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第二章 どうして今更……
第十四話 お嬢様
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「なぜ? さっきも言った通り、僕はハリオール家を継ぐつもりは全く無いし、お嬢様とやらもどうでも良いんです。むしろ、そこまでお嬢様を想うというのであれば、あなたが養子に迎えるなりすれば良いことでしょう?」
「っ、それ、は……」
恨めしげに睨む執事は、どうやら自覚がないらしい。
「それとも、僕に頼れば何とかしてもらえる、と? してもらうことが当然だとでも?」
「っ、ライト様は、ハリオール家の直系なのですから、それは当然のことではありませんか!!」
とうとう逆ギレを起こした執事。その姿はあまりにも醜悪で、自分が何を言ったのか、まるで分かっていないようだった。
「つまり、ハリオール家の当主から虐げられたライトさんは、ハリオール家の直系として、ライトさんが虐げられる原因の一つでもあったお嬢様を守ってくれると、本気で言ってます? しかも、あなた本人は動こうとしないまま?」
「なっ! 私はっ、お嬢様のことを想っているからこそ、こうして頼んでいるのです!」
「……オリアナ様、どうやら話が通じない相手のようですので、もう、帰りましょう」
そう、話が通じない。執事は、自分が何を言っているのか、全く分かっていないのだから。
普通であれば、自分の命を狙ってきた相手の子どもなど、受け入れられるわけがない。万が一、受け入れざるを得なかったとしても、まともに接することができるかと問われれば、『否』としか言えない。
執事の身分であれば、そのお嬢様を養子に迎えることは難しくもないはずだ。
しかし、執事がそれをしないのは、面倒事を抱えたくないからか、平民となるお嬢様の側に居たくないのか……ともかく、まともな理由とは思えない。
未だに色々と喚く執事を横目に、私達は、席を立とうとして……すぐに、その気配に気づいた。
「だれ……?」
幼い声が、部屋に響く。
「っ、お嬢様!? なぜ、こちらに!?」
そういえば、ここはハリオール家の本邸だったなと思いながら、おずおずと出てきた彼女を観察する。
ライトさんと同じ、茶髪に青い瞳を持つ、幼い少女。しかし、大切にされていたにしては、随分と痩せており、どこか怯えているようにも見える。着ているものも、ハリオール家という家に相応しいと言えるようなものではなく、そこら辺の平民の方がまだマシと言えるほどにくたびれた衣装だった。そして、何よりも……。
「その、傷は……?」
包帯を巻いてはいるものの、それは、自分で巻いたものなのか、ところどころ解け、両腕の細かい傷跡を晒していた。
アバルの声にビクリと縮こまり、ライトさんの問いかけに怯える少女。
どう見ても、大切に育てられたお嬢様には見えなかった。むしろ、これは、虐待されている少女だろう。
「オリアナ様」
「えぇ、そうですね。今、連絡を入れました」
これは、騎士に知らせるべき案件だと判断して、私はすぐに、一筆認めて、それを魔法で飛ばす。行き先は……ちょっとした嫌がらせもかねて、宰相閣下だ。
「っ、何をしたんですか!?」
「特に何も? ただ、必要な連絡をしただけです。虐待を疑われる少女が居る、とね」
そう告げれば、アバルは青ざめ、何を思ったのか、言い訳を始めた。
「っ、それ、は……」
恨めしげに睨む執事は、どうやら自覚がないらしい。
「それとも、僕に頼れば何とかしてもらえる、と? してもらうことが当然だとでも?」
「っ、ライト様は、ハリオール家の直系なのですから、それは当然のことではありませんか!!」
とうとう逆ギレを起こした執事。その姿はあまりにも醜悪で、自分が何を言ったのか、まるで分かっていないようだった。
「つまり、ハリオール家の当主から虐げられたライトさんは、ハリオール家の直系として、ライトさんが虐げられる原因の一つでもあったお嬢様を守ってくれると、本気で言ってます? しかも、あなた本人は動こうとしないまま?」
「なっ! 私はっ、お嬢様のことを想っているからこそ、こうして頼んでいるのです!」
「……オリアナ様、どうやら話が通じない相手のようですので、もう、帰りましょう」
そう、話が通じない。執事は、自分が何を言っているのか、全く分かっていないのだから。
普通であれば、自分の命を狙ってきた相手の子どもなど、受け入れられるわけがない。万が一、受け入れざるを得なかったとしても、まともに接することができるかと問われれば、『否』としか言えない。
執事の身分であれば、そのお嬢様を養子に迎えることは難しくもないはずだ。
しかし、執事がそれをしないのは、面倒事を抱えたくないからか、平民となるお嬢様の側に居たくないのか……ともかく、まともな理由とは思えない。
未だに色々と喚く執事を横目に、私達は、席を立とうとして……すぐに、その気配に気づいた。
「だれ……?」
幼い声が、部屋に響く。
「っ、お嬢様!? なぜ、こちらに!?」
そういえば、ここはハリオール家の本邸だったなと思いながら、おずおずと出てきた彼女を観察する。
ライトさんと同じ、茶髪に青い瞳を持つ、幼い少女。しかし、大切にされていたにしては、随分と痩せており、どこか怯えているようにも見える。着ているものも、ハリオール家という家に相応しいと言えるようなものではなく、そこら辺の平民の方がまだマシと言えるほどにくたびれた衣装だった。そして、何よりも……。
「その、傷は……?」
包帯を巻いてはいるものの、それは、自分で巻いたものなのか、ところどころ解け、両腕の細かい傷跡を晒していた。
アバルの声にビクリと縮こまり、ライトさんの問いかけに怯える少女。
どう見ても、大切に育てられたお嬢様には見えなかった。むしろ、これは、虐待されている少女だろう。
「オリアナ様」
「えぇ、そうですね。今、連絡を入れました」
これは、騎士に知らせるべき案件だと判断して、私はすぐに、一筆認めて、それを魔法で飛ばす。行き先は……ちょっとした嫌がらせもかねて、宰相閣下だ。
「っ、何をしたんですか!?」
「特に何も? ただ、必要な連絡をしただけです。虐待を疑われる少女が居る、とね」
そう告げれば、アバルは青ざめ、何を思ったのか、言い訳を始めた。
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