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第一章 どうして魔族なんかに……
第三十二話 想いの証
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「知り合い、ですか?」
「えぇ、ですが、問題はないはずなので、僕達はこのままデートしましょう」
問題はないと言われ、腑に落ちないものを感じながらも、デートすることに異論はない。
「では、おすすめの店に案内しますね」
予約は取っていないが、恐らくは大丈夫だと思えるその店に案内しようと思って彼を見てみれば、なぜかまた、顔を真っ赤に染めていた。
「ライトさ「……で、良いんですね?」? 今、なんて……?」
小さく、何かの確認を取るような言葉に聞き返せば、彼は、深呼吸を一つして、真剣な眼差しを向けてくる。
「デートで、良いんですね?」
「っ……」
確かに、デートであることを否定はしなかった。それは当然、私もデートのつもりだから、なのだが、改めて真剣に問いかけられると何とも居心地が悪い。
「そ、の……」
「っ、す、すみません。調子に乗り過ぎでしたよね! あー、えーっと……どんなお店か楽しみだなぁ」
わざとらしく明るい声を出す彼に、私は、もうここまできたら、信用しても良いだろうと思えた。
「デート、ですから」
「……へっ?」
何拍も遅れて、私の言葉を認識したらしい彼は、目を真ん丸にして、信じられないとでも言いたげな様子で私を見つめる。
「デートで、間違っていませんので。その、ライトさんが調子に乗ってる、わけじゃありませんよ」
改めて口にすると、恥ずかしさが勝る。とはいえ、言わないで伝わるものなんてないのだから、どんなに恥ずかしかろうと伝えるべきだろう。
「デー、ト……」
「そうです。世間一般で、カップルが一緒にお出かけすることをデートというので、どこにも間違いはありません」
とはいえ、前世も含めて、私からデートに誘うなんて初めての試みなのだ。緊張は、かなりしている。
「オリアナ様が、僕を、デートに誘ってくれた……?」
「……早く行きましょう」
何だか、このまま問答をしていると、私の精神が保ちそうにない。そう思って、強引に彼の手を取ると、お店のある方へ歩き出す。
「オリアナ様」
「……何ですか?」
「ありがとうございます。次は、僕から誘っても良いですか?」
「……好きにすれば、良いと思います」
「ふふっ、では、次は、色々と計画を練って、オリアナ様をお誘いしますね」
随分と嬉しそうな声を背後から聞きながら、私は必死に前を向く。
きっと、今の私の顔は、先程の彼に負けず劣らず真っ赤になっていることだろう。
それでも、それが嫌だとは思えないことが、私の、この想いの証でもあるような気がした。
「えぇ、ですが、問題はないはずなので、僕達はこのままデートしましょう」
問題はないと言われ、腑に落ちないものを感じながらも、デートすることに異論はない。
「では、おすすめの店に案内しますね」
予約は取っていないが、恐らくは大丈夫だと思えるその店に案内しようと思って彼を見てみれば、なぜかまた、顔を真っ赤に染めていた。
「ライトさ「……で、良いんですね?」? 今、なんて……?」
小さく、何かの確認を取るような言葉に聞き返せば、彼は、深呼吸を一つして、真剣な眼差しを向けてくる。
「デートで、良いんですね?」
「っ……」
確かに、デートであることを否定はしなかった。それは当然、私もデートのつもりだから、なのだが、改めて真剣に問いかけられると何とも居心地が悪い。
「そ、の……」
「っ、す、すみません。調子に乗り過ぎでしたよね! あー、えーっと……どんなお店か楽しみだなぁ」
わざとらしく明るい声を出す彼に、私は、もうここまできたら、信用しても良いだろうと思えた。
「デート、ですから」
「……へっ?」
何拍も遅れて、私の言葉を認識したらしい彼は、目を真ん丸にして、信じられないとでも言いたげな様子で私を見つめる。
「デートで、間違っていませんので。その、ライトさんが調子に乗ってる、わけじゃありませんよ」
改めて口にすると、恥ずかしさが勝る。とはいえ、言わないで伝わるものなんてないのだから、どんなに恥ずかしかろうと伝えるべきだろう。
「デー、ト……」
「そうです。世間一般で、カップルが一緒にお出かけすることをデートというので、どこにも間違いはありません」
とはいえ、前世も含めて、私からデートに誘うなんて初めての試みなのだ。緊張は、かなりしている。
「オリアナ様が、僕を、デートに誘ってくれた……?」
「……早く行きましょう」
何だか、このまま問答をしていると、私の精神が保ちそうにない。そう思って、強引に彼の手を取ると、お店のある方へ歩き出す。
「オリアナ様」
「……何ですか?」
「ありがとうございます。次は、僕から誘っても良いですか?」
「……好きにすれば、良いと思います」
「ふふっ、では、次は、色々と計画を練って、オリアナ様をお誘いしますね」
随分と嬉しそうな声を背後から聞きながら、私は必死に前を向く。
きっと、今の私の顔は、先程の彼に負けず劣らず真っ赤になっていることだろう。
それでも、それが嫌だとは思えないことが、私の、この想いの証でもあるような気がした。
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