私、異世界で魔族になりました!〜恋愛嫌いなのに、どうしろと?〜

星宮歌

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第一章 どうして魔族なんかに……

第十九話 謝罪合戦

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「……ん……」

「おはようございます。オリアナ様。体調はどうですか?」


 何だか、良い夢を見ていた気がする。
 そう思いながら目を開ければ、とても良い香りの人が、そこに居た。


「たい、ちょう……」


 何かを聞かれた気がしたが、それより何より、この香りを堪能したい。


「ちょっ、オリアナ様!?」

「ん……」


 ギュッと抱き締めてみれば、とても良い香りが胸いっぱいに広がる。


「あ、あぅ……」


 ずっとずっと、求めていた香り。ずっとずっと、探していた温もり。
 それが目の前にあれば、手を伸ばすのは当然だし、むしろそうしない理由が分からない。
 そっと、背中にもその温もりが回されて、その心地よさに満足した……ところで……。


「……ん?」


 ……待とう。今、この状況は、ドウイウジョウキョウ……?


 頭の中がハッキリしてくるに従って、否応なしに状況を自覚していく。そして、段々と冷や汗か何か分からないものの、変な汗をかき始めてしまう。


「…………」

「…………」


 お互い、無言の空間。ただ、今、顔を上げるのは、とても難しい。もちろん、それは心情的に。


「オ、オリアナ、様?」


 そして、遠慮がちにかけられた声に、私は、大げさなくらいビクッと肩を揺らしてしまう。


「その、目は、覚めましたか?」

「…………すみませんでした」


 そっと、彼から体を離して、それでも目を合わせられないままに謝罪する。


「いえ、その、謝ることでは……」


 穴があったら、そこに潜り込んでしばらくは外に出たくないと思いながら、そっと視線を彼の顔に向けてみると、彼は顔を真っ赤にして、口元に手を置いて、視線を逸らしていた。
 ただ、きっと私も似たりよったりの赤面具合だろうと思うと、それをじっと眺めることなどできない。


「……本当に、すみませんでした」

「いえ、その……こちらこそ、すみませんでした」


 お互い視線を合わせないままの奇妙な謝罪合戦。
 それは、たまたま声を聞きつけた医務室の医者が訪れる時まで続くこととなった。
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