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第一章 保護されました
第九話 救いの手
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「っ!」
魔法も剣術も、魔族としての平均に全く届かない私では、きっとこれらを回避することも、防ぎ切ることもできない。しかし、急所だけは守ることが出来る。
咄嗟に、当たれば死ぬだろう場所だけに結界を張った私は、衝撃に備えて……。
「えっ!?」
私に攻撃が届くその寸前、炎の矢は全て、ボシュッという音とともに掻き消える。
「何が……」
なぜ、攻撃が止んだのか分からない。しかし、それは相手の方も同じだったようで、困惑した表情を浮べ……。
「何、してるの?」
耳慣れた声がした、と思った直後、私の前に居た女の子達は後ろを振り向き、『ヒッ』と短い悲鳴を上げてへたり込む。
そして、彼女達がへたり込んだことで、私もその姿をようやく確認することができた。
「ケイン?」
「ミオ姉、怪我はない?」
なぜ、ケインがここに、とは思うものの、その言葉で、私はケインに助けてもらったのだろうと思い至る。
「大丈夫。助けてくれて、ありがとう」
「……無事なら、良かった。けど、後で治癒魔法はかけさせて」
心配性だな、とは思うもののケインは私が魔力をほとんど持たないことも、体力が一般的な人間並みから成長しないことも知っている。
「そうね、今のところ、特に怪我はないと思ってるけど、ありがとう」
しっかりと自覚できる怪我がないことを伝えて、お礼を言えば、ケインの目が少しだけの安心したそれに変わる。
「ところで、こいつら、何?」
ただし、彼女達へ向ける目は、とても冷たい。いや、それどころか、無表情に見えることも相まって、絶対零度の視線と言えるものとなっている。
「それが、私にも良く分からなくて……。人違いかもと思ったのだけど、それを聞く前に、その……」
「へぇ? ……ねぇ、何で、ミオ姉を攻撃したの? あの攻撃、ミオ姉だったら死んででもおかしくなかったんだけど?」
私が、一般的な魔族であれば、あのくらいの攻撃で死ぬことはなかっただろうとは思う。そして、彼女達は私がそんなに弱いことを知るはずもなく……。
「っ、あ、挨拶よっ! あの程度で死ぬなんて、あり得ないでしょう!? そもそも、その女が私のことを知らないのが問題なのよっ!」
「ねぇ、分かってないようだけど、君達はこれから、殺人未遂で連行されることになる。ミオ姉は、幼い頃に罹った病気の後遺症で、魔力はほとんどないし、体力も一般的な人間並みくらいまでしかつけられない。そんなミオ姉にあんな攻撃を向けて、生きていられると思うの?」
私が止める間もなく、ケインは私の状態を話してしまった。しかし、確かに、彼女達は殺人未遂の罪人になってしまうのも理解できるため、理由を伝える必要はあったのかもしれないと、ケインを止めようとする自分を押し留める。
「え……?」
「うそ……」
「殺人、未遂……?」
「さっき、挨拶って言ったよね? それに、君達はミオ姉のことを知ってる風でもあった。それで、知らなかったは通らないから、そのつもりで」
殺意はなかった、という言い分を綺麗に塞ごうとするケイン。しかし……。
「ケイン、私は、先生方にはこの体のことを伝えてるけど、他には伝えてないの。だから、彼女達も知らなかったはずよ。そもそも、私も彼女達と話したのは今日が初めてだし」
さすがにそこまで逃げ道を塞ぐつもりはない。もしかしたら、本当に、普通の魔族であれば挨拶で済んだものなのかもしれないのだし。
「ミオ姉、あれが挨拶とか、普通の魔族同士でもあり得ないからね?」
「あれ? 声に出してた?」
「顔を見れば分かるから」
どこか呆れた様子のケインは、一つため息を吐くと、もう一度、彼女達へ絶対零度の視線を注いだ。
魔法も剣術も、魔族としての平均に全く届かない私では、きっとこれらを回避することも、防ぎ切ることもできない。しかし、急所だけは守ることが出来る。
咄嗟に、当たれば死ぬだろう場所だけに結界を張った私は、衝撃に備えて……。
「えっ!?」
私に攻撃が届くその寸前、炎の矢は全て、ボシュッという音とともに掻き消える。
「何が……」
なぜ、攻撃が止んだのか分からない。しかし、それは相手の方も同じだったようで、困惑した表情を浮べ……。
「何、してるの?」
耳慣れた声がした、と思った直後、私の前に居た女の子達は後ろを振り向き、『ヒッ』と短い悲鳴を上げてへたり込む。
そして、彼女達がへたり込んだことで、私もその姿をようやく確認することができた。
「ケイン?」
「ミオ姉、怪我はない?」
なぜ、ケインがここに、とは思うものの、その言葉で、私はケインに助けてもらったのだろうと思い至る。
「大丈夫。助けてくれて、ありがとう」
「……無事なら、良かった。けど、後で治癒魔法はかけさせて」
心配性だな、とは思うもののケインは私が魔力をほとんど持たないことも、体力が一般的な人間並みから成長しないことも知っている。
「そうね、今のところ、特に怪我はないと思ってるけど、ありがとう」
しっかりと自覚できる怪我がないことを伝えて、お礼を言えば、ケインの目が少しだけの安心したそれに変わる。
「ところで、こいつら、何?」
ただし、彼女達へ向ける目は、とても冷たい。いや、それどころか、無表情に見えることも相まって、絶対零度の視線と言えるものとなっている。
「それが、私にも良く分からなくて……。人違いかもと思ったのだけど、それを聞く前に、その……」
「へぇ? ……ねぇ、何で、ミオ姉を攻撃したの? あの攻撃、ミオ姉だったら死んででもおかしくなかったんだけど?」
私が、一般的な魔族であれば、あのくらいの攻撃で死ぬことはなかっただろうとは思う。そして、彼女達は私がそんなに弱いことを知るはずもなく……。
「っ、あ、挨拶よっ! あの程度で死ぬなんて、あり得ないでしょう!? そもそも、その女が私のことを知らないのが問題なのよっ!」
「ねぇ、分かってないようだけど、君達はこれから、殺人未遂で連行されることになる。ミオ姉は、幼い頃に罹った病気の後遺症で、魔力はほとんどないし、体力も一般的な人間並みくらいまでしかつけられない。そんなミオ姉にあんな攻撃を向けて、生きていられると思うの?」
私が止める間もなく、ケインは私の状態を話してしまった。しかし、確かに、彼女達は殺人未遂の罪人になってしまうのも理解できるため、理由を伝える必要はあったのかもしれないと、ケインを止めようとする自分を押し留める。
「え……?」
「うそ……」
「殺人、未遂……?」
「さっき、挨拶って言ったよね? それに、君達はミオ姉のことを知ってる風でもあった。それで、知らなかったは通らないから、そのつもりで」
殺意はなかった、という言い分を綺麗に塞ごうとするケイン。しかし……。
「ケイン、私は、先生方にはこの体のことを伝えてるけど、他には伝えてないの。だから、彼女達も知らなかったはずよ。そもそも、私も彼女達と話したのは今日が初めてだし」
さすがにそこまで逃げ道を塞ぐつもりはない。もしかしたら、本当に、普通の魔族であれば挨拶で済んだものなのかもしれないのだし。
「ミオ姉、あれが挨拶とか、普通の魔族同士でもあり得ないからね?」
「あれ? 声に出してた?」
「顔を見れば分かるから」
どこか呆れた様子のケインは、一つため息を吐くと、もう一度、彼女達へ絶対零度の視線を注いだ。
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