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第二章 どうして今更……
第八話 ハリオール家の秘密(一)
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初代ハリオール家当主は、初代ヴァイラン魔国魔王陛下と竹馬の友という間柄だった。
当時は戦乱の時代。人間と魔族、あるいは、竜人と魔族、獣人と魔族、といった具合の種族別の争いも過去には行われていたが、当時の戦いは、そのどれにも当てはまらない。
全種族と魔神。
それが、当時の戦いだった。
全ての種族が協力して、世界を滅ぼそうとする魔神を倒す。そんな、今ではお伽噺のようにして伝えられている話は、魔王陛下の言葉によって、実話なのだと伝えられた。
「この話は、魔王になる者へ代々伝えられているものでもある」
そう聞かされた途端、それを私達が聞いても良いものなのか不安を覚えたものの、逃げ道などない。今の私達は、ただただ、魔王陛下の言葉を聞くことしかできなかった。
「戦いはあまりにも凄惨で、長引くものでもあった。相手は魔神一人のみ。それでも、全ての種族が多大な犠牲を出すこととなり、数百年にも及ぶ戦いの後、ようやく、勝利を手にした。魔神を、封印するという手段をもってして、な……」
封印、ということは、討伐はできなかったのだろう。魔神がどんな存在なのかは不明だが、それだけ強大な敵だったというわけだ。
「その封印は、一つではなく、いくつもの欠片として、様々な場所で保管されるようになった。そう、例えば、代々続く家の者の体の中、とかな」
そう言ってライトさんを見る魔王陛下。その姿に、凄まじく嫌な予感を覚えたのは、私だけではないだろう。
「……魔王陛下、発言の許可をお願いしてもよろしいでしょうか?」
「許そう。そちらのリシャール嬢も、好きに発言すると良い」
「「ありがとうございます」」
ライトさんは、魔王陛下の言葉を受けて、私と同時にお礼を言うと、そっと口を開く。
「その魔神の封印の欠片を、ハリオール家が管理していた、ということでよろしいのでしょうか?」
「うむ、そうだ。そして、ハリオール家は、代々封印の欠片を体内に宿していた家系でもあるため、次の後継者にもそれを引き継がねばならない」
やはり、そういうことだったのかと納得すると同時に、それでも、ライトさんをわざわざ呼び出している意味が分からない。
「そして、その後継者は、必ずハリオール家の血を引くものでなければならない。そうでなくば、封印が破れてしまうのでな」
「っ……」
しかし、そういうことであれば、ライトさんが呼ばれた理由も分かる。きっと、その封印とやらは、ハリオール家の血筋に根ざした魔法でできているのだろう。
青ざめるライトさんを、今すぐ慰めたい気持ちに駆られながらも、私は、発言を許されたこともあって、何を言えば良いのか考えている様子のライトさんの代わりに口を開いた。
当時は戦乱の時代。人間と魔族、あるいは、竜人と魔族、獣人と魔族、といった具合の種族別の争いも過去には行われていたが、当時の戦いは、そのどれにも当てはまらない。
全種族と魔神。
それが、当時の戦いだった。
全ての種族が協力して、世界を滅ぼそうとする魔神を倒す。そんな、今ではお伽噺のようにして伝えられている話は、魔王陛下の言葉によって、実話なのだと伝えられた。
「この話は、魔王になる者へ代々伝えられているものでもある」
そう聞かされた途端、それを私達が聞いても良いものなのか不安を覚えたものの、逃げ道などない。今の私達は、ただただ、魔王陛下の言葉を聞くことしかできなかった。
「戦いはあまりにも凄惨で、長引くものでもあった。相手は魔神一人のみ。それでも、全ての種族が多大な犠牲を出すこととなり、数百年にも及ぶ戦いの後、ようやく、勝利を手にした。魔神を、封印するという手段をもってして、な……」
封印、ということは、討伐はできなかったのだろう。魔神がどんな存在なのかは不明だが、それだけ強大な敵だったというわけだ。
「その封印は、一つではなく、いくつもの欠片として、様々な場所で保管されるようになった。そう、例えば、代々続く家の者の体の中、とかな」
そう言ってライトさんを見る魔王陛下。その姿に、凄まじく嫌な予感を覚えたのは、私だけではないだろう。
「……魔王陛下、発言の許可をお願いしてもよろしいでしょうか?」
「許そう。そちらのリシャール嬢も、好きに発言すると良い」
「「ありがとうございます」」
ライトさんは、魔王陛下の言葉を受けて、私と同時にお礼を言うと、そっと口を開く。
「その魔神の封印の欠片を、ハリオール家が管理していた、ということでよろしいのでしょうか?」
「うむ、そうだ。そして、ハリオール家は、代々封印の欠片を体内に宿していた家系でもあるため、次の後継者にもそれを引き継がねばならない」
やはり、そういうことだったのかと納得すると同時に、それでも、ライトさんをわざわざ呼び出している意味が分からない。
「そして、その後継者は、必ずハリオール家の血を引くものでなければならない。そうでなくば、封印が破れてしまうのでな」
「っ……」
しかし、そういうことであれば、ライトさんが呼ばれた理由も分かる。きっと、その封印とやらは、ハリオール家の血筋に根ざした魔法でできているのだろう。
青ざめるライトさんを、今すぐ慰めたい気持ちに駆られながらも、私は、発言を許されたこともあって、何を言えば良いのか考えている様子のライトさんの代わりに口を開いた。
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