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第一章 望まぬ聖女召喚
第二十九話 報告
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アルヴァンは、すぐにピアノの調査を開始して、何度も問題がないことを確かめた後、ようやく私と向き合う。
「聖女様、鍵盤の安全が確認されましたので、どうぞお使いください」
そう言われれば、先程からピアノを弾きたくてウズウズしていた私はすぐに用意されていた椅子から立ち上がり、ピアノへ向かう。
先程の光り輝くピアノではなく、ごくごく普通のピアノ。音はなぜか木琴ではあるものの、音楽を奏でられるのであれば別に構わない。
軽く音を確認した後は、好きな曲を好きなだけ弾こう。そう思って鍵盤へと手を乗せたその瞬間だった。
「失礼します! 緊急の報告です!」
部屋に駆け込んで来たのは、一人の騎士だった。
せっかく、今から弾こうと思ってたのに……。
そう思いながら、その騎士を見れば、騎士は随分と嬉しそうな表情をしている。
「……話せ」
私がこの場に居ることを気にしているようではあったものの、それでも、アルヴァンはこの場で報告を受けることにしたようだった。
私自身も、ピアノを弾く邪魔をした騎士の報告内容は気になるので、とりあえず大人しく聞くことにする。
「本日の昼頃、僅かではありますが、瘴気の後退が確認されました! 民達によれば、午前中にこの城から美しい音とともに淡い光が飛んできて、瘴気を浄化したのだと。世間では、聖女様のおかげだともっぱらの評判です!」
「瘴気の、後退……浄化が、なされた……?」
え? 私のおかげって……でも、その時間はピアノしか弾いてないけど……?
アルヴァンはもちろん、私も何が起こっているのか分からずに混乱する。しかし、そこは踏んだ場数の違いなのか、王太子であるアルヴァンの方が立ち直りが早かった。
「すぐに、どれだけの影響が出たのか、詳しい調査を開始するよう、宰相に伝えろ!」
「はっ!」
「それと、聖女様、申し訳ありませんが、この現象は恐らく聖女様が鍵盤を奏でたことに起因していると思われます。調査のためにも、できることなら毎日同じ時間に鍵盤を奏でてはいただけないでしょうか?」
(え? 弾いて良いの?)
てっきり弾くなと言われるものと思っていたのだが、アルヴァンは真反対の言葉を放つ。
どうやら、私がピアノを弾いたことが原因であろうというのはアルヴァンの中で確定しているらしく、それならば毎日同じ時間に弾いてもらって、どのくらいの影響が出るのかの調査をしたいとのことだった。
弾いて良いなら、いくらでも弾くけど……。
そう思っていると、近くで待機していたルーナが、シュバッと手を挙げた。
「聖女様、鍵盤の安全が確認されましたので、どうぞお使いください」
そう言われれば、先程からピアノを弾きたくてウズウズしていた私はすぐに用意されていた椅子から立ち上がり、ピアノへ向かう。
先程の光り輝くピアノではなく、ごくごく普通のピアノ。音はなぜか木琴ではあるものの、音楽を奏でられるのであれば別に構わない。
軽く音を確認した後は、好きな曲を好きなだけ弾こう。そう思って鍵盤へと手を乗せたその瞬間だった。
「失礼します! 緊急の報告です!」
部屋に駆け込んで来たのは、一人の騎士だった。
せっかく、今から弾こうと思ってたのに……。
そう思いながら、その騎士を見れば、騎士は随分と嬉しそうな表情をしている。
「……話せ」
私がこの場に居ることを気にしているようではあったものの、それでも、アルヴァンはこの場で報告を受けることにしたようだった。
私自身も、ピアノを弾く邪魔をした騎士の報告内容は気になるので、とりあえず大人しく聞くことにする。
「本日の昼頃、僅かではありますが、瘴気の後退が確認されました! 民達によれば、午前中にこの城から美しい音とともに淡い光が飛んできて、瘴気を浄化したのだと。世間では、聖女様のおかげだともっぱらの評判です!」
「瘴気の、後退……浄化が、なされた……?」
え? 私のおかげって……でも、その時間はピアノしか弾いてないけど……?
アルヴァンはもちろん、私も何が起こっているのか分からずに混乱する。しかし、そこは踏んだ場数の違いなのか、王太子であるアルヴァンの方が立ち直りが早かった。
「すぐに、どれだけの影響が出たのか、詳しい調査を開始するよう、宰相に伝えろ!」
「はっ!」
「それと、聖女様、申し訳ありませんが、この現象は恐らく聖女様が鍵盤を奏でたことに起因していると思われます。調査のためにも、できることなら毎日同じ時間に鍵盤を奏でてはいただけないでしょうか?」
(え? 弾いて良いの?)
てっきり弾くなと言われるものと思っていたのだが、アルヴァンは真反対の言葉を放つ。
どうやら、私がピアノを弾いたことが原因であろうというのはアルヴァンの中で確定しているらしく、それならば毎日同じ時間に弾いてもらって、どのくらいの影響が出るのかの調査をしたいとのことだった。
弾いて良いなら、いくらでも弾くけど……。
そう思っていると、近くで待機していたルーナが、シュバッと手を挙げた。
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