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第一章 どうして魔族なんかに……
第十二話 デートの提案
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ライト・ロットールという名前の男は、毎日毎日、飽きることなく私に会いに来ては、贈り物だと様々な物を手渡してきた。
調べてみれば、彼は私と同じ平民から、爵位をもらった成り上がりでもある。
ロットール家も、リシャール家も、今、私達が努力して手に入れた家名だ。実際、成り上がるだけの実力はあるらしく、仕事も誰よりも早く、正確に片付けている。
「少しは、話してみたら? 彼、オリアナちゃんにとっても片翼で間違いないのでしょう?」
最初こそ、本当に片翼なのかと思われていた彼は、どうやらすでに、私の片翼だとデリクさんにはバレたらしい。
「…………私は、恋愛なんてしないと、決めていますので」
そう、恋愛なんて、ロクなものじゃない。だから……。
「恋愛、ねぇ……。オリアナちゃんはもう、分かっているんじゃないの? 魔族にとっての片翼は、そんな可愛らしい言葉で表せるものじゃあないってこと」
「…………」
もう、分かっていた。この気持ちを偽り続けるのは、あまりにも辛いことなのだと。恋愛、なんて可愛い言葉で表せるような衝動ではないのだと。
それ、でも……。やっぱり、恋愛なんて……。
「あら、また来たみたいね」
そんなデリクさんの言葉に、思わず顔を上げて、その姿を捜してしまう。
「オリアナ様っ! 今日は、デートに行きませんか??」
「嫌です」
すぐに目が合って、突進する勢いでこちらに来た彼は、開口一番にそんなことをのたまい、反射的に拒絶する。
「最近できたばかりのフルーツケーキ専門店に行こうと思うんですけど……」
「…………フルーツケーキ……」
思わぬ提案に、思わずオウム返しをしてしまう。
「あら? そこって結構高いことでも有名よね? 何たって、果物を使うのだし」
そんなデリクさんの言葉に、私も、そのお店に行くことを断念した経緯を思い出す。
この世界の果物は恐ろしく高級なのだ。そして、さらにそれをケーキにするなんて、究極の贅沢といっても過言ではない。
しかし、前世の私は、果物が大好きで、毎日、何か一つは果物を食べていた。もちろん、フルーツケーキなんて大好物だ。
「大丈夫です。果物は持ち込んでも良いらしくて、昨日、狩ってきました!」
「なっ、それは凄いわね! もしかして、果物狩りの一族だったりするのかしら?」
「いえ、違います。ですが、どうにか打ち勝って手に入れたんです。だから……お願いします。一緒に来てくれませんか?」
前世でも、果物狩りという言葉はあったが、今世の果物狩りとは意味が違う。今世の果物は……正直に言えば、かなり凶暴なのだ。
下手なドラゴンよりも強く、気に入った土地があれば、そこに村があってもお構いなしに滅ぼす。
そんな馬鹿なと思われるかもしれないが、自立して、枝で素早く攻撃を繰り出し、毒さえも撒き散らすそれは、正しく『凶暴』という言葉が当て嵌まる存在だ。だから……。
「……分かり、ました。行きましょう」
果物狩りがどれだけ大変で命懸けなのかは、私が良く知っている。
いくら恋愛をしたくないとはいえ、その努力に報いないというのは、違うと思ったのだ。
「っ!! はいっ! では、早速行きましょうっ!!」
自分に言い訳をしながら、それでも、私は、彼の言葉にうなずいた。
調べてみれば、彼は私と同じ平民から、爵位をもらった成り上がりでもある。
ロットール家も、リシャール家も、今、私達が努力して手に入れた家名だ。実際、成り上がるだけの実力はあるらしく、仕事も誰よりも早く、正確に片付けている。
「少しは、話してみたら? 彼、オリアナちゃんにとっても片翼で間違いないのでしょう?」
最初こそ、本当に片翼なのかと思われていた彼は、どうやらすでに、私の片翼だとデリクさんにはバレたらしい。
「…………私は、恋愛なんてしないと、決めていますので」
そう、恋愛なんて、ロクなものじゃない。だから……。
「恋愛、ねぇ……。オリアナちゃんはもう、分かっているんじゃないの? 魔族にとっての片翼は、そんな可愛らしい言葉で表せるものじゃあないってこと」
「…………」
もう、分かっていた。この気持ちを偽り続けるのは、あまりにも辛いことなのだと。恋愛、なんて可愛い言葉で表せるような衝動ではないのだと。
それ、でも……。やっぱり、恋愛なんて……。
「あら、また来たみたいね」
そんなデリクさんの言葉に、思わず顔を上げて、その姿を捜してしまう。
「オリアナ様っ! 今日は、デートに行きませんか??」
「嫌です」
すぐに目が合って、突進する勢いでこちらに来た彼は、開口一番にそんなことをのたまい、反射的に拒絶する。
「最近できたばかりのフルーツケーキ専門店に行こうと思うんですけど……」
「…………フルーツケーキ……」
思わぬ提案に、思わずオウム返しをしてしまう。
「あら? そこって結構高いことでも有名よね? 何たって、果物を使うのだし」
そんなデリクさんの言葉に、私も、そのお店に行くことを断念した経緯を思い出す。
この世界の果物は恐ろしく高級なのだ。そして、さらにそれをケーキにするなんて、究極の贅沢といっても過言ではない。
しかし、前世の私は、果物が大好きで、毎日、何か一つは果物を食べていた。もちろん、フルーツケーキなんて大好物だ。
「大丈夫です。果物は持ち込んでも良いらしくて、昨日、狩ってきました!」
「なっ、それは凄いわね! もしかして、果物狩りの一族だったりするのかしら?」
「いえ、違います。ですが、どうにか打ち勝って手に入れたんです。だから……お願いします。一緒に来てくれませんか?」
前世でも、果物狩りという言葉はあったが、今世の果物狩りとは意味が違う。今世の果物は……正直に言えば、かなり凶暴なのだ。
下手なドラゴンよりも強く、気に入った土地があれば、そこに村があってもお構いなしに滅ぼす。
そんな馬鹿なと思われるかもしれないが、自立して、枝で素早く攻撃を繰り出し、毒さえも撒き散らすそれは、正しく『凶暴』という言葉が当て嵌まる存在だ。だから……。
「……分かり、ました。行きましょう」
果物狩りがどれだけ大変で命懸けなのかは、私が良く知っている。
いくら恋愛をしたくないとはいえ、その努力に報いないというのは、違うと思ったのだ。
「っ!! はいっ! では、早速行きましょうっ!!」
自分に言い訳をしながら、それでも、私は、彼の言葉にうなずいた。
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