私、異世界で魔族になりました!〜恋愛嫌いなのに、どうしろと?〜

星宮歌

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第一章 どうして魔族なんかに……

第二十一話 親友の元へ(一)

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 あの日、彼に抱き着いてしまって以来、何となく彼を避けてしまっていた私は、今、唯一の親友の元へと訪れていた。


「いらっしゃい、オリー」

「リリィ。久しぶりね」


 美しい銀髪の親友は、私とは違って貴族ではある。しかも、この国で五本指に入る屈指の家柄だ。そして……レイシラ家始まって以来の女傑としても知られている。ただし……。


「いつも、オリーの提案には色々と助けられているわ。ありがとう」

「私は、前の世界の話を聞いてもらっているだけだから……私の方も、話せる人が居るというのがありがたいわけだし、お互い様よ」


 リリナローズ・レイシラ。彼女が女傑と呼ばれるようになった一端には、私の前世の知識もあった。
 リリナローズに招かれるままに、彼女の自室へと入った私は、何となく安心して、ホッと息を吐く。


「今日のお茶は、リラックス効果のあるものにしているわ。久々の『女子会』を楽しみましょう」

「ふふっ、そうね。女子会ね」


 この『女子会』という言葉だって、私がリリナローズに教えたものだ。貴族令嬢や夫人達が日中に集まってお茶を飲むのは『お茶会』。しかし、親しい友人と集まってお茶を飲みながらお喋りするのも『お茶会』なのだ。
 日本人の知識がある私としては、『お茶会』という言葉は間違いではないと分かっていたのだが……何となく、友人と集まるものは、特に女性同士ならば『女子会』という言葉が浮かんで、何度かここに招かれ、緊張も解けた頃にその話をした記憶がある。


「オリーと出会って、もう十年以上経つのよね」

「そうね。あの頃は、まさか庶民の私が公爵家のご令嬢と仲良くなるなんて思いもしていなかったけど」


 リリナローズとの出会いは、高等学園だ。
 ヴァイラン魔国は実力主義であり、教育にも力を入れている。そのため、高等学園くらいの段階になってくると、平民も貴族もその実力次第で同じ高等学園に通うということが出てくる。もちろん、それを嫌う者も居るため、貴族専用の学園や平民専用の学園というものもあるのだが、私やリリナローズはそんなことを気にせずに入学していた、というわけだ。


「学年首席がオリーで、わたくしが次席だったわね」

「いや、確かに入学当初はそうだったけど、何度か私も次席になることはあったわよ?」

「それでも、卒業の時は首席だったのはオリーだったはずよ?」

「……そうね」


 そう、切っ掛けは入学テストで、私が首席を取ったからだ。そのおかげで、リリナローズは私に興味を持って、ひたすらに仲良くなりたいとアピールするようになってきたのだ。


「今でも覚えているわ。『オリアナでしたか? あなた、わたくしの友人におなりなさい』って声をかけられたのよね」

「っもうっ、恥ずかしいことなのに、未だに覚えているのねっ!? あの時は、友人をどうやって作るのか分からなかったのよっ」

「あれだけ人に囲まれてて、友人が一人も居ないとは思わないわよ」

「わたくしは公爵令嬢だったのよ? そうなると、媚を売る連中が多いことくらい、あの頃のオリーでも分かってはいたでしょう?」

「えぇ、それでも、一人くらいは友人が居ると思うのが普通だと思うのよ」


 いきなりの上から目線の命令地味た言葉に、私は速攻で否を突き付けた。
 そして、そこで呆然と立ち尽くして、その内しょんぼりとしてしまったリリナローズを見て、ようやく、リリナローズは本当にただ、友達を作ろうとして言葉を間違えただけなのだと理解できた。
 ただ、理解できたからといって仲良くしようとはならないわけで……その後しばらく、リリナローズとの攻防が繰り広げられることとなった。
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