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セフレ以上恋人未満
01.セフレ以上恋人未満(一)
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セフレ関係・ハッピーエンド
◆◇◆◇◆
「あっ、ねぇ、もう、挿れて」
「……我慢できない?」
汗だくで、お互い下腹部まで濡らしながら、我慢できるとかできないとかの問題ではない、と藍(あい)は思う。
「寛人(ひろと)だって、もう、こんな」
「俺はまだ、我慢でき――んん」
我慢できる、と言おうとした寛人の唇を塞ぎ、藍は彼の亀頭を指の腹で擦る。ヌルヌルの体液を指に塗りつけ、優しく扱く。
「我慢しないで」
「――ったく、我慢できないのはどっちだよ」
だって。藍は言い訳を色々と考える。
寛人と違って私は明日仕事なの。
早く終わらせて眠りたいの。
実際、もう二回もイカされて我慢の限界なの。
「あぁっ」
藍のひときわ高い嬌声が部屋に響く。
藍は寛人に突かれる瞬間が好きだ。寛人が自分を必要としているようで、肉体的にも精神的にも満たされる。
「藍」
体を揺すられている合間に、自分の名前を呼ぶ寛人のかすれた声が好きだ。
寛人がぎゅっと目を閉じて、快感に身を任せている顔が好きだ。
「あ、っ、あぁ、んん」
「締めんな。出そうになる」
「締めて、なんか、な」
悪くない、と思う。
気持ちいいことは悪くない。
良いことだ。
「あー、ダメ、イキそ」
溜め息とともに、寛人が藍の唇を塞ぐ。藍は寛人の舌を受け入れながら、彼の首を抱き寄せる。
「いいよ、来て」
「ん」
キスをして、お互いの舌を求め合いながら、激しく交わる。冷房があっても、汗は出る。
寛人の背中はびっしょりと濡れている。手のひらについた汗を、気持ち悪いとは思わない。そんなふうに思うなら、こんなことはしていない。
「藍」
藍の耳元で、低い声。
「イク」
激しく打ちつけられていた腰が、一気にゆるやかな動きに変わる。いつもより早かったと思いながらも、藍は寛人のキスを受け入れる。
最後の一滴まで、寛人は藍の中に出そうとする。皮膜をつけた状態で。生殖行為ではないというのに。
藍にはそれがおかしくてたまらない。
生殖行為ではないセックス。
自分たちは恋人同士ではない。
ベッドの上の、矛盾だらけな関係。
◆◇◆◇◆
「んー……疲れた」
後処理もそこそこに、寛人はベッドに倒れ込む。
「やだ、寛人ここで寝ないで。シャワー!」
「あとで」
「今すぐ!」
汗だくのまま寝られてたまるか、と藍は寛人をベッドから追い出す。寛人は「眠いー」とブツブツ言いながら、全裸で浴室へと向かう。
藍が部屋で休んでいたところへ、「欲求不満で死にそう」と寛人がやってきた。明日も仕事だとは言え、拒む理由はないと考え、藍は性欲処理を受け入れた。
使用済みのモノをティッシュで包んで捨てる。ヘッドボードに置いてある避妊具の数を数えて、来週までもつかどうか考える。補充が必要かもしれない。
藍にも寛人にも恋人はいない。フリー同士のセックスフレンド。
恋人が欲しいとは思うが、セフレ関係を解消するよりも、恋人を作るほうが面倒だと感じるような二人だ。結局、フリーのまま。同居し、ズルズルとセックスだけの関係を続けている。
藍も汗を拭くために脱衣所へやってきて、ドアの向こうの寛人に声をかける。
「ねぇ、寛人」
ぼんやりと寛人の背中が見える。頭を洗っているようだ。
「ん? 一緒に入る?」
「入らない。何か食べる? 作ろうか?」
「いや、大丈夫。食べてきた」
タオルで汗を拭きながら、藍は洗濯を寛人に頼んでおく。寛人は気軽に了承した。
