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第一章 保護されました
第八話 言いがかり?
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「ねぇ、ちょっと、あなた、目障りなんだけど?」
魔族が通う学園では、魔族が片翼のために勉学へ励み、精神的にも成長しようと足掻くため、虐めのようなものは滅多に起きない。しかし、片翼への憧れのために必死になる魔族も居れば、そうでもない魔族も居る。
そんな、片翼への執着をまだ持ち合わせていない魔族達から、不幸にも目を付けられたのは……私だった。
「えっと……」
目を付けられた理由は、至ってシンプル。私が、あからさまに弱かったからだ。
周りから見れば、私自身が努力していないように見える。それは、十分に承知しているつもりだったが、それは『つもり』なだけのようだった。
「弱いくせに努力もしない魔族の恥晒し。ねぇ、消えてくれない?」
クスクスと笑う私よりも年下の魔族の女の子達。とはいえ、早熟な魔族という種として見れば、こうした物言いも不思議ではない。
どうしよう……。
彼女達は、ただ鬱憤を晴らしたいだけなのか、それとも何か目的があるのか、それすらも不明だ。しかし、私としては年下の彼女達と争いたくはない。もちろん、ロットール家の家名に泥を塗るような真似はもっとしたくない。
「カレン様が話しかけてるのに、何も言わないなんて、どういうつもり?」
「カレン様を無視するなんて、いい度胸ね?」
何を言うべきか悩んでいると、最初に話しかけてきた女の子のサイドに居た二人の女の子がそう詰ってくる。
その様子に、私は観念して、考えていたこど話すことにする。
「無視、というか、私達、初対面ですよね? だから、なぜ、そんなことを言われなければならないのか、全く分からないので、考えていたんです」
「なっ……私のことを覚えていないとでも!?」
「あれ? 初対面ではありませんでしたか??」
ただ、どうやら私は、間違ったらしい。しかし、どんなに思い返してみても、彼女と会った記憶も話した記憶もない。恐らくは、クラスが違う……下手をしたら学年まで違うかもしれない相手なのだ。これで分かれという方が無理だろう。
カレンと呼ばれた少女は、私の言葉に顔を真っ赤にする。そして、カレンのお友達らしき二人は、頬を引き攣らせて一歩後退る。
「そう、そう、なのね。いつもいつもいつもいつも、一度たりとも、私を見たことはない、と」
「その……同じクラスの子なら、一応覚えてはいるのだけど……」
ユラリ、と魔力が揺れる感覚に、本能的に逃げ場を探すものの、残念ながら、彼女達が居る辺りが教室の出入り口で、私達以外に人は居ない。
「カ、カレン様? さすがにそれは、不味い、かと……」
「そ、そうそう、今日は、警告だけのはず、ですよ、ね?」
「警告? いいえ、そんな程度で済ますつもりはないわ。ここまで馬鹿にされて、引き下がれるほどプライドは低くないの」
馬鹿にしたつもりは欠片もない。しかし、それを弁明したところでどうにもならないだろうことは理解できる。
そうこうしているうちに、彼女の周囲に大量の炎の矢が出来上がる。
「挨拶代わりよ」
そう告げられた直後、炎の矢は、私へと襲いかかった。
魔族が通う学園では、魔族が片翼のために勉学へ励み、精神的にも成長しようと足掻くため、虐めのようなものは滅多に起きない。しかし、片翼への憧れのために必死になる魔族も居れば、そうでもない魔族も居る。
そんな、片翼への執着をまだ持ち合わせていない魔族達から、不幸にも目を付けられたのは……私だった。
「えっと……」
目を付けられた理由は、至ってシンプル。私が、あからさまに弱かったからだ。
周りから見れば、私自身が努力していないように見える。それは、十分に承知しているつもりだったが、それは『つもり』なだけのようだった。
「弱いくせに努力もしない魔族の恥晒し。ねぇ、消えてくれない?」
クスクスと笑う私よりも年下の魔族の女の子達。とはいえ、早熟な魔族という種として見れば、こうした物言いも不思議ではない。
どうしよう……。
彼女達は、ただ鬱憤を晴らしたいだけなのか、それとも何か目的があるのか、それすらも不明だ。しかし、私としては年下の彼女達と争いたくはない。もちろん、ロットール家の家名に泥を塗るような真似はもっとしたくない。
「カレン様が話しかけてるのに、何も言わないなんて、どういうつもり?」
「カレン様を無視するなんて、いい度胸ね?」
何を言うべきか悩んでいると、最初に話しかけてきた女の子のサイドに居た二人の女の子がそう詰ってくる。
その様子に、私は観念して、考えていたこど話すことにする。
「無視、というか、私達、初対面ですよね? だから、なぜ、そんなことを言われなければならないのか、全く分からないので、考えていたんです」
「なっ……私のことを覚えていないとでも!?」
「あれ? 初対面ではありませんでしたか??」
ただ、どうやら私は、間違ったらしい。しかし、どんなに思い返してみても、彼女と会った記憶も話した記憶もない。恐らくは、クラスが違う……下手をしたら学年まで違うかもしれない相手なのだ。これで分かれという方が無理だろう。
カレンと呼ばれた少女は、私の言葉に顔を真っ赤にする。そして、カレンのお友達らしき二人は、頬を引き攣らせて一歩後退る。
「そう、そう、なのね。いつもいつもいつもいつも、一度たりとも、私を見たことはない、と」
「その……同じクラスの子なら、一応覚えてはいるのだけど……」
ユラリ、と魔力が揺れる感覚に、本能的に逃げ場を探すものの、残念ながら、彼女達が居る辺りが教室の出入り口で、私達以外に人は居ない。
「カ、カレン様? さすがにそれは、不味い、かと……」
「そ、そうそう、今日は、警告だけのはず、ですよ、ね?」
「警告? いいえ、そんな程度で済ますつもりはないわ。ここまで馬鹿にされて、引き下がれるほどプライドは低くないの」
馬鹿にしたつもりは欠片もない。しかし、それを弁明したところでどうにもならないだろうことは理解できる。
そうこうしているうちに、彼女の周囲に大量の炎の矢が出来上がる。
「挨拶代わりよ」
そう告げられた直後、炎の矢は、私へと襲いかかった。
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