私、異世界で魔族になりました!〜恋愛嫌いなのに、どうしろと?〜

星宮歌

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第一章 どうして魔族なんかに……

第十三話 流されないっ

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 私は、流されているわけではない。ただ、果物が食べたかっただけ。
 そうは思えど、実際は流されているような気がしてならない。


「あっ、オリアナ様! あの髪飾り、きっとオリアナ様に似合いますよっ」


 そう言って、彼は私に髪飾りを勧めてくる。

 私も女性の端くれだ。こうしたキラキラしたものや、可愛いものに憧れがないわけではない。しかし、お洒落をしたところで、それを見せたい相手なんて……。


「やっぱり、オリアナ様に似合いますねっ!」


 ……そう、これは、頑張って果物を狩ってくれたことへの感謝の印だ。ただ、ちょっと当ててみるだけならタダなのだし、それで喜んでもらえるなら、それで十分だ。これなら、彼の負担にもならないはず――。


「すみませーん、これくださいっ!」

「毎度ありっ!」

「えっ!?」


 しかし、彼は私が止める間もなく、その髪飾りを購入してしまう。


「はいっ、オリアナ様!」


 さすがに、これを断るのは難しい。白銀の花の髪飾りを渡されて、私は、とりあえず受け取る。


 そう、髪飾りを買ってもらって、ここで断るのは良くないから……。


「オリアナ様っ! 次はあそこに行ってみませんか? オリアナ様が好きな花を教えてくださいっ」

「別に、花は好きでも何でもありません」

「そうですか? でも、オリアナ様、花を見る時、ほんの少しだけど、表情が柔らかくなっていますよ?」

「っ……気の所為ですっ」


 魔族の国における花屋というのは、必ず、巨大な温室を抱えている。鮮度が良く美しい花を、片翼のために、魔族はその目でしっかりと見て、吟味して、店員に花束を作ってもらうように注文するシステムなのだ。
 最初にこのシステムを知った時は唖然としたものの、シンプルに温室の見学も有料で可能だ。
 多くの植物園があるのだと思えば、そのうち違和感はなくなった。そして、何かで落ち込んだ時は、のんびりと温室を巡るのが私の休息方法だったりもする。


 何か、おかしい。こんな、私の情報が漏洩してるみたいな……。


 先程から、彼は的確に、私の好みを当てている気がする。今までの観察の結果、なんてことはないだろう。


 でも、デリク様はそこまで知らないし、知っているのは家族と、リリナ……?


 しかし、万が一そのどちらかに接触していたとして、簡単に口を割るような人達ではないはずだ。


 監視が居た気配もなかったと思うけど……。


「オリアナ様? どこか具合でも悪いのですか?」


 そんな風に考えていると、どうやら心配をかけてしまったらしい。


「いいえ、なんでもありません」


 今は、そう……。目的のために、彼に付き合っておけば良いのだ。それ以上なんて、あり得ないの、だから……。
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