私、異世界で魔族になりました!〜恋愛嫌いなのに、どうしろと?〜

星宮歌

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第一章 どうして魔族なんかに……

第三十話 悪戯心

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 待ち合わせの場所へ急いで向かうと、そこにはすでに、彼が待っていた。


「お待たせ、しました」


 彼の姿は、ベージュのスーツ姿で、その髪の色合いとも合っていて、とても格好いい。ついでに、胸元に付いている飾りは、私の髪と瞳の色を連想させる花で、こんなところまで凝ってくれているのかと思えば、自分で衣装を選んでいないという事実が、少し情けなく思えてしまう。


「オリアナ、様……とても、とてもっ、綺麗です!」


 しかし、彼にとっては、そんなことはどうでも良かったらしい。頬を真っ赤に染めて、熱の籠もった瞳で見つめられると、私にもその熱が移ってしまいそうだ。


「ライトさん、も。素敵です」


 辛うじて、それだけを告げた私は、そのまま彼から視線を逸らす。

 今の私の姿は、ベージュの刺繍入りの紺色のワンピースだ。そして、肩には焦げ茶色のショールを羽織っている。当然のことながら、彼の色を意識したものだ。


 は、恥ずかしい……。


 自分の気持ちを自覚した直後に、これは攻め過ぎではなかろうかと思って、チラリと彼を見てみると、何やら私以上に真っ赤になって固まっていた。


「……大丈夫、ですか?」


 そう、声をかけてみれば、彼は両手で顔を覆って蹲ってしまう。


 ……大丈夫では、なさそうね。


 何がクリーンヒットしたのかは不明だが、どうやら、彼にとって私の行動なり格好なりはドストライクというやつだったのだろう。


 なるほど……これは、私から色々とできる機会かもしれないわね。


 そうと分かるだけで、ちょっと楽しくなってきた私は、ゆっくりと気配を消して彼に近づいてみる。


「ライトさん? そろそろ行きませんか?」

「っ、ひゃいっ!」


 下から覗き込むようにして告げれば、面白いくらいに飛び上がってくれる。そんな反応に、ムクムクと悪戯心が芽生えるのは、もはや当然のことだった。


「ライトさん? 顔が赤いみたいですが?」

「だ、大丈夫ですっ」

「そうですか……では、はぐれるといけないので、手を繋ぎましょうか」

「ひゃいっ」

「あれ? ライトさん、やっぱり体温が高いのでは? ちょっと失礼しますね」

「オ、オリアナしゃまっ!?」


 顔の赤さを指摘してみたり、さりげなく手を繋ぐようにしてみたり、そうする度に、彼は大袈裟なくらいに反応を示してくれる。
 最後に、熱を測る、という体でおでことおでこをくっつけてみれば、ライトさんはプシューッと音を立てて固まった。


 さすがにやり過ぎたかしら?


 そう思って、彼を見上げてみれば、これ以上赤くなる余地があったのかと思えるほどにどんどんとその顔を赤らめて……。


「ライトさん!?」


 限界を迎えたらしく、そのまま彼は倒れるのだった。
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