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第一章 保護されました

第十三話 僕の大切な……(ケイン視点)

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 生まれた時から、僕にとってとても特別な人が身近に居た。その人は、血の繋がりという点で見れば、父上の妹、という立場だったが、父上と母上が引き取って養子にしたため、僕にとっては姉という立場だ。
 生まれたその瞬間から、僕は、この人に会うために生まれてきたのだと感じ取った記憶がある。

 それから八年。僕は、大切な大切な姉のため。大切な大切な片翼のため、必死に勉強した。同じ学年にまで昇りつめられたら、魔族としての力が弱い片翼を守れると思った。
 例え、姉に片翼を見つける力がないのだとしても、それでも、僕が守って、少しずつでも成長して、意識してもらえるようにしようと思っていた。


「お見、合い……?」


 それが、あまりにも悠長な考えだと知ったのは、そんな話が出てからだった。


「どう、して……」


 姉に、僕の片翼に、自分の片翼を判別する能力がないことは、前から分かっていた。それでも、安穏としていられたのは、僕の片翼が、ミオが、ずっと側に居てくれたからだ。
 僕は、心のどこかでこう思っていたのかもしれない。きっと、ミオは僕のことを特別に想ってくれている、と。片翼を見つける能力がないということを、分かっているつもりで分かっていなかった。ミオが、完全に僕を幼い弟としてしか見ていないことを理解できていなかった。
 後悔と焦燥が襲い掛かる中、意味もなくミオの元へと向かって、全く僕のことを意識していないということを改めて自覚させられ、冷静になるために自室へと戻ったのがつい先程のこと。


「お見合い、なんて、ダメだ。ミオ姉は、ミオは、僕の……」


 どうにかして、お見合いの話はなかったことにしたい。しかし、強引に話を断った場合、ミオはそのことを気に病むだろう。

 じっと、自分の手を見下ろせば、そこにはまだまだ子供の小さな手しかない。
 魔族は片翼同士ならばどんな年の差も気にしない傾向にはあるものの、それでも幼い魔族と成熟した魔族の婚姻は認められない。少なくとも、十五歳になるまでは、結婚まで進むことはできない。


「八歳……」


 年の差を気にしたことがなかったかと問われると、そんなことはない。むしろ、ミオと同じ年齢か、それより上であれば良かったのにと、何度思ったことか。しかし、今ほどそれを強く思ったことはなかったように思える。

 しばらく、ジッと自分の手を睨んで、僕はようやく、立ち上がる。


「まずは、父上に直談判だね」


 一人で解決できないという情けなさはあるものの、それでもミオがどこの馬の骨ともしれない男に盗られるよりはマシだ。それに……。


「ミオ姉は、片翼への憧れもないの、かな?」


 どうにも、お見合いへの意気込みが、他の魔族とは違う。
 まだ片翼を見つけていない魔族であれば、片翼かもしれないと期待をするし、ミオのように片翼を見つける力がない魔族であっても、自分は分からずとも、相手が片翼だと認識してくれるかもしれないと期待するものだ。

 ミオが昔、虐待されていて、それを僕の両親が引き取ったという話は、つい最近になってようやく掴めた情報だ。しかし、まだ詳しい情報はない。あくまでも、ミオがこの家に来た経緯だけだ。
 もしかしたら、父上なら何か話してくれるかもしれない。そう思って、僕は父上がどこに居るのかを執事に確認して、執務室へと向かった。
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