家事と家賃・光熱費は折半。
異性は連れ込まない。
それが二人のルールだ。
二年近くルールは守られており、二人の関係も続いている。
お互いの生活に干渉しない、気楽な関係。
恋人が欲しいなら作ってもいい。
嫉妬も束縛もない。
ただの同居人。
ただのセフレ。
それが正しいことなのかは、二人にもわからない。たぶん、この先もずっと。
「藍」
「ん?」
汗を拭くために上半身裸だった藍は、いきなり寛人に手を引かれてバスルームの中に引っ張り込まれる。そして、寛人の腕の中に閉じ込められる。シャワーはザアザアと出たままだ。
「やだ、服が濡れちゃう」
「もう濡れてるくせに?」
「ちょっ、ちが、んんっ」
寛人に強引にキスをされ、乳房を揉みしだかれる。その間にズルとショーツを太腿までずり下げられる。寛人の指が熱く疼いたままの藍の隘路を進む。
「あともう一回」
「も、バカ……っあ」
「藍のナカが気持ちいいのが悪い」
セックスの相性はいいと藍は思っている。繋がったままお互いにイクことができるのだから、相性はいいはずだ。
寛人のこういう強引なところは勘弁してほしいときもあるけれど、彼は藍が本気で嫌がることはしない。アナルも守られている。
「今日ダメな日?」
寛人が乳首を咥えながら上目遣いに見上げてくる。藍は声を我慢しながら、逡巡する。
藍はピルを飲んでいる。しかし、それを寛人には伝えていない。
寛人は今バスルームで、避妊なしのセックスを持ちかけている。こういうとき、寛人は中には出さない。外に出す。膣外射精が避妊ではないことくらい、二人は十分わかっている。わかっていて、寛人はそれを願い、藍は受け入れる。
「だいじょぶ」
生で挿入することの危険性は知りつつも、それを上回る気持ち良さを知っている。だから、藍はピルを飲む。ルールの中に「避妊をする」ことは含まれていないのだ。
「どしたの、今日は、あっ」
「ん、何か、溜まってて」
そういう日もあるだろう。体で慰めてあげられるなら、それでいい。心までは知らない。それは慰められないし、求めないで欲しい。
藍はそういうスタンスだ。
「後ろからしたい。壁に手をつける?」
「こっちでいい?」
「上等」
浴槽のフチに手を置き、くいと尻を上げる。間違えて後ろの穴に挿れないでね、と釘を刺しながら。
挿れるよ、と寛人の声が響く。
「あっ、ん」
寛人の熱杭が一気にぬかるんだ膣内を進む。進んで、退いて……寛人の腰の動きに遠慮はない。二年も気持ちいい関係を続けているのだ。お互いの気持ちのいい場所も、性器の形までわかっている。
藍は浴槽のフチに縋りつくようにしながら、その勢いと激しさを逃す。
「あっ、あ、ん、っ」
バスルームに嬌声とお互いの体液が混ざり合う音が響く。リズミカルに奥を穿たれ、たまにグリと突かれ……藍は腰が砕けそうになるのを何とか我慢する。
「ひろ、と? きょ、はげし?」
「ん、止めらんねえ」
奥にグリグリと亀頭をなすりつけられた上に肉芽まで擦られて、藍は一際大きく善がる。
気持ちいい。またイッてしまいそうだ。
「なぁ、藍、このまま」
「へ?」
「このまま、ナカに出したい」
体が震えた。
きゅうと膣内が締まる。
体が悦んでいると理解したときには、藍は既に「ダメ」と口にしていた。
「えー、ダメ?」
「ダメったらダメ。外に出して」
「えー、ケチ。減るもんじゃねえだろ」
そういう問題じゃない。藍は憤る。そういう問題じゃない。
もちろん、藍が本気で嫌がっているときは、寛人は無理強いしない。
「じゃ、尻にかける」
今まで以上に激しく突かれ、体が揺れる。一緒にイケそうだったのに、藍の心は少し冷めてしまった。そうなると、ただ早くイッて欲しいと願うだけだ。薄情なようだが、そんなものだ。
