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第一章 保護されました
第五話 三人姉弟
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「ミオねー!」
「ルキ、どうしたの?」
「ケーにーがいじめたーっ」
「そんなことない。ルキが勉強の邪魔してきただけ」
オリアナ様とライト様の娘となってからはや七年、お二人の間にはケインとルキウスという名前の二人の男の子が生まれていた。
ケインは、私が養子になった一年後に生まれて、ルキウスはそこからさらに二年後に生まれている。魔族の家庭において、ここまで早く二人も授かるのは珍しいことではあるものの、全くない話でもない。
ケイン五歳、ルキウス三歳、そして、私はというと、十七歳になっている。
「ルキは、どうしてケインの勉強の邪魔をしちゃったのかな?」
「う……だって、ケーにー、あそんでくれないっ」
ケインもルキウスもオリアナ様に似たラピスラズリの髪色で、瞳はケインの方は右がラピスラズリ、左がアクアマリンのような色のオッドアイで、ルキウスはどちらもラピスラズリ色だ。
顔立ちに関しては、ケインはオリアナ様似、ルキウスはライト様似で、私にとっては二人共可愛い弟だ。ただ……。
「遊ぶより、僕は僕の片翼のために勉強する」
昔は私にベッタリだったケインは、なぜか最近、片翼のために勉強するのだと宣言して実行している。
片翼とは、魔族にとってかけがえのないたった一人の人生のパートナーだ。本能的に片翼を見つけられる能力を持つ魔族は、そのたった一人のためならばどんなことでも成し遂げることができるとされている。
実際、魔族がエリート集団として見られるのは、『片翼のためにっ!』と精進し続けた結果だったりもする。
ただ、私は、元々患っていた魔力逆流症の後遺症なのか、様々な虐待の結果なのか、真偽は不明だが、片翼を察知する能力が完全に欠けてしまった魔族だ。だから、片翼に対する執着というものがよく分からない。
それよりも、ケインが姉離れをしてしまったことが少し寂しく感じられる。
「そっか、ケインの片翼はどんな人だろうね? でも、ルキウスにも少しは構ってあげようね」
そう言えば、ケインは私をジッと見つめた後、コクリと頷く。
「ミオ姉が、そう言うなら」
昔から、ケインは私の言葉に逆らうことがない。むしろ、下手をしたらオリアナ様やライト様よりも私の方が好かれている可能性すらある。
ケインが赤ちゃんの頃、オリアナ様やライト様相手では泣き止まなかった時でも、私が近づくだけでご機嫌になっていたこともある。
「それじゃあ、お互い、ごめんなさいしようか」
「構ってあげられなくて、ごめん」
「うー……」
「ルキ?」
「……おべんきょう、じゃまして、ごめんなさい」
基本的には仲の良い兄弟だ。こうして、お互い謝罪をしておけば、禍根を残すことなく、また仲良く遊べる。
私は、オリアナ様やライト様の本当の子供ではないものの、彼らと過ごす家族としての時間に偽りはない。
この時の私は、まだ気づいていなかった。ケインが私を見る目には、熱が籠もっている、ということを……。
「ルキ、どうしたの?」
「ケーにーがいじめたーっ」
「そんなことない。ルキが勉強の邪魔してきただけ」
オリアナ様とライト様の娘となってからはや七年、お二人の間にはケインとルキウスという名前の二人の男の子が生まれていた。
ケインは、私が養子になった一年後に生まれて、ルキウスはそこからさらに二年後に生まれている。魔族の家庭において、ここまで早く二人も授かるのは珍しいことではあるものの、全くない話でもない。
ケイン五歳、ルキウス三歳、そして、私はというと、十七歳になっている。
「ルキは、どうしてケインの勉強の邪魔をしちゃったのかな?」
「う……だって、ケーにー、あそんでくれないっ」
ケインもルキウスもオリアナ様に似たラピスラズリの髪色で、瞳はケインの方は右がラピスラズリ、左がアクアマリンのような色のオッドアイで、ルキウスはどちらもラピスラズリ色だ。
顔立ちに関しては、ケインはオリアナ様似、ルキウスはライト様似で、私にとっては二人共可愛い弟だ。ただ……。
「遊ぶより、僕は僕の片翼のために勉強する」
昔は私にベッタリだったケインは、なぜか最近、片翼のために勉強するのだと宣言して実行している。
片翼とは、魔族にとってかけがえのないたった一人の人生のパートナーだ。本能的に片翼を見つけられる能力を持つ魔族は、そのたった一人のためならばどんなことでも成し遂げることができるとされている。
実際、魔族がエリート集団として見られるのは、『片翼のためにっ!』と精進し続けた結果だったりもする。
ただ、私は、元々患っていた魔力逆流症の後遺症なのか、様々な虐待の結果なのか、真偽は不明だが、片翼を察知する能力が完全に欠けてしまった魔族だ。だから、片翼に対する執着というものがよく分からない。
それよりも、ケインが姉離れをしてしまったことが少し寂しく感じられる。
「そっか、ケインの片翼はどんな人だろうね? でも、ルキウスにも少しは構ってあげようね」
そう言えば、ケインは私をジッと見つめた後、コクリと頷く。
「ミオ姉が、そう言うなら」
昔から、ケインは私の言葉に逆らうことがない。むしろ、下手をしたらオリアナ様やライト様よりも私の方が好かれている可能性すらある。
ケインが赤ちゃんの頃、オリアナ様やライト様相手では泣き止まなかった時でも、私が近づくだけでご機嫌になっていたこともある。
「それじゃあ、お互い、ごめんなさいしようか」
「構ってあげられなくて、ごめん」
「うー……」
「ルキ?」
「……おべんきょう、じゃまして、ごめんなさい」
基本的には仲の良い兄弟だ。こうして、お互い謝罪をしておけば、禍根を残すことなく、また仲良く遊べる。
私は、オリアナ様やライト様の本当の子供ではないものの、彼らと過ごす家族としての時間に偽りはない。
この時の私は、まだ気づいていなかった。ケインが私を見る目には、熱が籠もっている、ということを……。
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