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第一章 どうして魔族なんかに……
第一話 片翼至上主義
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ヴァイラン魔国で、魔族の娘として生を受けた私は、その後、スクスクと育って、恐ろしい現実に直面する。
「かたよく?」
「えぇ、そうよ。魔族には、片翼と呼ばれる最愛の存在が、この世のどこかに居るの。魔族として生を受けたからには、必ず、片翼を探し出して一緒になりたいという憧れを抱くものよ。オリーも、そのうちきっと、憧れるようになるわ」
最初は、母親からのそんな言葉だった。ただ、その時はあまりそれを真剣には捉えていなかった。
ごく普通の一般家庭に生まれた私は、魔族が通う幼年学校に通い、その頃にも『片翼が云々』という話を聞くことはあったものの、やはり、真面目に考えることなどなかった。
どうせ、結婚したら幸せになるよ、という刷り込み教育だろう、くらいにしか思っていなかったし、人間でいうところの小学生くらいの年齢になれば、それも変わると思っていた。
「いいなぁ、あのふたり、かたよくなんだって!」
「すげーっ! おれも、はやくあえるといいなぁ」
低学年くらいの年齢ならば、まだ違和感はなかった。
「俺の片翼が見つかった!」
「本当! おめでとうっ!! 私も、最近気配を感じたから、もうすぐ会えるかもっ」
「おぉっ、そりゃあいいなっ!」
高学年くらいの年齢でも、そんな言葉が聞こえてきて、違和感はあれど、人間より何倍も長く生きる魔族という種族は、精神年齢が人間と比べて幼いのだろうと、成長が遅いのだろうと自分を納得させた。
………そう、そうやって、私は必死に、ソレから目を逸らし続けていた。しかし、さすがに『片翼に関する法律』なんていうものを学ぶ授業を受けるようになれば、現実逃避ばかりするわけにもいかない。
「オリアナちゃんは、片翼はどんな人が良い?」
いつだったか、学校でよく話しかけてくる子にそう聞かれて、私は、間髪入れずにこう答えた。
「片翼なんていらない」
魔族としてはあまりにも異質な解答。
これが、ずっと片翼が見つからずに、色々と拗らせた魔族であれば、こう答えるのも珍しくはなかっただろう。片翼を見つけても、片翼に応えてもらえない魔族も似たようなものかもしれない。
しかし、私はまだ、そんな経験などない、子供なのだ。周りに居るのは、片翼に憧れる子供達ばかり。そうすると、私の答えは、異質を通り越して、異常だと見なされた。
「あの子、変だよね」
「もしかして、魔族としての感覚がない、とか?」
「病院に行った方が良いんじゃない??」
そんな声に応えることなく、ただひたすらに勉学に打ち込んでいれば、そのうち、私の周りには人が居なくなった。
これで、良い。
どうせ、魔族なんて、理解できない種族なのだから、関わってこなければそれで良かった。
恋愛なんて、もう二度としない。その誓いを胸に、私は必死に、勉強して……約二十五年後、宰相補佐などという地位にまで登り詰めた。
「かたよく?」
「えぇ、そうよ。魔族には、片翼と呼ばれる最愛の存在が、この世のどこかに居るの。魔族として生を受けたからには、必ず、片翼を探し出して一緒になりたいという憧れを抱くものよ。オリーも、そのうちきっと、憧れるようになるわ」
最初は、母親からのそんな言葉だった。ただ、その時はあまりそれを真剣には捉えていなかった。
ごく普通の一般家庭に生まれた私は、魔族が通う幼年学校に通い、その頃にも『片翼が云々』という話を聞くことはあったものの、やはり、真面目に考えることなどなかった。
どうせ、結婚したら幸せになるよ、という刷り込み教育だろう、くらいにしか思っていなかったし、人間でいうところの小学生くらいの年齢になれば、それも変わると思っていた。
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「本当! おめでとうっ!! 私も、最近気配を感じたから、もうすぐ会えるかもっ」
「おぉっ、そりゃあいいなっ!」
高学年くらいの年齢でも、そんな言葉が聞こえてきて、違和感はあれど、人間より何倍も長く生きる魔族という種族は、精神年齢が人間と比べて幼いのだろうと、成長が遅いのだろうと自分を納得させた。
………そう、そうやって、私は必死に、ソレから目を逸らし続けていた。しかし、さすがに『片翼に関する法律』なんていうものを学ぶ授業を受けるようになれば、現実逃避ばかりするわけにもいかない。
「オリアナちゃんは、片翼はどんな人が良い?」
いつだったか、学校でよく話しかけてくる子にそう聞かれて、私は、間髪入れずにこう答えた。
「片翼なんていらない」
魔族としてはあまりにも異質な解答。
これが、ずっと片翼が見つからずに、色々と拗らせた魔族であれば、こう答えるのも珍しくはなかっただろう。片翼を見つけても、片翼に応えてもらえない魔族も似たようなものかもしれない。
しかし、私はまだ、そんな経験などない、子供なのだ。周りに居るのは、片翼に憧れる子供達ばかり。そうすると、私の答えは、異質を通り越して、異常だと見なされた。
「あの子、変だよね」
「もしかして、魔族としての感覚がない、とか?」
「病院に行った方が良いんじゃない??」
そんな声に応えることなく、ただひたすらに勉学に打ち込んでいれば、そのうち、私の周りには人が居なくなった。
これで、良い。
どうせ、魔族なんて、理解できない種族なのだから、関わってこなければそれで良かった。
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