「あっ」
寛人が短く声を漏らす。
瞬間、ナカに収まっていた肉杭が引き抜かれて、代わりにお尻のあたりにじわりと熱が広がる。その熱も、藍が肩で息をしている間にシャワーで洗い流されてしまう。
「……藍?」
「パジャマ、びしょびしょなんだけど」
「洗っといてやるよ」
そういう問題じゃない。藍は背後の寛人を睨めつける。
「……何かあった?」
「いや、何も」
何もないのにナカで出したいとか言うな、と寛人を叱って、藍はシャワーを浴びる。汗を洗い流したかった。
その背後から、寛人が藍を抱きしめる。そして、肩のあたりにキスを落としてくる寛人に、藍は溜め息をつく。寛人は嘘が下手だ。
「……何かあったのね。今日聞いたほうがいい?」
「大丈夫。何とかする。今はちょっと甘えさせてくれればいいから」
ポンポンと濡れた頭を軽く叩いて、顔を上げた寛人の唇にキスをする。シャワーはまだ出たままだ。
藍は軽いキスで終えるはずだった。舌を求めてきたのは寛人だ。ぐいと抱き寄せられて、捕らえられる。
藍は寛人のモノが再度反り立っていることに気づく。気づいて、愕然とする。もうハタチそこそこの学生でもないのだから、もっと落ち着いてくれないと困る。
「……藍」
「もう無理」
「あと一回」
性欲が薄い人ではないとはわかっていたが、短時間で三回も求められるのはキツイ。体力的に厳しい。
藍が拒否しても寛人は残念がるだけで終わるだろう。一度強く拒めば、それ以上は無理を言わないはずだ。
藍はそれでも受け入れてしまう。
流されやすい性格だとは、自分でもわかっている。
「……明日、仕事なの」
「早めにイクから」
そういう問題じゃない。藍は苦笑する。
「じゃあ、早めにお願い」
ズルズル続く、爛れた関係。
先が長くないとは知っている。お互いに。
それでも、恋人でもない男に体を揺すられながら、藍は、刹那的な快楽に身を任せるだけなのだ。
◆◇◆◇◆
「あっ、ねぇ、もう、挿れて」
「……我慢できない?」
汗だくで、お互い下腹部まで濡らしながら、我慢できるとかできないとかの問題ではない、と藍(あい)は思う。
「寛人(ひろと)だって、もう、こんな」
「俺はまだ、我慢でき――んん」
我慢できる、と言おうとした寛人の唇を塞ぎ、藍は彼の亀頭を指の腹で擦る。ヌルヌルの体液を指に塗りつけ、優しく扱く。
「我慢しないで」
「――ったく、我慢できないのはどっちだよ」
だって。藍は言い訳を色々と考える。
寛人と違って私は明日仕事なの。
早く終わらせて眠りたいの。
実際、もう二回もイカされて我慢の限界なの。
「あぁっ」
藍のひときわ高い嬌声が部屋に響く。
藍は寛人に突かれる瞬間が好きだ。寛人が自分を必要としているようで、肉体的にも精神的にも満たされる。
「藍」
体を揺すられている合間に、自分の名前を呼ぶ寛人のかすれた声が好きだ。
寛人がぎゅっと目を閉じて、快感に身を任せている顔が好きだ。
「あ、っ、あぁ、んん」
「締めんな。出そうになる」
「締めて、なんか、な」
悪くない、と思う。
気持ちいいことは悪くない。
良いことだ。
「あー、ダメ、イキそ」
溜め息とともに、寛人が藍の唇を塞ぐ。藍は寛人の舌を受け入れながら、彼の首を抱き寄せる。
「いいよ、来て」
「ん」
キスをして、お互いの舌を求め合いながら、激しく交わる。冷房があっても、汗は出る。
寛人の背中はびっしょりと濡れている。手のひらについた汗を、気持ち悪いとは思わない。そんなふうに思うなら、こんなことはしていない。
「藍」
藍の耳元で、低い声。
「イク」
激しく打ちつけられていた腰が、一気にゆるやかな動きに変わる。いつもより早かったと思いながらも、藍は寛人のキスを受け入れる。
