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第一章 どうして魔族なんかに……

第十六話 強情な方(ライト視点)

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 迂闊だった。オリアナ様から目を離すべきではなかった。


 そんな後悔に苛まれながらも、僕はオリアナ様に迫ろうとする不届き者を排除しようとして……オリアナ様自身に止められてしまう。


 なぜっ!? こんな、下劣な男など、存在する価値もないのにっ!


 そう思っても、片翼であるオリアナ様の願いには逆らえない。
 早足で店を出た僕達は、そのままあの男が追いかけてこないだろうと思えるだけの距離を取って……そこで、オリアナ様は、膝から崩れ落ちた。


「オリアナ様っ!?」


 慌てて支えれば、オリアナ様の顔は真っ青だった。いや、それだけではなく、あの男からしっかりと離れたというのに、まだオリアナ様の震えは止まっていない。


「問題ありません」


 震える声でそう言われたところで、はいそうですかと引き下がるわけにはいかない。


「オリアナ様、ひとまず、あそこのベンチに行きましょう。……抱き上げますね」

「え?」


 『立てますか?』と聞こうとした僕は、すぐに思い直して、オリアナ様を抱き上げる。
 一瞬、逃げ腰になったオリアナ様だったが、僕が下ろすつもりはないと分かると、そのまま大人しくなる。
 そっとベンチに座れるように下ろしてみると、オリアナ様はまだ、震えたままだった。


「大丈夫です。オリアナ様は、僕が守ります。もう二度と、あの男を近づけないようにしますから」


 そう言いながら、少しだけ躊躇って、それでもそっと手を伸ばして、オリアナ様の頭を撫でる。

 オリアナ様の方が年上だし、先輩だし、何でもできる頼もしい女性、のように思っていたが、今のオリアナ様は、ただただ、されるがままに僕の手を受け入れてくれている。

 それから、どれだけの時間が経っただろうか。
 オリアナ様は、ようやく体の震えが止まって、ポツリと言葉をもらす。


「ありがとう、ございます。おかげで、落ち着きました」


 もう、すっかり日暮れになっていて、今日はこれ以上一緒には居られないのだろうと、僕自身も分かってはいた。しかし、オリアナ様の弱々しい声を聞いてしまうと、それで良いのかという疑問も出てくる。


「……何か、僕にできることはありませんか?」


 せめて、何か手助けをさせてほしい。そう思って問いかけても、オリアナ様は首を横に振るのみ。


「問題ありません」

「分かりました。では、外出の時は極力、僕がオリアナ様の護衛になります」


 素直にうなずいてくれるとは思っていなかったので、すぐに畳み込む形でそんな決定をしてしまう。


「っ、必要ありません」

「いえ、必要です。僕の心の安寧のためにも、オリアナ様を守らせてください」


 どんなに拒否しようとも無駄だとばかりに見つめれば、オリアナ様は大きく息を吐いた。
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