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第一章 どうして魔族なんかに……
第十四話 恐怖の相手
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彼と出掛けた最終的な目的地、フルーツ専門の喫茶店に到着した私は、早速、美味しそうなフルーツケーキに舌鼓を打つ。
彼が狩ってきた果物は梨。そして、今食べているのは、梨のタルト。贅沢にも、一ホール分が目の前にあって、彼と一緒に食べている。ただし……。
「……食べないのですか?」
彼は、一ピースほど食べただけで、それ以上を食べようとはしない。
「オリアナ様の幸せそうな顔を見ているだけで、胸がいっぱいで……」
「っ……」
私は、そんな顔をしていたのだろうか?
思わず頬に手を当てて、すぐにそれよりも効果的な方法を実践する。
「食べ切れないので、食べてください」
そう、食べている間ならば、私のことを見ることもない……はずだ。
ここで断言ができないのは、私の両親が見つめ合いながら食べるという芸当をしていたからだ。
「では、もう少しいただきますね。余ったら持ち帰れるので、オリアナ様に差し上げますよ」
持ち帰れるのはありがたい。しかし、やはり、私の懸念通り、彼は私を見つめながら食べるので、とても食べづらい。
とはいえ、次に果物を食べられるのがいつになるのか分からないので、しっかりと味わって、余ったタルトは包んでもらうことにする。
それから、化粧直しに少しだけ席を立って、戻ってくる途中、私は、二度と会いたくない存在に出会うことになる。
「おっ? なぁ、お前、理那じゃないか?」
理那、というのは、私の前世の名前。そして、こんなに気安く私の名前を呼ぶ存在は、家族以外ならば二人に絞られる。
背後からの声に思わず振り向けば、そこには、前世とは姿形は違えども、確実に誰なのか分かる人物が立っていた。
「せん、ぱい……?」
前世で付き合っていた先輩。そして、普通の付き合いだと思っていたのは私だけで、実際には不倫の相手として私を見ていた先輩。
私の人生が終わるきっかけとなった、先輩……。
「やっぱり理那だっ! お前も生まれ変わってたんだなぁ」
前世とは違う口調で、しみじみとそう呟く先輩に、反省の色は欠片もない。
現在は、真っ赤な髪に、真っ赤な瞳を持つ、傲慢さが滲み出た顔立ちの人間になっている先輩は、ニヤニヤと笑って近づいてくる。
「ぁ……」
何の用なのか、とでも尋ねるつもりだったのに、出てくるのは意味のない声だけ。
「なぁ、やっぱり、俺には理那が一番だから、また付き合おうぜ」
近づいてくる先輩から遠ざかろうと、一歩二歩と後退したものの、すぐに壁に追いやられ、信じられない言葉を告げてきた。
先輩と付き合うのは、絶対に無理だ。そのくらい、先輩も理解しているはずなのに、どうしてそんなことを告げてくるのか、その神経が理解できない。
「今回は今回で、すげぇ美人だし……。なぁ、ちょうど良い宿を知ってるから、今からそこに行こうぜ」
欲望に満ちた視線が気持ち悪い。逃げなければと思うのに、こんな男よりも私の方が強いはずなのに、足が竦んで言うことをきかない。
そうこうしている間に、先輩は、私に手を伸ばしてきた。
彼が狩ってきた果物は梨。そして、今食べているのは、梨のタルト。贅沢にも、一ホール分が目の前にあって、彼と一緒に食べている。ただし……。
「……食べないのですか?」
彼は、一ピースほど食べただけで、それ以上を食べようとはしない。
「オリアナ様の幸せそうな顔を見ているだけで、胸がいっぱいで……」
「っ……」
私は、そんな顔をしていたのだろうか?
思わず頬に手を当てて、すぐにそれよりも効果的な方法を実践する。
「食べ切れないので、食べてください」
そう、食べている間ならば、私のことを見ることもない……はずだ。
ここで断言ができないのは、私の両親が見つめ合いながら食べるという芸当をしていたからだ。
「では、もう少しいただきますね。余ったら持ち帰れるので、オリアナ様に差し上げますよ」
持ち帰れるのはありがたい。しかし、やはり、私の懸念通り、彼は私を見つめながら食べるので、とても食べづらい。
とはいえ、次に果物を食べられるのがいつになるのか分からないので、しっかりと味わって、余ったタルトは包んでもらうことにする。
それから、化粧直しに少しだけ席を立って、戻ってくる途中、私は、二度と会いたくない存在に出会うことになる。
「おっ? なぁ、お前、理那じゃないか?」
理那、というのは、私の前世の名前。そして、こんなに気安く私の名前を呼ぶ存在は、家族以外ならば二人に絞られる。
背後からの声に思わず振り向けば、そこには、前世とは姿形は違えども、確実に誰なのか分かる人物が立っていた。
「せん、ぱい……?」
前世で付き合っていた先輩。そして、普通の付き合いだと思っていたのは私だけで、実際には不倫の相手として私を見ていた先輩。
私の人生が終わるきっかけとなった、先輩……。
「やっぱり理那だっ! お前も生まれ変わってたんだなぁ」
前世とは違う口調で、しみじみとそう呟く先輩に、反省の色は欠片もない。
現在は、真っ赤な髪に、真っ赤な瞳を持つ、傲慢さが滲み出た顔立ちの人間になっている先輩は、ニヤニヤと笑って近づいてくる。
「ぁ……」
何の用なのか、とでも尋ねるつもりだったのに、出てくるのは意味のない声だけ。
「なぁ、やっぱり、俺には理那が一番だから、また付き合おうぜ」
近づいてくる先輩から遠ざかろうと、一歩二歩と後退したものの、すぐに壁に追いやられ、信じられない言葉を告げてきた。
先輩と付き合うのは、絶対に無理だ。そのくらい、先輩も理解しているはずなのに、どうしてそんなことを告げてくるのか、その神経が理解できない。
「今回は今回で、すげぇ美人だし……。なぁ、ちょうど良い宿を知ってるから、今からそこに行こうぜ」
欲望に満ちた視線が気持ち悪い。逃げなければと思うのに、こんな男よりも私の方が強いはずなのに、足が竦んで言うことをきかない。
そうこうしている間に、先輩は、私に手を伸ばしてきた。
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