが上だ」
「っ……」
それはつまり、こちらから断ることは実質的に不可能だということ。
たとえ、契約結婚だとしても、片翼を諦められない魔族というのは、片翼以外と結婚したという事実に耐えられないことがある。そして、その場合、高確率で契約結婚の相手を殺害してしまう。
「つまりは、家のために、ミオ姉を差し出す、と?」
「いや、違う」
もしそうなら、父上だろうとも容赦はしない。そう告げようとしたところで、父上は即座に否定する。
「本来ならば、断れないような話だが、唯一、ミオ本人の意思で拒否するのであれば諦めるとだけ言われていた。だから、ミオさえ拒否してくれれば、何も問題は無かったんだよ……」
そう項垂れる父上は、まさかミオが本当にその見合いを受けるとは思わなかったのだろう。
「……ミオ姉は、なんで、あんなに見合いに前向きなんですか? メリットなんて、ミオ姉には何一つ無いじゃないですか」
契約結婚の末に得られるのは、ミオ本人にかかわるものではなく、僕達家族への利益のみだ。つまりは、普通は断るだろう話なのだ。
「僕達も、考えてはみたんだけど分からない。確かに、ミオは魔族らしくはないと思えるところもあるけど、まさか片翼への憧れが欠片もないとは思わなかったんだ」
その言葉で、僕は予想が正しかったことを知る。しかし、そうなると余計に、ミオを引き留めることが難しくなる。ただし……。
「……父上、もし、ミオ姉の片翼が魔族で、そんな契約結婚は認めないと乗り込んだ場合はどうなりますか?」
そう言えば、父上はジッと僕を見て、そっと口を開く。
「その時は、ミオの気持ち次第だろうな」
結局のところ、ミオがその意志を変えない限り、望みは薄いのだろう。
人生の岐路というものがあるのであれば、今、僕の状態こそが、人生の岐路に立たされた状態だった。
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