最後の一滴まで、寛人は藍の中に出そうとする。皮膜をつけた状態で。生殖行為ではないというのに。
藍にはそれがおかしくてたまらない。
生殖行為ではないセックス。
自分たちは恋人同士ではない。
ベッドの上の、矛盾だらけな関係。
◆◇◆◇◆
「んー……疲れた」
後処理もそこそこに、寛人はベッドに倒れ込む。
「やだ、寛人ここで寝ないで。シャワー!」
「あとで」
「今すぐ!」
汗だくのまま寝られてたまるか、と藍は寛人をベッドから追い出す。寛人は「眠いー」とブツブツ言いながら、全裸で浴室へと向かう。
藍が部屋で休んでいたところへ、「欲求不満で死にそう」と寛人がやってきた。明日も仕事だとは言え、拒む理由はないと考え、藍は性欲処理を受け入れた。
使用済みのモノをティッシュで包んで捨てる。ヘッドボードに置いてある避妊具の数を数えて、来週までもつかどうか考える。補充が必要かもしれない。
藍にも寛人にも恋人はいない。フリー同士のセックスフレンド。
恋人が欲しいとは思うが、セフレ関係を解消するよりも、恋人を作るほうが面倒だと感じるような二人だ。結局、フリーのまま。同居し、ズルズルとセックスだけの関係を続けている。
藍も汗を拭くために脱衣所へやってきて、ドアの向こうの寛人に声をかける。
「ねぇ、寛人」
ぼんやりと寛人の背中が見える。頭を洗っているようだ。
「ん? 一緒に入る?」
「入らない。何か食べる? 作ろうか?」
「いや、大丈夫。食べてきた」
タオルで汗を拭きながら、藍は洗濯を寛人に頼んでおく。寛人は気軽に了承した。
家事と家賃・光熱費は折半。
異性は連れ込まない。
それが二人のルールだ。
二年近くルールは守られており、二人の関係も続いている。
お互いの生活に干渉しない、気楽な関係。
恋人が欲しいなら作ってもいい。
嫉妬も束縛もない。
ただの同居人。
ただのセフレ。
それが正しいことなのかは、二人にもわからない。たぶん、この先もずっと。
「藍」
「ん?」
汗を拭くために上半身裸だった藍は、いきなり寛人に手を引かれてバスルームの中に引っ張り込まれる。そして、寛人の腕の中に閉じ込められる。シャワーはザアザアと出たままだ。
「やだ、服が濡れちゃう」
「もう濡れてるくせに?」
「ちょっ、ちが、んんっ」
寛人に強引にキスをされ、乳房を揉みしだかれる。その間にズルとショーツを太腿までずり下げられる。寛人の指が熱く疼いたままの藍の隘路を進む。
「あともう一回」
「も、バカ……っあ」
「藍のナカが気持ちいいのが悪い」
セックスの相性はいいと藍は思っている。繋がったままお互いにイクことができるのだから、相性はいいはずだ。
寛人のこういう強引なところは勘弁してほしいときもあるけれど、彼は藍が本気で嫌がることはしない。アナルも守られている。
「今日ダメな日?」
寛人が乳首を咥えながら上目遣いに見上げてくる。藍は声を我慢しながら、逡巡する。
藍はピルを飲んでいる。しかし、それを寛人には伝えていない。
寛人は今バスルームで、避妊なしのセックスを持ちかけている。こういうとき、寛人は中には出さない。外に出す。膣外射精が避妊ではないことくらい、二人は十分わかっている。わかっていて、寛人はそれを願い、藍は受け入れる。
「だいじょぶ」
生で挿入することの危険性は知りつつも、それを上回る気持ち良さを知っている。だから、藍はピルを飲む。ルールの中に「避妊をする」ことは含まれていないのだ。
「どしたの、今日は、あっ」
「ん、何か、溜まってて」
そういう日もあるだろう。体で慰めてあげられるなら、それでいい。心までは知らない。それは慰められないし、求めないで欲しい。
