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第一章 どうして魔族なんかに……
第三話 招待状
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「デリクさん」
「うふふ、デリクちゃん、で良いのよ?」
彼……いや、彼女は、私の同期だ。
真っ赤な髪に真っ赤な瞳という自己主張の激しい色合いを持つ彼女は、それだけでは飽き足らず、性別までも激しい自己主張をさせる道を選んだ方だ。
仕事中であるため、きっちりと男性用の宰相補佐としての制服を着用してはいるものの、艶やかな化粧を施したその顔を見れば、誰もが一度引く。
しかし、その顔立ちは文句なしのイケメンであるため、似合ってもいる。と、いうわけで、彼女には一定数のファンが居るなんていう事実も存在する。
ただ、同期とはいえ、私が最年少という話からも分かる通り、彼女の方が年上だ。
そう、確か……。
「一昨日、三百歳の誕生日を迎えたデリクさんが、何の用ですか?」
「あらやだ。乙女に年齢の話は厳禁よ?」
クネクネと体をくねらせて告げる彼女へ、私はついついため息を零してしまう。
「そうですか。ですが、一昨日、片翼にプレゼントをしてもらったと大喜びで自慢していましたよね? 三百歳の誕生日だったのだと。きっと、この部署だけじゃなくて、もっと広範囲にデリクさんの年齢は広まっていると思いますよ?」
「うっ……そうね。でも、今持ち出すことじゃないと思うのよ」
わざとらしく胸を押さえる彼女。
今までのやり取りから分かるように、彼女とはそれなりに良好な関係を築けている。職場の同僚と上手くやれるのは良いことだと、私は純粋に喜んでいた。
「ところで、何か用事があったのでは?」
「あっ、そうだったわね! ほら、宰相閣下からの招待状……って、そんな分かりやすく嫌そうな顔をしないのっ! さすがに不敬よ?」
「……失礼しました。ついつい、またか、と思ってしまいまして」
「……その、過去に何かがあったのは分かるし、それで片翼を拒否しているのも分かるわ。でもね、皆、貴女のことを心配しているのよ?」
「そうですね。ですが、正直、平民上がりの私のことは、そっとしておいてほしいです」
宰相閣下。つまりは、私達の上司は、魔族の中でも特に愛妻家だと有名だ。そして、私が宰相補佐になりたいということで能力テストに合格し、面接となった時、『片翼なんて必要ありません。私に必要なのは、経済力と老後の安寧だけなので』と宣言して、泣かせてしまった相手でもある。
『まだ若いのに、随分と悲惨な目に遭ったようだ。心の傷を癒やすべく、しばらくは私の下で働きなさい』なんて言葉を、号泣されながらかけられて、私は否定することができなかったため、今、この状況がある。
「それで、今度はどんなお見合いパーティーなんですか? 人族の高官と堅苦しい会食? それとも獣人達と戯れる会? あぁ、魔族の貴族達の中に放置されたりするのでしょうか?」
「そ、そんな悪意たっぷりに言わなくても……」
実際のところ、仕事にかこつけて、様々な種族と出会って、素敵な片翼を見つけてほしいというのが宰相閣下の思惑だと知っている。ついでに、仕事の経験としては破格のものをもらっていることも分かってはいる。それでも……。
「私に片翼なんて必要ありません」
この時の私は、知らなかった。もうすぐ、これだけ会いたくないと思っていた片翼を見つけてしまう、なんてこと……。
「うふふ、デリクちゃん、で良いのよ?」
彼……いや、彼女は、私の同期だ。
真っ赤な髪に真っ赤な瞳という自己主張の激しい色合いを持つ彼女は、それだけでは飽き足らず、性別までも激しい自己主張をさせる道を選んだ方だ。
仕事中であるため、きっちりと男性用の宰相補佐としての制服を着用してはいるものの、艶やかな化粧を施したその顔を見れば、誰もが一度引く。
しかし、その顔立ちは文句なしのイケメンであるため、似合ってもいる。と、いうわけで、彼女には一定数のファンが居るなんていう事実も存在する。
ただ、同期とはいえ、私が最年少という話からも分かる通り、彼女の方が年上だ。
そう、確か……。
「一昨日、三百歳の誕生日を迎えたデリクさんが、何の用ですか?」
「あらやだ。乙女に年齢の話は厳禁よ?」
クネクネと体をくねらせて告げる彼女へ、私はついついため息を零してしまう。
「そうですか。ですが、一昨日、片翼にプレゼントをしてもらったと大喜びで自慢していましたよね? 三百歳の誕生日だったのだと。きっと、この部署だけじゃなくて、もっと広範囲にデリクさんの年齢は広まっていると思いますよ?」
「うっ……そうね。でも、今持ち出すことじゃないと思うのよ」
わざとらしく胸を押さえる彼女。
今までのやり取りから分かるように、彼女とはそれなりに良好な関係を築けている。職場の同僚と上手くやれるのは良いことだと、私は純粋に喜んでいた。
「ところで、何か用事があったのでは?」
「あっ、そうだったわね! ほら、宰相閣下からの招待状……って、そんな分かりやすく嫌そうな顔をしないのっ! さすがに不敬よ?」
「……失礼しました。ついつい、またか、と思ってしまいまして」
「……その、過去に何かがあったのは分かるし、それで片翼を拒否しているのも分かるわ。でもね、皆、貴女のことを心配しているのよ?」
「そうですね。ですが、正直、平民上がりの私のことは、そっとしておいてほしいです」
宰相閣下。つまりは、私達の上司は、魔族の中でも特に愛妻家だと有名だ。そして、私が宰相補佐になりたいということで能力テストに合格し、面接となった時、『片翼なんて必要ありません。私に必要なのは、経済力と老後の安寧だけなので』と宣言して、泣かせてしまった相手でもある。
『まだ若いのに、随分と悲惨な目に遭ったようだ。心の傷を癒やすべく、しばらくは私の下で働きなさい』なんて言葉を、号泣されながらかけられて、私は否定することができなかったため、今、この状況がある。
「それで、今度はどんなお見合いパーティーなんですか? 人族の高官と堅苦しい会食? それとも獣人達と戯れる会? あぁ、魔族の貴族達の中に放置されたりするのでしょうか?」
「そ、そんな悪意たっぷりに言わなくても……」
実際のところ、仕事にかこつけて、様々な種族と出会って、素敵な片翼を見つけてほしいというのが宰相閣下の思惑だと知っている。ついでに、仕事の経験としては破格のものをもらっていることも分かってはいる。それでも……。
「私に片翼なんて必要ありません」
この時の私は、知らなかった。もうすぐ、これだけ会いたくないと思っていた片翼を見つけてしまう、なんてこと……。
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