藍はそういうスタンスだ。
「後ろからしたい。壁に手をつける?」
「こっちでいい?」
「上等」
浴槽のフチに手を置き、くいと尻を上げる。間違えて後ろの穴に挿れないでね、と釘を刺しながら。
挿れるよ、と寛人の声が響く。
「あっ、ん」
寛人の熱杭が一気にぬかるんだ膣内を進む。進んで、退いて……寛人の腰の動きに遠慮はない。二年も気持ちいい関係を続けているのだ。お互いの気持ちのいい場所も、性器の形までわかっている。
藍は浴槽のフチに縋りつくようにしながら、その勢いと激しさを逃す。
「あっ、あ、ん、っ」
バスルームに嬌声とお互いの体液が混ざり合う音が響く。リズミカルに奥を穿たれ、たまにグリと突かれ……藍は腰が砕けそうになるのを何とか我慢する。
「ひろ、と? きょ、はげし?」
「ん、止めらんねえ」
奥にグリグリと亀頭をなすりつけられた上に肉芽まで擦られて、藍は一際大きく善がる。
気持ちいい。またイッてしまいそうだ。
「なぁ、藍、このまま」
「へ?」
「このまま、ナカに出したい」
体が震えた。
きゅうと膣内が締まる。
体が悦んでいると理解したときには、藍は既に「ダメ」と口にしていた。
「えー、ダメ?」
「ダメったらダメ。外に出して」
「えー、ケチ。減るもんじゃねえだろ」
そういう問題じゃない。藍は憤る。そういう問題じゃない。
もちろん、藍が本気で嫌がっているときは、寛人は無理強いしない。
「じゃ、尻にかける」
今まで以上に激しく突かれ、体が揺れる。一緒にイケそうだったのに、藍の心は少し冷めてしまった。そうなると、ただ早くイッて欲しいと願うだけだ。薄情なようだが、そんなものだ。
「あっ」
寛人が短く声を漏らす。
瞬間、ナカに収まっていた肉杭が引き抜かれて、代わりにお尻のあたりにじわりと熱が広がる。その熱も、藍が肩で息をしている間にシャワーで洗い流されてしまう。
「……藍?」
「パジャマ、びしょびしょなんだけど」
「洗っといてやるよ」
そういう問題じゃない。藍は背後の寛人を睨めつける。
「……何かあった?」
「いや、何も」
何もないのにナカで出したいとか言うな、と寛人を叱って、藍はシャワーを浴びる。汗を洗い流したかった。
その背後から、寛人が藍を抱きしめる。そして、肩のあたりにキスを落としてくる寛人に、藍は溜め息をつく。寛人は嘘が下手だ。
「……何かあったのね。今日聞いたほうがいい?」
「大丈夫。何とかする。今はちょっと甘えさせてくれればいいから」
ポンポンと濡れた頭を軽く叩いて、顔を上げた寛人の唇にキスをする。シャワーはまだ出たままだ。
藍は軽いキスで終えるはずだった。舌を求めてきたのは寛人だ。ぐいと抱き寄せられて、捕らえられる。
藍は寛人のモノが再度反り立っていることに気づく。気づいて、愕然とする。もうハタチそこそこの学生でもないのだから、もっと落ち着いてくれないと困る。
「……藍」
「もう無理」
「あと一回」
性欲が薄い人ではないとはわかっていたが、短時間で三回も求められるのはキツイ。体力的に厳しい。
藍が拒否しても寛人は残念がるだけで終わるだろう。一度強く拒めば、それ以上は無理を言わないはずだ。
藍はそれでも受け入れてしまう。
流されやすい性格だとは、自分でもわかっている。
「……明日、仕事なの」
「早めにイクから」
そういう問題じゃない。藍は苦笑する。
「じゃあ、早めにお願い」
ズルズル続く、爛れた関係。
先が長くないとは知っている。お互いに。
それでも、恋人でもない男に体を揺すられながら、藍は、刹那的な快楽に身を任せるだけなのだ。
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